人体特性文献データベース|3.身体慣性特性文献-J.W.Young 1983
Anthropometric and mass distribution characteristics of the adult female
文献名 | Anthropometric and mass distribution characteristics of the adult female |
雑誌名 | FAA-AM-83-16 |
著者 | J.W.Young |
アイテム | V COV I PAI(慣性主軸) |
状態 | 被験者 |
サンプル数 | 46 |
性別 | 女 |
年齢 | 21-45 |
測定年 | 不明 |
人種 | C |
測定場所 | アメリカ |
方法 | 写真撮影法 |
生データ | 不可 |
(1)セグメント分けの定義
頭部、頚部、胸部、腹部、腰部、上腕、前腕、手、大腿骨骨頭部、下腿、足部、大腿部、大腿―大腿骨骨頭部、前腕+手の24セグメント。McConvilleらと同じ定義

- 頭部―頚部
ヌカーレ(正中矢状面上で,うなじの筋の間でふれることができる最下点)と下顎角点を結んだ面で切断 - 頚部―胸部
複合面で切断(1)第七頸椎の棘突起の先端を走る水平面(2)左右のクラビカーレ(鎖骨内側端上面で最突出した点)のうち下方の点を通り水平から45°傾いた面 - 胸部―腹部
第十肋骨下端で水平に切断 - 腹部―腰部
左右の腸骨稜の最高点のうち高い点で水平に切断 - 腰部―大腿
股下の中央から鼡径靭帯に沿って転子点(大転子の最高点)と上前腸骨棘の中央を通る面で切断 - 大腿-大腿骨頭部
殿溝点(殿溝の最下点)で水平に切断 - 大腿―下腿
大腿骨外側上顆の最側点で水平に切断 - 下腿―足
外果下端で水平に切断 - 胸部―上腕
肩峰点を通り前後の腋窩のレベルで腕と体幹の境界を通る面で切断 - 上腕―前腕
肘頭点(肘頭の後端の点),上腕骨外側上顆の最外側点,内側上顆の最内側点を通る面で切断 - 前腕―手
尺骨と橈骨の茎状突起遠位端を通り前腕軸に垂直な面で切断
(2)回帰式等のモデル
- 体積中心位置は各体節の解剖学的座標系の原点からの距離の平均値として示されている
- 慣性主軸は解剖学的座標系に対する相対的な角度の平均値として示されている
- 体積及び慣性モーメントは以下の二つの形式の重回帰式で示されている。
A.独立変数を体重、身長としたときの体積と慣性モーメント
B.独立変数を寸法項目の偏回帰係数が高い方から3つ選択したときの体積及び慣性モーメント
(3)精度検証
- 12人の被験者を抽出し、写真撮影法と直接計測の結果を比較し精度を検証している。直接計測では、水置換法により体積と密度を計測している。そして、
- 全身の体積の比較
- 地面から頭頂までの距離の10%ごとに体積を比較。
- 振り子を用いて全身の慣性モーメントを算出
結果)0.07~5.74パーセントのずれ→体積の過大評価と密度の過小評価の結果 - 写真撮影法の再現性
4人の被験者をそれぞれ3回撮影し、身長と全身の体積と全身の慣性モーメントを計算し、再現性の確認
(結果)
身長:0.02~0.13%
体:0.24~1.69%
慣性モーメント:1.24~3.04%
(参考)人体寸法の写真撮影法と直接計測の比較もあり
回帰式等のモデル(詳細)
体積中心位置
下表は各体節の解剖学的座標原点からの体積中心位置までの距離の平均値を示す。
注)単位はcmである。
体節の解剖学的座標系の定義
- 三点の解剖学的特徴点を結ぶ面を構築
- 二点の解剖学的特徴点を含み(1)の面に直交する面を構築
- 一点の解剖学的特徴点を含みかつ(1)及び(2)の面に直交する面を構築
この三つの面が交わる点を座標系原点とし、+Xは体に対して前方向き、+Yは左向き、+zは上向きとする。
a.頭部
- XY面:左右の耳珠点と右の眼窩点を通る面
- YZ面:左右の耳珠点を通りXY面に直交する面
- XZ面:鼻深点を通り、XY及びYZ面に直交する面
b.頚部
- XZ面:のど仏と頚椎点と胸骨上点を通る面
- XY面:右の鎖骨点(鎖骨の内側上縁でもっとも隆起した部分)と頚椎点の中間の点と左の鎖骨点と頚椎点の中間の点を通り、XZ面に直交する面
- YZ面:頚椎点を通りXZ面とXY面に直交する面
c.胸部
- XZ面:胸骨上点と頚椎点と第10肋骨の高さの脊椎の中心を通る面
- YZ面:頚椎点と第10肋骨の高さの脊椎の中心を通り、XZ面に直交する面
- XY面:第10肋骨の高さの脊椎の中心を通り、XZ面とYZ面に直交する面
d.腹部
- XY面:左右第十肋骨とその高さの脊椎の中心を通る面
- YZ面:左右第十肋骨を通りXY面に直交する面
- XZ面:第10肋骨の高さの脊椎の中心を通り、XZ面とYZ面に直交する面
e.腰部
- YZ面:左右上前腸骨棘点と恥骨結合点を通る面
- XY面:左右上前腸骨棘点を通りYZ面に直交する面
- XZ面:上前腸骨棘点と同じ高さの脊椎の中心を通り、YZ面とXY面に直交する面
f.左右上腕
- YZ面:肩峰点と左右の上腕骨上顆を通る面
- XZ面:肩峰点と外側上顆を通りYZ面に直交する面
- XY面:肩峰点を通り、YZ面とXZ面に直交する面
g.左右前腕、左右前腕+手
- YZ面:橈骨点と尺骨茎状突起遠位端と橈骨茎状突起遠位端を通る面
- XZ面:橈骨点と尺骨茎状突起遠位端を通りYZ面に直交する面
- XY面:橈骨点を通りYZ面とXZ面に直交する面
h.左右手
- YZ面:指先点と第二及び第4中手骨指関節外側面を通る面
- XY面:第二及び第4中手骨指関節外側面を通りYZ面に直交する面
- XZ面:第三中手骨を通り、YZとXY面に直交する面
i.左右大腿、左右大腿骨骨頭部、左右大腿-大腿骨骨頭部
- YZ面:転子点と左右大腿骨外側上顆を通る面
- XZ面:転子点と大腿骨外側上顆を通り、YZ面に直交する面
- XY面:転子点を通りYZ面とXZ面に直交する面
j.左右下腿
- YZ面:脛骨点と内果端点と外果を通る面
- XZ面:脛骨点と内果端点を通りYZ面に直交する面
- XY面:脛骨点を通り、YZ面とXZ面に直交する面
j.左右足
- XY面:第一及び第五中足骨関節と踵骨後部を通る面
- XZ面:第二指先端と踵骨後部を通りXY面に直交する面
- YZ面:第一中足骨関節を通りXY面とXZ面に直交する面
慣性主軸
解剖学的座標系からの慣性主軸への回転行列を示す。
一般の座標変換行列とは定義が異なるので注意。
下表の意味:頭部の慣性主軸XpはXaに対して42.19°回転し、Yaに対して91.23回転し、Zaに対して47.83°回転した物である。
体積(身長、体重を独立変数とした重回帰式)
下表は身長体重を独立変数としたときの体積の重回帰式の係数を表す。
注)体積はcm3、体重はポンド、寸法はcm、脂肪の厚さはmmなので換算する必要がある。
例)頭部体積(cm3)=3469-1.25×身長(cm)+4.45×体重(lb)
主慣性モーメント(身長,体重を独立変数とした重回帰式)
慣性主軸周りの主慣性モーメントの回帰式
下表は回帰式の係数を表す.
注)・入力の体重はポンド,寸法はcm,脂肪の厚さはmmである.
・算出される慣性モーメントの単位はg・cm2なのでkg・m2に換算するためには107で割る必要がある.
例)頭部X軸周りの慣性モーメント(g・cm2)=141316-95×身長(cm)+322×体重(lb)
体積
下表は独立変数を偏回帰係数が大会ほうから3つ選び(ステップワイズ式重回帰分析),体積を従属変数とした重回帰式のい係数を示す.
注)体積はcm3,体重はポンド,寸法はcm,脂肪の厚さはmmなので換算する必要がある.
例)頭部体積(cm3)=-4202.24+108.73×頭囲(cm)+137.28×全頭高(cm)
Xp、Yp、Zp軸周りの主慣性モーメント
下表は回帰式の係数を表す.
注)・入力の体重はポンド,寸法はcm,脂肪の厚さはmmである.
・算出される慣性モーメントの単位はg・cm2なのでkg・m2に換算するためには107で割る必要がある.
例)頭部X軸周りの慣性モーメント(g・cm2)=-415236+8156×頭囲(cm)+8953×全頭高(cm)
頭部Y軸周りの慣性モーメント(g・cm2)=-505983+12704×頭囲(cm)
頭部Z軸周りの慣性モーメント(g・cm2)=-306977+7967×頭囲(cm)
(1)Xp軸周りの慣性モーメント

(2)Yp軸周りの慣性モーメント

(3)Zp軸周りの慣性モーメント
