低価格・可搬型足部形状スキャナINFOOT
持ち運びのできるスキャナを

靴屋さんの店頭や、スポーツ競技会場などで個人の足を測り、それをモデル化することで、個人の足形状に適合する靴・中敷き(インソール)を自動設計するために、低価格で持ち運びが容易な足形状スキャナを開発しました。 装置には4つのレーザ投光器と8台のビデオカメラが取り付けられています。 レーザ投光器で足に断面を作り、それを8台のカメラで撮影します。 断面を前後に動かしていくと、たくさんの断面によって足の3次元形状が計測できます。 断面間隔は1.0/0.5[mm]の2通りです。 片足の計測時間は数秒です。 ガラス面の上に立っていただき、下からもカメラで撮るので、足裏まで含めた完全な足形状を計測できます。
(株)アイウェアラボラトリーとの共同研究((株)アイウェアラボラトリーより販売)
低価格化のために
8台のビデオカメラの映像をすべてデジタル画像として記録しようとすると、たくさんの画像キャプチャボードとPCが必要になります。 それでは、店頭設置用の低価格に繋がりません。 とは言え、カメラを減らすと影になって取れない部分も出てきます。 そこで、カメラに写った輝度の高いレーザライン光の水平位置をアナログビデオ処理で、抽出する回路を開発しました。 8台カメラでもPC 1台で計測できます。

人体寸法と人体形状モデル

計測したデータは、そのままではただの点の集合でしかありません。 これを人間のデータとして扱うには、人間機能情報を付加しなければなりません。 そこで、人体の解剖的特徴点(骨の突出、靱帯の走行などによってきまる点)を同時に計測します。 INFOOTでは、専用のマーカを付けたポイントを解剖学的特徴点として抽出します。 さらに足の形状データベースと照合して、そのポイントがどういう解剖学的特徴点であるのかを自動ラベリングします。
この特徴点位置データに基づいて、17個の足部寸法を自動計算します。 寸法計算制度は、エキスパート(専門家)の手計測結果と有意な差がありますが、その差は1.0[mm]程度です。

また、専用ソフトウェア「Di+」を用いることで、解剖学的特徴点に基づいた同一点数・同一幾何学構造からなる形状モデル(Homologous shape model)で表現できます。 こうなると、寸法だけでなく、かたちの情報を扱いやすくなり、個人差の比較をしたり、靴型設計に活用したり、統計処理を行えるようになります。
データの二次利用

店頭で計測したデータは、店舗の顧客データとして管理されるのが普通です。 でも、これは本来、顧客個人がアクセスできるものであるべきだと考えています。 そこで、店頭に設置したINFOOTをインターネットに接続し、ID番号や足形状データなど個人を特定できないデータを、ネットワーク上のサーバにコピーする方式を提案しています。 ID番号と個人の対応は、店舗と本人しか知りません。
もし、別にお店に行って同じINFOOTが置いてあれば、再計測せずにID番号を告げるだけでよいのです。 インターネットショップで買い物もできます。 家族の靴を買うこともできるでしょう。 子どもさんであれば、成長に伴って足の形状がどう変わっていくかを記録していくこともできるのです。
靴を買う顧客本人だけでなく、集まったデータは次の靴設計にも役立ちます。 右図のようなかたちの分布図を容易に作ることができるからです。 年齢、顧客層に特化した足の形状情報を知ることができるのです。

文献
- M. Mochimaru, M. Kouchi: Shoe customization based on 3D deformation of a digital human, The Engineering of Sport 4th International Conference, 4, pp.595-601, 2002
- M. Mochimaru, M. Kouchi: Automatic shape modeling of the foot: towards a database of foot shapes, H. U. Lemke, M. W. Vannier, K.Inamura, A. G. Farman, K. Doi, J. H. C. Reiber (Eds): Computer Assisted Radiolody and Surgery (CARS 2002), Springer_Verlag (Berlin), pp.582-587, 2002
- M. Kouchi, M. Mochimaru: Development of a low cost foot-scanner for a custom shoe making system, 5th ISB Footwear Biomechanics, pp.58-59, 2001
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