JSAI2026 企画セッション (KS-10)

大規模家庭電力データとAI解析の融合:20万世帯の実データがもたらす研究展望

 

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産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センターデータ駆動型社会システム研究チームと人工知能知能研究センター社会知能研究チームは人工知能学会全国大会 JSAI2026 にて大規模家庭電力データとAI解析の融合:20万世帯の実データがもたらす研究展望の企画セッション(KS-10)を開催します。

 

日時:2026年6月9日(火) 13:30~15:00

場所:Gメッセ群馬 B会場(展示ホール仮設1)

 

概要:本セッションは、国内最大規模となる約20万世帯の家庭電力ビッグデータを用いたAI解析と、その応用技術について議論する。カーボンニュートラル実現に向けては、実データ特有の欠損やノイズ等の課題を克服する高度なAI技術が不可欠となる。具体的には、当該データを用いた時系列基盤モデルの構築、Masked AutoencoderMAE)による需要予測アルゴリズム開発、デジタルツインへの応用事例を紹介する。さらに、産業界の研究者を交え、社会実装に向けた技術展開を探る。

 

プログラム:

13:30~13:40 大西 正輝(産業技術総合研究所人工知能研究センター)

タイトル:なぜ今電力データなのか?
概要:
カーボンニュートラルやエネルギー需給の高度化が社会的課題となるなか、家庭部門から得られる電力データは、AI研究にとって新たな価値を持つ対象となりつつある。本企画セッションの導入として、なぜ今、家庭電力データがAI解析の対象として重要なのかを論じる。スマートメータやHEMS等を通じて蓄積される大規模な実データは、生活行動や価値観を反映した時系列情報であると同時に、欠損やノイズを多く含む実世界データであり、AI技術にとって挑戦的かつ魅力的な研究対象である。こうした電力データの特徴とAI研究上の意義を整理し、続く各発表への橋渡しを行う。

 

13:40~14:00 本田 智則(産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センター)
タイトル:大規模家庭電力データとAI解析の融合:20万世帯の実データがもたらす研究展望

概要:全国の家庭には多くの太陽光発電・蓄電池・ヒートポンプ式給湯器・空調等のエネルギー機器が普及しており、これらを外部から制御し、最終的に配電系統への影響を考慮した需給制御を実現することは、AIの実応用先として有望な領域となっている。その実現には、実世界の多様な機器・行動パターンを反映した大規模データによる学習が不可欠となる。本発表では、産総研が企業連携を通じて整備してきた、研究用途に利用可能なものとしては国内最大規模となる約20万世帯の家庭エネルギービッグデータを、AI学習用の基盤データとして紹介する。蓄積を進めるデータは、住宅属性、1時間単位の電力消費・発電・蓄電池データ、約7万台の空調1分単位データ、約2万台の給湯器詳細運転データ等となっており、欠損やノイズを含む実データ特有の課題を内包する点も含めて、時系列基盤モデルやデジタルツイン構築の学習基盤として価値を有している。さらに、こうした大規模な実データに加え、実験住宅において統制された環境で取得する高精度なデータを概観し、両者を組み合わせることでAIアルゴリズムを高度化する枠組みを示す。需要予測、デジタルツイン、配電系統影響評価、市場制度設計、蓄電池技術開発等への幅広い展開可能性を提示し、大学・産業界との連携研究に向けた論点を議論する。カーボンニュートラル社会の実現は、これらAI技術が応用される重要な社会的文脈として位置づけられる。

 

14:00~14:15 小澤 暁人(産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センター)
タイトル:日本のエネルギー分野における家庭部門の位置づけとビッグデータ・AI活用への期待と課題

概要:近年、スマートメータやHEMS等を通じて家庭内のエネルギー等データが大量に蓄積されつつあり、これらを活用したビッグデータ解析やAI制御への期待が高まっている。家庭に設置された太陽光発電、蓄電池、給湯機、空調、家電等をアクチュエータとして捉えれば、家庭部門はフィジカルAIの実装可能性が高い領域の一つといえる。一方で、データ連携・標準化、プライバシー保護、消費者受容性、事業モデル、制度設計など、実装に向けた課題も多い。本発表では、家庭部門におけるビッグデータ・AI活用の可能性と課題を整理し、日本のエネルギー転換におけるその役割を技術・政策の両面から検討する。

 

14:15~14:30 大野 優剛(早稲田大学大学院 創造理工学術院 地球・環境資源工学専攻)

タイトル:周期情報を考慮したMasked Autoencoderによる個別世帯電力需要予測

概要:カーボンニュートラルの実現に向けて、家庭部門における分散型エネルギーリソースの活用と需給制御の高度化が重要になっている。その基盤技術として、個別世帯ごとの電力消費特性を把握し、将来の需要を高精度に予測する技術が求められる。一方で、個別世帯の電力需要は生活行動に由来する不規則性が大きく、日周期や週周期など複数の周期性を含むため、集約需要に比べて予測が難しい。こうした課題を検証するためには、実際の世帯から得られた多様な電力利用パターンを含む大規模データの活用が重要である。本研究では、実世帯から収集された大規模スマートメータデータを対象に、時系列データを二次元的に表現し、周期情報を考慮したMasked Autoencoderによる個別世帯電力需要予測に取り組む。得られた知見をもとに、個別世帯需要予測の実応用に向けた課題と、大規模家庭電力データを用いた時系列AI解析の今後の方向性を整理する。

 

 14:30~14:45 小平 大輔(筑波大学大学院システム情報系)
タイトル:強化学習を用いた家庭EV制御技術開発

概要:家庭に普及が進むEVを、電力需給調整に活用するための強化学習ベースの制御技術を紹介する。特に、複数の充電ステーションをエージェントとして扱う階層型マルチエージェント強化学習により、系統側の出力指令への追従と、利用者の希望充電量の達成を同時に目指している。シミュレーションでは、50台規模のEV充電器を対象に、需給調整市場を想定した指令値追従性能とユーザー満足度を評価した。また、実機遠隔制御プラットフォームで測定した通信遅延も踏まえ、AI制御を実際の運用へ適用する際の可能性と課題を議論する。

 

 14:45~15:00 全体討論