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米国の連邦政府R&D計画における省庁間の役割分担と連携の仕組み

5.3 省庁間連携に影響を及ぼすその他の要因

DLIやNITRDイニシアチブのような大規模な総合的省庁間プログラムは、明らかに、予算と人材の投入先を新しい方向に劇的に変化させる方法として注目されているメカニズムである。これは、もし適切に構想され、管理されれば、連邦政府内の相互交流とプログラム改善の効果的な手段となる。しかし、政府の内外には、省庁間の調整と連携を効果的に機能させる能力を潜在的/顕在的に備えている他の要因も存在する。以下では、そうした要因の一部について検討する。

5.3.1 小規模なプロジェクトが生み出す大規模な影響

この数年の間に、非公式の小規模なコラボレーション・チームが、主として草の根レベルの行動を通じて、連邦政府の中に広がってきた。知名度は高くないが、こうした公式/非公式の二者間および多者間の共同イニシアチブも、大規模なイニシアチブとよく似た (しかし小規模な) 形で、正規の政府機関内プログラムを補完するのに寄与している。こうしたプログラムの一部は、すでに実際に非常に大きな効果を上げている。これが特に当てはまるのは、共通テーマの研究インフラストラクチャを構築したり (例:下記のHLRイニシアチブ)、新興分野における研究 (例:下記のCNP) を支援してリスクを分担することを目的として構想されたプログラムである。表5.7に、こうしたプログラムの例として、主導機関のNSFに他の政府機関がパートナーとして加わっているイニシアチブを示す。こうしたコラボレーションの形態と影響はプログラムによって異なるが、短期的または長期的な研究開発投資への貢献度は、見過ごすことができないものである。

表5.7 大規模な国家イニシアチブ以外の形でNSFと他の機関の間で進められている共同プログラム
提携機関
プログラムの対象分野
共同活動の目標
コラボレーションの形態と影響
NSFおよびDARPA
(1995〜1998年)
人間言語資源 (HLR: Human Language
Resources)
共有データベースの開発と利用によって音声/言語技術の発展を加速させることを目標とする。 ペンシルバニア大学の言語データ・コンソーシアム (LDC:
Linguistic Data
Consortium) に資金を提供。両機関が資金を提供し、NSFがプロジェクト選定を管理。LDCは3年で自己資金で運営可能となり、音声、テキストの210の言語データベースによって全世界にデータ資源サービスを提供。
NSF、DARPA、およびNSAとCIAの研究開発部局
(1996〜1999年)
音声/テキスト/画像/マルチメディア先端技術
(STIMULATE: Speech, Text, Image, and MULtimedia
Advanced Technologies)
複数の機関からの資源を活用してマルチメディア/マルチモード・コミュニケーションの急速な発展を推進することを目標とする。 NSFが、15のプロジェクトに資金を提供する1,500万ドルの共同プログラムを管理。この分野におけるNSFの基礎研究プログラムに多大な影響を与えた。米国の諜報機関の研究開発部門が共同プログラムに参加した最初の事例。
NSFおよびNIH
(2001〜2004年)
計算神経科学プログラム (CNP:
Computational Neuroscience Program)
電子計算科学と神経科学の交差領域で台頭してきた新興分野に注力する研究機会を提供することを目的とする。2つのグループのコラボレーションが必須。 両機関が (それぞれ複数のプログラムに対して) 拠出する総額700万ドルの資金を基盤とする。NSFが審査と選定のプロセスを管理。NIHがプロジェクト管理の責任を分担。この2つの機関による最初の公式共同プログラムで、将来のプログラムの先例となる。
NSFおよびNIH 生体工学 (バイオエンジニアリング) と生物情報学 (バイオインフォマティクス) さまざまな科学/工学分野における研究者を育成し、生体工学と生物情報学の領域を担えるようにすることを目標とする。この分野の人材ニーズを解決する。 2つの機関が共同で教育研修プログラムを夏期講座の形で実施。資金は小規模であるが、両機関に共通する問題の解決に貢献することが見込まれる。

5.3.2 背景で大学が果たしている役割

複数の機関を舞台裏でまとめるのに役立ってきた重要な要因の1つは、研究コミュニティ (主として研究大学) の存在そのものである。大学は、国の研究開発の大部分を実行しており、そのほとんどが連邦政府による助成を受けている。「高等教育新聞」(Chronicle of Higher Education) によると、研究大学の上位20校は、2000年に多数の機関から約100億ドルを受け取っている (www.chronicle.com)。

たとえば、イリノイ大学は、全大学の中で16位であるが、2000年に連邦政府から3億7,000万ドルを受け取り、多数の科学/工学分野でさまざまな研究を実施している。複数の財源を活用することで、同大学の工学部は、非常に多くの大規模プロジェクトや研究センターを始動することが可能になった。さまざまな政府機関が、個別にあるいは共同で、戦略的な節目を迎えた研究のスポンサーとなり、一定の期間にわたって資金を提供している。図5.4に、過去60年間に多数の政府機関がどのように大学の研究センターのためにタイムリーな支援を提供してきたかを示す。

こうした場面では、実際には、2つの要因が働いている。1つは、各政府機関がそれぞれの任務を遂行するのに最適な研究施設と研究者を捜す途上で、イリノイ大学のような優れた研究センターに着目するので、こうした研究センターは、当然ながらさまざまな機関から資金を引き付ける、ということである。このこと自体が、複数の政府機関の間に連携を誘発する力として機能する。もう1つの面は、大学の大規模な研究センターやプロジェクトは、必要に迫られて、その活動に投資してくれる複数の財源を捜し求めなければならず、そのためには、複数の機関の側でも互いに連携して共同出資や管理の分担の可能性を探ることが必要になる、ということである。こうした要因は、ほとんどの省庁の特定プログラムでも、近年の省庁横断イニシアチブでも、有効に働いてきた。米国には、約200校の研究大学があり、そのすべてが、多かれ少なかれ、省庁間連携の仲介役としての機能を果たしてきたのである。


図5.4 イリノイ大学の研究センターに対する多数の政府機関のタイムリーな財政支援

5.3.3 GPRA:省庁横断的な活動の重要性を高める新たな要因

これまで、省庁間の連携活動を育成して維持する公式あるいは非公式の手段について検討してきた。ごく最近まで、連邦政府内には、省庁間連携を業績の評価基準として採用する機関が存在しなかった。こうした機関連携プロセスが時の試練に耐えるためには、最終的には、省庁間プログラムの成否 (あるいはプログラムで使用した調整/連携の手法の成否) を厳格に評価する必要が生じる。米国連邦議会は、1993年に制定された政府業績成果法 (GPRA: Government Performance Results Act) の中で、この方向に進むための一歩を踏み出しているように思える。GPRAは、省庁の着目点の転換を促し、プログラムとその助成対象に関心を奪われている状態から、計画、意思決定、そして実行の成果に注目する方向に発想を切り換える目的で構想されている。この法律によれば、各政府機関は、年次計画と業績報告書を作成して議会に提出し、議会の会計検査院 (GAO: General Accounting Office) は、政府機関の業績をその計画書と報告書に基づいて評価する。GPRAは、どのような形で省庁間連携の発展に貢献するだろうか。これに答えるのはおそらく時期尚早であろうが、無駄を排除し、重複を減らすことを目的とした省庁内および省庁間の連携は、GPRAが要求しているところである。さらに、NSFのような政府機関は、省庁間プログラムを戦略的計画と業績評価基準の一部として位置付け、省庁間プログラムを各機関の事業計画の中に盛り込む、という道を選択する可能性もある。GPRAは、10年前に制定された法律ではあるが、まだ全面的に施行されたばかりであり、その効果はさらに数年後に現れてくるであろう。GPRAが、省庁間の共同活動の価値を法律によって高めるという点で、効果的な役割を果たすことは疑いない。

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