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米国の連邦政府R&D計画における省庁間の役割分担と連携の仕組み

5.2 ネットワーキング/情報技術研究開発 (NITRD) プログラム

NITRDプログラムは、ほぼ10年にわたってさまざまな連邦政府機関で実施された情報技術分野における研究開発プログラムの集大成である。現在の形態では、この多機関合同プログラムは、連邦政府の科学技術研究ポートフォリオの中で特別な位置を占めている。他の分野でも機関間の合同イニシアチブは存在したが、NITRDを推進してきた一連のイニシアチブほど広範な深い影響を研究界、政府、そして社会全体に対して同時に及ぼしてきたものは存在しない。本項では、主として、このプログラムのトレードマークとも言うべき省庁間連携の背景となっている諸要素を中心として、このプログラムの内部的な動きを検討してみる。近年に至るまでのNITRDの技術的な目標、プログラムの活動内容、全体的な研究成果の詳しい解説については、別のAITEC調査報告書を参照されたい [9]。

5.2.1 拡大の10年

やや意外とも思えるが、NITRDの省庁間協力は、米国連邦議会の動きが発端となって生じたものである。1991年、連邦議会は、高性能コンピューティング (HPC: High-Performance Computing) 法を可決したが、この法律は、情報技術研究プログラムにおいて、DOD、DOE、NASA、NIH、NSFをはじめとする複数の省庁/政府機関にわたる省庁間協力を明示的に要求するものであった。こうした政府機関は、この立法以前にも非公式には協力関係を築いていたが、この議会の要求は、非常に時宜に適った先見性が高いものであることが判明した。これは、連邦政府のIT研究開発の枠組みを確立することに役立ち、長期的なビジョンと目標を中間目標やミッション上の要件と結び付けることに貢献したのである。さらに重要なのは、この立法が、省庁間の協力と連携、そして学界や産業界とのパートナー関係について、その要件の概略を示したことである。HPC法以降の10年間に、この省庁間プログラムは着実に発展して、すべての主要な連邦政府機関が参加する非常に生産性の高い研究開発活動へと変貌し、米国のほとんどすべての主要研究大学や産業界の多数の組織とのコラボレーションが実現されるに至った。こうした年月の間に、調整や連携の知恵と必要性の両方が相乗的に機能して、この研究活動に関係するすべての組織から最も優れた最大限の成果を生み出した。すべての連邦政府機関が単独で行動することの困難さと複雑さに加えて、この分野の学際性と先進性が、研究開発投資における緊密な協力とコラボレーションを要求してきたのである。このような背景の中で、連邦政府のIT投資の調整/連携が、知識の進歩、新しい技術の実現、強力な国家インフラストラクチャの創設、そして人的な能力とミッション指向の研究の両方の最大活用を強く促したのであった。その成果として実現されたのが、幅広く利用可能な、相互運用性が高い、汎用的な技術、ツール、アプリケーションであり、こうした成果によって、連邦政府は重要なミッションのための最先端システムの導入を着実に拡大できるほか、商用開発にも拍車がかかり、経済が活性化するのである。

一般社会や政府機関自体にとって、この10年間の拡大がもたらした最も顕著で大きな影響は、予算規模の増大である。資源、特に財務的な資源は、研究プログラムの拡大を (表立った形と背後からの両方で) 推進する原動力となることが多い。ITの分野では、省庁間プログラムが、連邦政府の研究開発投資全体と参加機関の着実な拡大に結び付いてきた。図5.3に、すべての政府機関にわたるIT研究助成の近年の推移を示す。議会がHPC法を成立させてから12年で、IT予算は、1991年の4億8,900万ドルから2003年度要求額の18億8,900万ドルへと、ほぼ4倍に膨れ上がったのである。


図5.3 省庁間イニシアチブに基づくIT研究助成:1991年〜2003年
(出典:NITRDプログラム国家調整局 [NCO])

予算の増額と並んで、さらに劇的な増大を示したのが、人員の数と、各人員が省庁間連携プロセスに関与する度合いである。表5.2に、1994年から2003会計年度までの変化の要約を示す。ここに示した数値は、この期間に生じた予算の増加が、それに匹敵する参加人員の増加 (29人から103人へ) を伴っていたことを示唆している。このような数値はもちろん、それぞれの政府機関を代表する職員として公認された人員の数を表しているにすぎない。実際には、各機関からはもっと多くの人員がさまざまな段階で (すなわち、プロジェクトの計画から、実施、管理までにわたって) NITRDプログラムの多様な側面に関与しているのである。NITRDのような省庁間プログラムの開発と管理に携わる人材に対するニーズは、定量化することが難しい集計項目の1つである。それでも、ここに示した成長動向は、連邦政府全体にわたって多数の機関を巻き込む形となった連携作業の水準と集中度の高さを示す指標を与えてくれる。

表5.2 研究開発予算と各機関からの参加人員の増大
 
1994会計年度
2003会計年度
NCOおよび
政府機関
機関からの
参加スタッフ数
機関の予算
(単位:100万ドル)
機関からの
参加スタッフ数
機関の予算
(単位:100万ドル)
NCO 7 NA 14 NA
DARPA 3 340 5 223
DOE 2 122 10 190
NASA 3 113 12 213
NIH 5 58 10 327
NSF 3 267 22 679
その他 6 38 30 257
合計 29 938 103 1,889

5.2.2 省庁間の連携を成り立たせる諸要素

複数の機関から参加した多数のプログラム・マネージャやその他の人員を連携させ、共通の目標と複雑さを増す課題に団結して取り組ませるためには、単なる財務的な資源を超えた要素が必要となる。10年の歴史の中で、NITRDは、政府内の機関/省庁間だけでなく、科学技術政策局 (OSTP) や行政管理予算局 (OMB) を通じた議会と行政府の相互関係についても、調整と連携のプロセスを効果的に管理できる、非常に優れた組織を築き上げてきた (議会と行政府の関係の説明については第3章も参照)。NITRDは、連邦政府の資源を適切に管理してコラボレーティブな事業に組み込むことに成功したモデル・ケースとなり、他の分野でも模倣されるようになった。このモデルは、いくつかの主要な要素から成り、それらの要素は全体として、各機関の独立性と予算権を犠牲にすることなく連携を可能にする。これらの要素によって、NITRDプログラムは、文字どおり、各機関が単独で行動している場合の「部分の単純な合算」よりも大きい「全体」を達成することが可能になったのである。

連携の管理体制

この体制の基盤は参加機関の集合である。当初は、少数の研究開発機関が非公式に関係していただけであったが、現在では、公式に参加が認められた12の連邦政府機関が関係している。これには、DARPA、DOE、NASA、NIH、NIST、NSFといった「大規模研究開発」機関だけでなく、情報技術をそれぞれのミッションの遂行に利用している他のさまざまな機関が含まれている。参加機関の完全なリストとそれぞれの研究対象領域は、付録2に記載されている。

作業部会 (ワーキング・グループ) を支える活動

戦略的プランニングとプログラムの実施は、省庁間連携の2つの最重要領域であり、NITRDプログラムでもコア・ビジネス (中核業務) となってきた。このコア・ビジネスの中心には、共同研究計画の作成がある。詳細は時間の経過とともに移り変わるが、プログラムの共同研究計画は、さまざまな個別研究分野 (PCA: Program Component Area) に即した形式で表現される。NITRDには6つのPCAがあり、それぞれがIT研究の特定の側面に焦点を合わせている。各PCAには、関連がある研究領域における機関の代表者から構成された調整部会 (Coordinating Group) がそれぞれ設けられている。こうした調整部会は、実際には作業部会 (ワーキング・グループ、いわゆる実働部隊) であり、定期的に会合を開いたり非公式に意見交換して、共同の意思決定を行い、戦略的プランを作成する。表5.3に、現時点における6つのPCAとその活動範囲の要約を示す。

表5.3 NITRDの個別研究分野 (PCA) とその主な活動
個別研究分野 (PCA) と調整部会の議長機関/主幹官庁 (2002会計年度)
研究計画と活動

ハイエンド・コンピューティング (HEC: High End Computing)

  • HEC研究開発 (HEC R&D)
  • HECインフラストラクチャおよびアプリケーション (HEC I&A)

共同議長機関:NSFおよびDARPA

  • 先進的コンピューティング・アーキテクチャ (クラスタ、グリッドなど)
  • 大容量記憶装置
  • 革新的アーキテクチャを活用するためのシステムとアプリケーション・ソフトウェア
  • 研究ニーズと各機関のミッションを満たすための最先端コンピューティング・システム
  • 2つのサブグループによって業務を遂行 (一方は基礎研究開発、他方はアプリケーションに注力)

大規模ネットワーキング (LSN: Large Scale Networking)

  • 高性能ネットワーキング・アプリケーション・チーム (HPNAT)
  • 共同設計チーム (JET)
  • ネットワーク研究チーム (NRT)

共同議長機関:NSFおよびDOE

  • ネットワーク・アクセス、信頼性、セキュリティ、スケーラビリティ、管理技術
  • 極端な環境における能動的かつインテリジェントなネットワーキング
  • 高性能のミドルウェアとテストベッドを必要とするアプリケーション - センサー・ネットワーク、グリッド、共同研究所 (collaboratory) など
  • 政府機関以外のメンバーも含む3つのサブチームによって業務を遂行
高信頼性ソフトウェア/システム (HCSS: High Confidence Software and Systems)

共同議長機関:NSFおよびDARPA

  • ソフトウェアとシステムの可用性、信頼性、安全性
  • 情報の確実性、存続性、プライバシー、セキュリティ
  • 確実な開発および認定プロセス
人間/コンピュータ間のインタラクションと情報管理 (HCI&IM: Human Computer
Interaction and Information Management)

共同議長機関:NSFおよびDARPA

  • 大規模データセットを処理、分析、可視化するツール
  • 言語ベースのデータベースと分析ツール
  • 共同研究所 (collaboratory) のための知識レポジトリとツール
  • 人間/システム間のマルチモード・インタラクション
  • 人間側の操作能力の強化
ソフトウェアの設計と生産性
(SDP: Software Design and Productivity)

共同議長機関:NSFおよびDARPA

  • 複雑なシステムのソフトウェア・エンジニアリング
  • エンドユーザー・プログラミング (ドメイン固有言語、インテリジェント・テンプレート、例題によるプログラミング(programming by example)など)
  • コンポーネント・ベースのソフトウェア開発
  • 組込型システムのためのソフトウェア
情報技術および情報技術労働力開発が社会/経済/労働に及ぼす影響 (SEW: Social, Economic and Workforce Implications of IT and IT Workforce Development)

議長機関:NSF

  • 社会におけるITの相互作用と効果に関する学際的研究
  • カリキュラム開発、特別研究員制度、奨学金制度
  • 情報ベースの学習ツール、生涯学習、遠距離学習の分野における研究開発

注目すべき点として、連邦政府の研究開発分野における主導組織の1つとして、NSFが、こうしたPCAの指導役を担う形で重要な役割を果たしてきたことがある。上の表に示したように、NSFは、各PCAに共同議長役として積極的に関わっている。このリーダーの役割がNSFに委ねられる主な理由は、NSFがすべての科学技術分野で広範な責任を担っていることである。研究と教育におけるNSFに特有のミッションも、NSFがリーダー役を務める理由の1つとなっている。さらに、NSFは、業績に基づくプロジェクトの評価と選定、効率的な管理、そして共同イニシアチブを目的とした他の機関とのコラボレーションの方針といった面で、長い歴史を持っている。多くの点で、ほとんどの連邦政府機関は、複数の利害や組織文化から成るグループを率いる「中立的」なリーダーを選択しなければならないとき、NSFに白羽の矢を立てようとする。この事実は、省庁間プログラムがどのような形で、またどのような理由で効果的に機能したのかを解明しようと試みるときに、興味深い付随的ポイントとなる。連邦政府内にNSFのような「中立的」な機関が存在することは、すべての政府機関にとって大変に好都合であるように思われる。

情報技術研究開発に関する省庁間作業部会 (IWG/ITR&D)

実際、NSFは、上記の役割だけでなく、NITRD階層内のもう1つの主要な組織、すなわち、国家科学技術会議 (NSTC) のワーキング・グループである「情報技術研究開発に関する省庁間作業部会」(IWG/ITR&D: Interagency Working Group on Information Technology R&D) の議長役も務めてきた。この省庁間作業部会 (IWG) は、各参加機関からの代表者と、行政管理予算局 (OMB)、科学技術政策局 (OSTP)、そして国家経済会議 (NEC: National Economic Council) の代表者から構成される。要約して言えば、IWGは、多機関合同プログラムの実務的な調整と連携を、毎年、戦略的プランニングから予算編成、活動の評価までのプログラム・サイクル全体にわたって提供する。また、このIWGは、特にPCAの活動を監視し、各PCAがそれぞれの領域において参加機関の代表者間の日常的な調整作業の大半を実施するのを監督する。ここで注意すべき点は、このIWGが、どの機関に対しても実体的な強制力や権限を持っていないことである。多数の利害を調整して単一の研究計画にまとめ上げるIWGの能力は、説得力の行使、そして制度的な影響力と資源の慎重な利用を所期の結果の実現に役立てることによって発揮されなければならない。IWGの議長役は、このような重責を担っているのである。

PITACとNCOの役割

NITRDプログラムの推進を支援する組織として、さらに2つが挙げられる。第一は、大統領情報技術諮問委員会 (PITAC: President's Information Technology Advisory Committee) である。PITACは、1991年の高性能コンピューティング (HPC) 法によって議会が設立を決定した機関である。この委員会は、大統領、議会、そして情報技術研究に関係している連邦政府機関に対して、専門知識、独立した立場からの提言、そして政策の勧告をすべての重要領域について提供する。産業界と学界のトップレベルの専門家を招いて構成されるPITACは、産業界、政府、社会におけるITの開発と採用を推進する国家の取り組みを指導する役割を担う。過去数年間、PITACは、多数の小委員会とタスクグループを通じて、大統領への報告書を数多く作成し、その範囲も電子政府から、保健医療分野でのIT活用、電子図書館の将来像にまで及んでいる。こうした取り組みは、PITACメンバーだけでなく、一般社会も巻き込んだ形で実施された。PITACがNITRDプログラムのために実行した活動が、この数年間におけるNITRDプログラムの活性化と予算拡大に大きく貢献したと考えている人は多い。

第二に、国家調整局 (NCO: National Coordination Office) がある。NCOは、IWG、PCA調整部会、そしてPITACに対して、技術面と運営面での支援を提供する。NCOの運営資金は、参加機関がそれぞれのNITRD予算に比例する形で分担する。その支援業務を別として、NCOの主要な活動成果の1つは、議会に対する大統領の各年度予算請求の補遺資料 ("Supplement to the President's Annual Budget") として、NITRDの活動成果に関する年報を編纂して発行していることである。ブルーブック (Blue Book) と呼ばれるこの刊行物は、多数の機関による情報技術研究開発 (IT R&D) の成果に関する、タイムリーで質が高い技術的な詳細情報の源泉であり、ITに対する国民の展望という点で、社会に大きな影響を与えている (www.ccic.gov/pubs/index.htmlを参照)。

5.2.3 省庁横断プログラム:2003会計年度のNITRD研究計画

NITRDプログラムにとって非常に重要な意義がある年次活動の1つは、省庁横断的な予算請求の一環として、研究計画と実施計画を共同作成することである。IWGは、PCAやPITACとの一連のレビューや戦略的プランニング・セッションでこの活動を調整している。もちろん、各機関にはそれぞれ固有の優先課題とミッション要件があるが、それでも、各機関は、PCAの目標と各年にOMBとOSTPから出される指令に沿って行動する義務がある。1つの実例として、2003会計年度に向けた協議の結果、共同研究計画とその資金援助に関する指針が作成された。この資料は、省庁共同の予算請求を正当化する根拠として提出される。

コンセンサスに到達することは決して容易なことではないが、これが、IWGとPCAの主要な仕事なのである。2003会計年度の場合、このようなコンセンサスに基づいて、次のような優先研究テーマが設定されたが、これはPCAの重点活動領域とほぼ一致する。

ハイエンド (テラスケール) コンピューティング

・高性能コンピュータ・アーキテクチャ − ハードウェア、システム・ソフトウェア、およびアプリケーションが課す要件の間のトレードオフの複雑さを理解して管理することに重点を置く。

・分散型のテラスケール・コンピューティング・インフラストラクチャ

・ 上記のための先進的なシステム・ソフトウェアとプログラミング環境

・ 革命的なアプローチ (例:量子コンピューティング、生物分子コンピューティング)

未来のネットワーク:動的な柔軟性、高帯域幅、セキュリティ

・信用:セキュリティ、プライバシー、信頼性

・適応型の動的でインテリジェントなネットワーキング

・ ネットワーク性能の測定とモデル化

・ 異機種間ネットワーク・トラフィックの大幅な増加に対応できるスケーラブルな技術 (例:数十億個の無線機器やセンサーから成る環境)

・ 垂直統合やサポート・ツール/サービス (例:ミドルウェア) などのネットワーキング・アプリケーション − ネットワークを各機関のグリッド (NSFのTeraGrid、DOEのScience Grid、NASAのInformation Power Grid) に合わせて最適化することを目的とした多機関共同プログラム・チームである「ミドルウェアおよびグリッド・インフラストラクチャ共同研究」(MAGIC: Middleware And Grid Infrastructure Coordination) が活動を開始

・ 革命的な研究:複雑さの理論 (接続性の指数関数的な増加に応じたネットワーク機能の拡大に対応する新しいモデルの探求)

インタフェースの機能拡大による人間の活動の支援

・先進的な諸機能:言語技術 (例:音声インタフェース、マルチモーダル・インタフェース)、センサー技術

・認知機能に基づいた対話システム設計、動作/視覚/聴覚のためのコンピュータ支援人工装具

・ 専門知識のモデル化と共有のための手法と技術、複雑な作業のコラボレーションの成果を測るためのモデルと評価基準

データから知識を構築するための先進技術

・超大規模データ・マイニング技術による膨大な量の不統一な異種データの高速な選別、相関、評価

・インテリジェントな検索エージェント、抽出と要約のためのツール

・分析、報告、発表のためのユーザー指向のフレームワークとインタフェース

・データ・ストレージ/データ管理技術の高度化

・異種のデジタル・コンテンツ、ソフトウェア機能、大規模アプリケーションを統合するシステムを試作して評価するためのテストベッド

高信頼性ソフトウェア/システム

・確実性を支える基盤 (例:高信頼性を生み出す諸属性の厳格なモデル化と推論)

・スケーラビリティの高い障害防止/検出/分析/回復機能

・検証技術と妥当性検査技術

・フォレンシック・ツール (不正/障害痕跡調査ツール) と診断ツール

・ ドメイン固有の証明技術

・ 再利用可能なミドルウェア・サービス (例:大規模な分散型/組込型システムのタイミング、コンセンサス、同期化、複製を可能にする効率性/予測可能性/スケーラビリティ/信頼性の高いプロトコル)

ソフトウェアの設計と生産性の向上

・ソフトウェア/システム科学 (例:プログラミング言語やコンパイラの作成手法など)

・自動化されたエンジニアリング (例:効率的で信頼性の高いソフトウェア・コンポーネントと統合プロセス)

・並列に動作するネットワーク化されたアプリケーションの相互運用性や、ドメイン固有の開発環境の迅速な構築とカスタマイズを可能にする構成可能ツール

・組込型アプリケーション/システムを開発するためのパイロット・プロジェクトと実証的な技術研究

各機関は、通常の研究計画のほかに、特に共同研究計画を維持するような2003会計年度の新規または継続プログラム活動を明らかにしなければならない。これは、基本的に、NITRDの助成計画全体に対する各機関の貢献のあり方と予算の正当化を表すものである。表5.4に、主要な研究目標と、その達成を支えるための各機関の任務の簡潔な要約を示す。

表5.4 研究計画全体に貢献する各機関の計画
主要なイニシアチブ
DARPA
DOE
NASA
NIH
NSF
ハイエンド (TeraScale) コンピューティング・インフラストラクチャ/アプリケーション 「高生産性コンピューティング・システム」(High-Productivity Computing Systems) プログラムによって防衛アプリケーションに注力 アルゴンヌ国立研究所 (ANL: Argonne National Laboratory) を施設運営機関として財政支援することでNSFのDTFに参加 新規活動なし 新規活動なし 分散型テラスケール施設 (DTF: Distributed Terascale Facility) のために、NCSA、SDSC、ANL、カリフォルニア工科大学 (Caltech) の4拠点に5,300万ドルを投資
未来のネットワークとグリッド接続 スケーラビリティの高いネットワークのモデル化とシミュレーション、自己回復型ネットワークの実証実験、MAGICの支援 テラビットのスループットを可能にする高性能伝送プロトコル、エンドツーエンドの性能監視、ネットワーク診断の研究、MAGICの支援 ハイブリッド衛星移動体無線アドホック・ネットワーク・アプリケーションの実証実験、ネットワークQoSの研究、MAGICの支援 スケーラビリティとセキュリティの高い技術を保健医療関連のネットワーク環境に適用したアプリケーションの実証実験、MAGICの支援 ミドルウェアの研究、大学間高性能接続プログラム、インターネット技術の研究、MAGICの調整役を担当
人間の活動を支援するインタフェース技術 音声対話システム、認知処理の高度化の研究 科学共同研究環境のための統合化されたソフトウェア・ツールセット 課業管理のための技術、チームの認知能力の向上、自律型装置に組み込むインテリジェント・ソフトウェアの研究 生物医学データを探索するためのモデリングおよびシミュレーション・ツール、先進的なビジュアリゼーション (可視化) 技術 人間の対話の認知モデル、マルチメディア装置と補助的技術の研究
データから知識を構築するための技術 多言語処理、ドメイン横断的情報分析、生体監視技術の研究 超大規模なデータ、計測、科学研究成果を管理するためのソフトウェアとインフラストラクチャの開発 超大規模のマルチソース・データセットを抽出および可視化する新しい手法とツールの研究 医療環境のための大規模データ・リソースを収集および管理するツール オンライン・コレクション業務の支援、電子図書館の研究、ユニバーサル・アクセス技術
高信頼性ソフトウェア/システム 国家安全保障局 (NSA) の研究と連携してセキュリティの高いネットワーク管理に注力 新規活動なし ミッションクリティカルな処理の安全性を維持するソフトウェア設計、ソフトウェアの仕様作成と妥当性検証の正式な手法 生命に関わる医療機器を対象とした信頼性保証の手法とツールの研究 この領域における知識と設計方法論を向上させる基礎研究、インターネット・ベースの技術に対する優先的取り組み
ソフトウェアの設計と生産性の向上 組込型ソフトウェア・システムを統合するためのモデル、センサー・ネットワークから構成される複雑なシステム すべてのASCIハイエンド・プラットフォームのための共通ソフトウェアの作成、エンドツーエンドのASCIアプリケーションをサポートする堅牢なソフトウェアの設計 組込型の遠隔制御機器 (ロボットを含む) のための自動化ソフトウェア 生物医学コンピューティング・アプリケーションを支援するソフトウェア研究 実践的なソフトウェア工学研究、リスク主導から価値主導の開発モデルへのパラダイム・シフト

出典:NCO発行、2003会計年度大統領予算教書補足資料
(FY2003, Supplement to President's 2003 Budget)

コンセンサスに基づいた研究計画と実施計画は、省庁横断的な予算案を組むための基盤となった。表5.5に、2003会計年度の全体的なNITRD予算案の要約を示す。次に、本稿執筆時点におけるこの新しい予算から読み取れる2つの特徴を順に示す。第一に、IT研究に新しい資金を大規模に投入し続けており、その増加ペースは各機関の定常的な研究開発支出を上回っていることである。この増額は、防衛、国土安全保障、保健医療サービスといった他の優先支出領域への請求額の増大にもかかわらず要求されている。第二に、NSFが、NITRDイニシアチブの主導機関として、政策決定の役割だけでなく、資源全体の中でNSFが大きな配分を確保するという点でも、その地位を本格的に高めてきたことである。次に、NSFがこのプログラムの中で担う役割をどのように果たしているかを検討する。

表5.5 2003会計年度のNITRD予算案:各機関と個別研究分野 (PCA) への配分
機関名/PCA
HEC
LSN
HCSS
HCI&IM
SDP
SEW
合計
NSF 283.5 102.4 50.1 132.2 45.8 64.8 679
NIH 97.1 117.5 3.7 90.8 5.8 11.8 327
DARPA 98.7 29.2 0 35.5 60.0 0 223
NASA 94.4 4.5 43.3 23.8 40.0 7.0 213
DOE/Science 137.8 28.1 0 16.4 0 3.5 186
DOE/NNSA 80.9 14.7 0 0 34.2 4.3 134
その他* 54.1 20.6 31.1 10.5 10.9 0 127
合計 846.5 317.0 128.2 309.2 196.7 91.4 1,889

* NSA、NIST、NOAA、ODDR&E、AHRQ、EPAを含む。各機関の研究テーマについては付録2を参照。
出典:NCO発行、連邦議会提出の2003会計年度大統領予算教書補足資料
(FY2003, Supplement to the President's Budget)

5.2.4 各機関はそれぞれの資源をどのように管理しているか

NITRD参加機関の間を調整する連携作業は継続的なプロセスであるが、それが頂点に達するのは、共同予算案が承認され、実施に移される時点である。この時点で、各機関は、全体的な機関のミッションと組織構造に即した方法で、割り当てられた資源を使用してそれぞれの活動を開始する。実施の段階では、行動や資金の面で特に共同歩調を取る必要がある場合 (例:MAGIC) は別として、さらなる「調整/連携」のための公式に規定された手続きは存在しない。ある意味では、これによって、各機関に無用な制約が課されずに済み、プログラム全体の管理に関してある程度の自由が得られることになる。この自由は、すべての参加機関にわたって一律に行使されているものではないが、ほとんどの機関は、新しい資金を共通目標の達成のためだけではなく、それぞれの通常の研究ポートフォリオの改善にも利用してきた。その最適な例がNSFである。

NSFのITRプログラム

NSFによるNITRDの実施の主要部分は、NSF固有の情報技術研究 (ITR: Information Technology Research) プログラムである。このプログラムは、NITRDの歳出予算としてNSFに配分されたIT資金の増額分に基づいて実施されている。2000年以来の3年間で、累積増加額は巨額に達しており、ほぼ3億ドル、40%の増加に相当する。NSFは、このプログラムを実施するために別個の管理構造を設け、ほとんどすべての学問分野に参加資格を与える形にしている。また、内部の資金も活用して、資源プールの増強を図っている。ITRは、NSFの 標準的な審査と選定のプロセスを遵守しながらも、助成の範囲と手順を大幅に拡大してきた。たとえば、新しい資金によって、ITRは、3つの主要カテゴリーのプロジェクトを支援することが可能になった。

小規模個人プロジェクト: 50万ドル未満 (総額)
中規模グループ・プロジェクト:50万〜500万ドル (総額)
大規模センター・プロジェクト:500万〜1,500万ドル (総額)

NSFの通常のプログラムと比べて、この助成レベルは、どのカテゴリーでも約2〜3倍の規模となっている。また、基礎IT研究に加えて、現在、ITRプログラムの範囲は、科学、工学、教育のすべての分野における新しい革命的なアプリケーションも含むように大幅に拡大されている。表5.6に、2002会計年度に資金提供を受けたプロジェクトの概要を示す。

表5.6 NSFのITR実施状況と2002会計年度に助成を受けたプロジェクトの概要
助成
カテゴリー
受理した
提案の件数
実施された助成の件数 助成総額
(単位:100万ドル)
平均助成額 (単位:100万ドル) 助成獲得率 (%)
小規模 1,095 223 78.2 0.35 20%
中規模 465 94 163.8 1.72 20%
大規模 30 30 76 10.8 23%
全カテゴリー 1,590 324 318 NA 20%

こうした統計は、ITRプログラムのごく一部分を表しているにすぎないが、NSFのITポートフォリオに与える影響と、国家の将来的な人的資源に及ぼす潜在的影響の点で、すでに多くのことが読み取れる。この種の影響を生み出すことは、省庁間プログラムの目標の1つである。なぜなら、NSFで生じたことは、NITRDプログラムに参加している他の機関でも同じように起こっているからである。そうした機関は、物事を別のやり方で進めてきたかもしれないが、影響の程度や範囲に大差がないことは確かである。しかしながら、省庁間の連携が各機関のプログラムとその運営に及ぼす影響を評価する正式な手法を考案した者は誰もいない。次の項では、今後数年のうちにこの状況を変化させる可能性がある新しい連邦議会の要請について検討する。

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