人工衛星の小型化や再利用ロケットの実用化といった技術発展により、地球を観測する衛星の数は年々増加しています。こうした人工衛星群は、地球全域を捉えることのできるセンサーネットワークを形成し、人間が全体を把握するのが困難なほど膨大な量のデータを生み出します。一方で、急速に普及しつつあるドローンによって、局所的かつ詳細な鳥瞰画像の取得も身近なものとなりつつあります。本モジュールは、こうした「上空の視点」から得られた膨大な画像データから、特定の地物およびその時間変化を抽出するために開発されました。
本モジュール・データは、人工衛星や航空機によって上空から取得された鳥瞰画像から(1)津波による流出建造物(2)メガソーラー(3)火災・工場・火山などの熱源 を自動検知するための深層学習パッケージであり、以下のサイトから公開されています。
上空からの鳥瞰画像は、一般画像と違って物体の側面ではなく上面を観測しています。また解像度も数十cm〜数十mであることが多いため、その特徴量は通常の一般物体画像とは大きく異なります。また人工衛星に搭載されている多くのセンサーは、赤・緑・青の可視光だけでなく紫外線や赤外線においても観測を行っており、人間の眼では見えない「色」の情報を含んでいます。本モジュールは、こうした鳥瞰画像/人工衛星画像の特徴を適切に考慮することで、一般画像認識のアルゴリズムに比べて、より高い学習速度と認識率を実現しました。
陸域観測衛星 ランドサットは、 40年以上の長期にわたって地球全体を観測しており、そのデータは無料で誰でも利用できます。下図は本モジュールおよびランドサット画像から作成した学習データに基づいて三種類の熱源(火災・工場・火山)を自動分類した事例です( https://landbrowser.airc.aist.go.jp/hotarea/index.html )
熱源以外の任意の地物・イベントについても、比較的少数の教師データを準備して本モジュールで学習を行うことで、地球上のあらゆる場所をモニタリングすることが可能となります。
研究開発プロジェクト | NEDO 人工知能技術適用によるスマート社会の実現の成果 |
研究機関 | 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 |
主要研究者 | 中村 良介 |