AIST/HQL人体寸法・形状データベース2003-形状計測について

AIST/HQL人体寸法・形状データベース2003

 公開する形状データの形状計測の方法は以下のとおりです。


1.計測時期

2003年5月、2003年11月


2.計測場所

産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター(東京都江東区青海)


3.計測装置

浜松ホトニクス社製 ボディラインスキャナC9036-02

  • 計測範囲:上下2000mm、前後600mm、左右1000mm
  • 計測精度(公称):1000mm周長について±0.5%[1]
  • 計測時間:11秒
  • 光源/検出器:レーザダイオード/CCD
  • ランドマーク用マーカシール:銀色の専用マーカシール
  • マーカ位置自動検出ソフトウェア
  • マーカの自動ラベリングソフトウェア
  • 体幹部相同モデリングソフトウェア[2]

[1]:
 市販の非接触式3次元形状スキャナの精度を同じ基準で評価する方法がないため、ユーザは機器選定にあたって苦労しているのが現状です。現在、産総研の計量標準総合センターが中心となり、人体を対象とする装置もふくめた非接触式3次元形状計測装置の精度に関する受入れ検査規格を策定中です。同様の規格はISO TC213 WG10で検討されており、日本も活発に参加しています。人間工学関連の国際規格制定を審議する技術委員会のうち、人体寸法とバイオメカニクスを担当しているワーキンググループ(ISO TC159/SC3/WG1)でも、人体3次元形状計測装置の精度検証プロトコルに関する国際規格の検討を始めることになりました。人体の計測は、計測装置自体の精度だけではなく、計測所要時間、マーカ位置を認識するソフトウェアの性能、計測者によるランドマーク位置決定の誤差、被験者の身体動揺など様々な要因が計測精度に影響を与えるため、上記の計測装置の受入れ検査規格だけでは人体形状データの精度評価にとって不十分であることによります。

 なお、形状スキャナによる形状データから算出された人体寸法は、たとえ定義が同じであっても、多くの場合、伝統的な方法で計測された人体寸法と必ずしも同じ値にならず、系統的な差があります。その原因ははっきりわかっていません。上記のとおり、精度に影響を与える要因が非常に多いためです。今回公開するデータの場合も、両者は必ずしも一致しません。既存の人体寸法データとの比較など人体寸法自体を利用する場合は、形状から算出した寸法ではなく、同時に公開している寸法データを利用するべきです。現状がこのとおりであるため、国際規格ISO 20685:2005では、形状スキャナにより取得した寸法を用いて人体寸法データベースを作成する場合は、伝統的な方法で計測した値と非常に近い値が得られることを実験的に確認したうえで用いるよう、定めています。
[2]:
 このソフトウェアは、平成14-16年度経済産業省委託事業、「高度人体デジタル計測システム技術の開発」において開発された体幹部相同モデリングソフトウェアを、デジタルヒューマン研究センターの依頼により改変したものである。

4.計測条件

4-1.着衣

 男性はボクサー型ショーツ、女性はブラジャーとショーツ、およびオーバーパンツです(図1)。ショーツは身体にフィットし後正中に縫い目があるものを選定しました。
 頭髪は、そのままではレーザによる計測ができないため、かつら下用のキャップをかぶせました(図2)。このため、特に髪の長い女性では、計測された頭部形状は必ずしも実際の形状を反映していません。

図1.着衣
上:男性用
下左:女性用ブラジャーとオーバーパンツ、下右:女性用アンダーパンツ
図2.キャップ

4-2.形状計測姿勢

 形状計測のための姿勢は、身体の他の部位のかげになって計測できない部分を低減するために、通常上肢、下肢を外転する(ひらく)ことが多い。計測時姿勢は計測時に審議中であったISO 20685による推奨姿勢に従うことにしました。しかしながら、ISO 20685の推奨姿勢が審議の途中で変わったため、上肢の姿勢(肘の曲げ方、手掌の向き)は全被験者で同じではありません。実際の計測姿勢は図3のとおりです。

 ISO 20685:2005が推奨する形状計測時の姿勢条件は、最終的には以下のとおりです:

  1. 頭部は耳眼面を水平に保持する
  2. 両足を平行にし、足軸間の距離を20cmとする
  3. 上肢を20度外転する
  4. 肘をまっすぐ伸ばし、手のひらを後面に向ける
  5. 静かに呼吸する

 今回公開するデータでは、これらの条件のうち4が、計測時によって異なっています。図3左は上記の定義どおりですが、図3右の姿勢では肘が曲がっています。
 姿勢を保持するための道具は、使用していません。

図3.計測時姿勢

5.計測手順

 計測の手順は以下のとおりです:

  1. 計測内容の説明、同意書に署名
  2. 更衣
  3. ランドマーク位置に鉛筆状アイライナーでマークつけ(すべて同一の熟練者による)
  4. 寸法計測
    >> 寸法計測の詳細はこちら
  5. ランドマーク位置にマーカシールをはる
    >> ランドマーク位置の詳細はこちら
  6. 形状計測
  7. マークおとし
  8. 更衣

6.後処理

 形状計測後、システム付属のソフトで以下の処理を行ないました:

  1. 面をはるために、四肢を切断する位置を決定する:所要時間1分
  2. 点群に面をはり、ポリゴンデータとする:所要時間1分
  3. マーカシール位置の自動抽出:所要時間1分
  4. ランドマークの自動ラベリング:所要時間1分。ただし、目でみて確認する作業の所要時間が15分

7.座標系

 今回公開する形状データとランドマーク座標値は、人体座標系で記述されています。原点は左右の腸骨稜点の中点を床面に投影した点、立位面がXY平面、前方がX+、左方がY+、上方がZ+となっています。

図4.人体座標系

8.相同モデリング

 システム付属のソフトで、4-3、4-4で検出したランドマーク位置を使って相同モデリングを自動的に行います。ランドマーク位置の確認等もふくめ、一体の処理に必要な時間は30分程度です。
>> 相同モデリングの詳細はこちら


公開:2009/03/02

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