HPCCの技術は、製品の加工や製造過程と同じように、製品の設計過程や生産設計に適用することが可能である。そこでは、製品データの新しい標準の開発が鍵であり、その標準データは生産プロセスの設計と、生産・製造プロセスの設計の高度化を通じて活用できるものである。
さらに興味深いことに、それらの新しい標準データは、機械産業、電気産業、建設業、化学産業などあらゆる分野から注目されている。
SIMA(System Integration for Manufacturing Applications)プログラムの一部として、NISTでは、高度製造システム及びネットワークテスト環境(AMSANT:Advanced Manufacturing Systems and Networking Testbed)を設置し、産業界でのユーザにデモンストレーション環境を用意すると同時に、自発的な標準を開発・発展させていくための支援を行なっている。
プロトタイプシステムとインターフェースは、標準的な製造業の組織に適した構造となっている。この研究は、インターフェースのプロトコル、情報モデル、構造の高度化を目指したものである。1995年度には、AMSANTで、機械部品製造アプリケーションと装置プラント産業が開発された。ここでの研究は、HPCCの他の機関と産業界との共同作業で進められており、ワークショップや訓練教材、インターネットによるデータ構造や販売前段階のプロトタイプシステムによって進められている。特に、プロトタイプシステムは、潜在的ベンダーによって実際にインストールされ、テストと評価がなされている。
そこでは、プロトタイプSTEP(Standard for The Exchange of Product data)の機能テストシステムや概要テストに適した開発ツールキット、STEPアプリケーション・プロトコルのためのソフトウェア開発環境などが示されている。
(注13) | 詳細については、 http://elib.cme.nist.gov/fasd/projs/sima-pm/sima.htmlを参照のこと。 |
このプロジェクトは、アイオワ大学とRPI(Rensselaer Polytechnic Institute)で研究されているもので、NIIによって生産組織が設計や製造段階での諸問題をいかに共同開発できるかを検討しているものである。RPIでは、2つの自動車製造会社での異なるCADシステム間で、ステアリングポンプのソリッドモデルのデータ交換するためのコア技術を開発してきた。ここでは、当初、STEPを用いたデータ交換を行なった。このSTEPはその後、ISOの標準として発表されることになった。STEPによって、どのようなCADシステム間であっても製品データの交換のための中立的なフォーマットが提供されているのである。
このアプローチは、コンピュータ技術にも共通である。例えば、10の異なったソフトウェアパッケージが基本的には同じ機能を持っているにもかかわらず、異なったデータフォーマットを持っていた場合、中立的なフォーマット変換プログラムをそれぞれのプログラムとプログラム間ごとに用意しないといけないことになる。こういったケースに似たような状況は、CADシステムなどにおいても、パッケージ数が増えれば増えるほど累乗的に増えていくことになるのである。
1996年度の研究のトピックスは、インターネットやその他のWANにおいて、全方位的な設計のための機械システムのシミュレーションにある。そこでは、高度な生産システムのための中立的データベースが設計され、生産工程の変更のための分散型コントロールシステムが設計された。このシミュレーション環境は生産データの交換のためにPDES(Protocol Development Environment Standard)/STEP標準を用い、対象のモデリングサービスにはCORBA(Common Object Request Broker Architecture)標準を、データの表示にはMosaicを使用するものである。このテストには、異なったCADシステムパッケージとアイオワ大のシミュレーションベースの設計環境を用いて、高級車のサスペンション組み立てを構成する要素の再構築が予定されている。
このプロジェクトは、テキサス大学によるもので、複合材の最適設計のための理論計算上のツールボックスを開発することが目的である。機械技術者とコンピュータ技術者が共同でミクロ構造レベルから直接、複合材の設計、分析を行なうことができる計算式群を開発することを目的としている。
ミクロ構造の特性は、テキサス州オースチンのALCOAやCOMCOといった産業共同体によって提供されている。研究課題は、複合材のミクロ構造のモデリング、基礎構成要素の分析、並行アルゴリズム、およびデータ構造等が挙げられる。
これらの他、1995年度のARPAの実績は、
が挙げられる。
また、1996年度の計画としては、
がある。
中でも、NISTで進められている製造テスト環境研究は、SIMAプログラムの一部として実用テストレベルまで到達している。
(注14) | 詳細については、http://elib.cme.nist.gov/fasd/projs/sima-pm/sima.htmlを参照のこと。 |
(1)プログラム概要
(2)研究実績
SIMAプログラムは、1994年度、いくつかのワークショップを開催した。そこでは、製造アプリケーションの統合のための産業界のニーズ調査、仮想・分散型製造システムの高度操作インターフェースのための表示技術調査、機械・装置両産業におけるSTEPのアプリケーションプロトコル開発のためのユーザ用件定義調査を行なっている。
さらに、追加的プログラムとして、プロトタイプSTEPの機能テストシステムや概要テストに適した開発ツールキット、STEPアプリケーション・プロトコルのためのソフトウェア開発環境などのデモンストレーションが、「NIIによる障壁排除」会議の期間中行なわれた。
また、1994年度には一連の技術報告書が刊行され、ワークショップ議事録を含めたもので、近々WWWでも公開予定である。それらの刊行物の主なものは、
などが挙げられる。
以上2.3.1〜2.3.5に挙げた製造プロセス及び製品の高度化プロジェクトでは、次のような到達目標が挙げられている。
ARPA「MADE・イン・アメリカ」
NASA「航空機器設計及び製造」
<1994年度>
<1995年度>
NIST「製造システム環境」
<1994年度>
<1995年度>
NIST「技術移転環境」
<1994年度>
<1995年度>
NIST「プロセス産業のためのシミュレーションと設計」
<1994年度>
<1995年度>
NSF「製造業のための情報技術」
<1994年度>
<1995年度>
このようにみてくると、製造関連については、特定業種に関してのモデル構築レベルであり、仮想工場や仮想環境の確立にはまだかなりの時間がかかるものと考えられる。
特に、標準化の問題がそこには存在しており、標準的モデルや標準化を考えない特定業種(宇宙産業、軍需産業等)の狭い範囲内では適用が考えられるが、一般的な製造業への適用は、モデリングレベルがここ数年の到達範囲であろう。
技術的ブレークスルーとしては、
の2つが大きなものとして挙げられるが、技術的に見た場合、それほど困難なものではないと考えられる。むしろ、製造工程そのものの進化や各企業ごとの製造プロセスの社外秘部分等社会的要因によるブレークスルーが大きいものと予想される。
これら企業ベースでの高度情報技術の普及は、各企業単体ベースでのスピードの方が早いものと考えられ、トップダウン的普及と個別企業単位での普及との両者のシナジー的進展によって展開が進んでいくものと考えられる。その意味では、HPCCの産業界全体に対する刺激としての役割は重要であり、モデルシステムの積極的なデモンストレーションや訓練プログラムが実施されればされるほど、企業個別のシステムも高度化する遠因となるはずである。
これらの高度製造業プロジェクトは、製造業全般に対する高度情報技術の普及・啓発機能が重要であり、その活動成果は各業種、各企業、各工場単位にボディーブローのように競争力優位を獲得する外部環境として、有効に作用するものと考えられる。
エネルギー需給の管理の改善は、石油消費、発電所への投資、貿易赤字のすべてに利益をもたらす。このため、DOEと公益事業者は、ドキュメントを交わし、エネルギー需給管理に関するNational Challengesを実現するのに必要なツールと技術を評価する。また、予想できる経済的利益に関しドキュメントを交わし、公益事業者がNIIの展開に参加できるように必要な政策または法律の変更を見極める予定である。
開発すべき新技術は、相互操作性、認証、プライバシー制御、multicast data aggregationの分野での分配システムに関するものであり、エネルギー供給・需要をリアルタイムで管理できるユーティリティーの機能強化を行う。
財政支出を計画しているのはDOEであり、広域・分散ネットワークツール、サービス、プロトコルといったテーマでの開発および実用化プログラムに対して資金を投入する。これにより、エネルギー使用の効率、保存、請求、顧客サービスを改善し、エンドユーザ相互の交流を喚起し、エネルギー使用の制御を可能とする。
(1)予算
(注15) | HPCCIT/IITA Reports(1994年2月) IITA Task Group報告(議長:Melvyn Ciment (NSF)、 共著者:Randy Katz (ARPA), YT Chien (NSF))。詳細はhttp://www.hpcc.gov/reports/reports-nco/3.5.htmlを参照のこと。 |
(2)実行計画内容
(3)成果と到達目標(到達目標は初めの実行プランから変更されている)
HPCCプログラムではNational Challengesとして下記の八項目を挙げているが、ここでは第2項の政府情報の一般公開を取り上げる。この項目は第1項のデジタル・ライブラリ構築技術を基盤技術として、政府関連機関に蓄えられた各種の情報を専門家から子供たちまでに広く提供することを目標としている。そのため、第5項の教育と生涯学習の項目とも深い関連を持つ。
Mosaic等のブラウザでアクセスできる、インターネット上のサーバに構築されたHPCCプログラムの財政支援を受けたデジタル・ライブラリを下記に挙げる。
米国航空宇宙局(NASA:National Aeronautics and Space Administration)はデジタル・ライブラリ関連技術とリモートセンシング情報利用プロジェクトに関する情報を一般に公開するために、様々な企業や大学と協力してリモートセンシング情報公開センター(Remote Sensing Public Access Center)を1994年に設立した。また、1994年から1995年にかけて以下の18のリモートセンシング情報利用プロジェクトに資金援助を行った。
(1)アテナ(Science Applications International Corporation)
(2)BADGER(Lockheed Missile and Space Corporation)
(3)大気圏学及び宇宙科学のデータと
情報の中学3年生その他への提供(ワシントン大学)
(4)地球科学分野の人々に向けた教育課程の試行
(ECOlogic Corporation)
(5)緊急事態及び危機管理手法(北テキサス大学)
(6)森林管理計画(ミネソタ大学)
(7)NASAのリモートセンシングデータベースを用いた
アプリケーションとインターネット技術を通じた
初等教育課程での科学教育の効果増大
(The Analytic Science Corporation)
(8)環境探査(Wheeling Jesuit College、ウェスト・バージニア州)
(9)リモートセンシング情報を用いた洪水管理の改善(SENTAR、INC.)
(10)ハワイでの教育、一般公開及び観光への
NASAデジタルイメージ情報の利用
(ハワイ大学とテラシステム社)
(11)知識へのパスポート:双方向テレビと
インターネットを通じた科学の最前線への電子的旅行
(The Childhood Project, Inc.)
(12)テレビを通じた地球と宇宙科学情報の一般公開(WRC- TV)
(13)衛星データ利用のリアルタイム農事管理用意思決定ツール
(ウイスコンシン大学)
(14)国立科学博物館を通じて地球と
宇宙科学データを参照するための基盤
(カリフォルニア大学バークレー校)
(15)ネットの渡り歩き:圧縮された衛星写真を用いた
水に関するアプリケーション(メーン湾水族館)
(16)日常の教育ツールとしての科学と
インターネット利用(スミソニアン宇宙物理天文台)
(17)火山の世界(ノースダコタ大学)
(18)宇宙への窓(ミシガン大学)
1995年度の後半にNASAは産業界と学会のパートナーにリモートセンシングアプリケーションの第2ラウンドを構築するための協同体作りと補助金支給を提案した。補助金は1996年度に支給される。
米国海洋・大気科学局(NOAA:National Oceanic and Atmospheric Administration)は環境データと情報を整備する役割の国家機関である。これらのデータは独立以来の環境の歴史を表している。近年、非常に大量のデータ(5000件以上)がオンラインで直接に、または注文に応じて利用できるようになった。
NOAAの3個所の国立情報センターがこれらの情報を管理・配布している。近年各センターはHPCC関連技術を用いてこれらを供給する新しい方法を探索してきた。国立気象データセンター(NCDC:National Climatic Data Center)は利用者が直接気象情報を操作し、その結果をオンラインで見られるGlobal Climate Perspectives System を開発し、利用できるようにした。国立地球物理データセンター(NGDC:National Geophysical Data Center)は太陽表面から地球物理学に関するデータ、また最新のDMSP衛星のイメージ情報から古気象学のデータまで広範囲の情報を供給している。国立海洋科学データセンター(NODC:National Oceanographic Data Center)は世界中から得られた海洋科学の最新データをオンラインでアクセスできるようにしている。
さらにNOAAは40カ所以上の情報センターをオンラインで国中で利用できるようにしている。
1996年度にはNOAAはインターネットの新しいツールを使うデータ配付方法の開発を計画している。さらに、多彩なNOAAの環境データを練り上げ、NOAAの各地のデータセンターに分配し、より短時間に確実にアクセスできるようにしようとしている。
教育省(ED:Department of Education)はインターネットベースのAskERIC(Educational Resources Information Center)を設立した。これは下記の機能を提供する。
1995年度と1996年度は仮想図書館にマルチメディアやハイパーメディアを含めて、電子化されたERICの参考文献のデータベースを作り、1995年度中にこの中に挙げられた参考文献の前文を利用可能にすることに注力する。
1995年度と1996年度に教育省の教育研究改善局(OERI:Office of Educational Research and Improvement)は、現在の研究開発活動を含む検索可能なデータベース、効果的な例題プログラム、教育関連の諸統計、INetを通じてアクセス可能な省内情報、それらの目的に用いるInstitutional Communications Networkの中核部分を開発している。更に、幼稚園児から高校生、また身体的な不自由がある人のためにMosaicの機能拡張を試している。
国立医学図書館(NLM:National Library of Medicine)のコンピュータベースの医学文献解析検索システム(MEDLARS)は図書館にある生命医学や健康関連の大量の情報に素早くアクセスできるようにと構築された。世界規模の通信ネットワークを使って、MEDLARSの検索サービスはオンラインで個人や研究所に開放されている。このサービスは一日当たり1万8千件以上利用されている。
MEDLARSをさらに使いやすく、簡便に検索できるように、NLMはPC/マッキントッシュ互換のGrateful Medソフトウェアを開発した。インターネットの素早い通信機能を生かしたGrateful Medの利便性により、健康管理の専門家の利用が大きく増進した。
国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI:National Center for Biotechnology Information)は分子生物学、生化学、遺伝学に関する知識を自動的に蓄積・分析するシステムの構築を進めている。またNCBIは生物学上重要な分子の構造と機能を分析する、最先端のコンピュータベースの情報処理手法の研究を取りまとめている。これは世界規模のインターネットを通じて、バイオテクノロジーの研究者と医療関係者からのデータベース利用と整合化を促進させている。
国立ガン研究所(NCI:National Cancer Institute)は、ガンの抽出、予防、治療、看護に関するPDQ (Physician Data Query)記述機能(英語とスペイン語の利用が可能)と、ガンシート、文献を含むCancerFax とCancerNet(インターネットのe-mail)情報を無料で提供している。
HPCCプログラムの内、政府情報の一般公開を進めるための課題は次の通りである。
(1)NREN関連
(2)ASTA関連
(3)IITA関連
各項目の1996年の開発目標を次に示す。
(1)NREN関連
(2)ASTA関連
(3)IITA関連
政府情報の一般公開に関する活動を進めている主要機関の内、米国航空宇宙局(NASA)、米国大気海洋庁(NOAA)、教育省(ED)の活動内容について紹介する。
(1)NREN
(2)Information Infrastructure Technology
(3)Information Infrastructure Applications
(1)Advanced Computation
(2)Networking Connectivity
(3)Information Dissemination Pilots
(1)AskERIC Service
(2)OERI Institutional Communications Network(INET)
(3)Regional Education Laboratory Program
(4)Teacher Networking Project
(5)National Institute on Disability
and Rehabilitation Research
(6)GOALS 2000 Technology Planning Grants to States