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米国の連邦政府R&D計画における省庁間の役割分担と連携の仕組み

第4章 イノベーション・パイプラインの維持と拡大

要約

 本章では、イノベーション・パイプラインの確立、維持、拡張という面で省庁間の連携が果たしてきた初期の役割と、現在も継続している役割について検討する。ここでは、技術革新 (イノベーション) の歴史全体が、複数の政府機関による「戦略的な支援」という特徴を示していること、すなわち、複数の機関が交替にそれぞれある時期に限って支援する形で、あるいは一定の期間にわたる相補的な共同支援という形で、この技術革新に関わってきたことを示す。具体的には、データベース、コンピュータ・グラフィックス、ネットワーク・システム、そして人工知能 (AI) という中核的IT分野で実施された省庁合同活動の役割を検証する。この中核的な研究活動を育成するコラボレーションが、大規模なイニシアチブにおける省庁間連携の基礎を築いていることは言うまでもない。

4.1 イノベーション・パイプライン

前の2つの章では、さまざまな省庁や機関がミッションや科学技術の任務を果たすための (個別的な、あるいは連携した) 活動の枠組みとなっている、政府の研究開発全般の仕組みと研究開発投資ポートフォリオについて検討した。これまで、省庁間の連携が、国家の優先順位や目標を定める際に、プロセス、モデル、組織上/管理上のインセンティブなどさまざまな側面で、不可欠とは言わずとも、相補的な役割を果たしてきたことは間違いない。連邦政府の研究開発プログラムは、効果的な連携と管理が実行される限り、これ以外にもさまざまな効果を引き起こすことができる。その最たるものが、イノベーション・パイプラインの構築である。イノベーション・パイプラインは、基礎研究の成果を、一定期間が経過した後に市場化という形で結実させ、社会に利益をもたらすという仕組みである。こうした影響が生じる背景には、さまざまな要因がある。たとえば、産学の連携、公共部門と民間部門のコラボレーション、人材開発のための対策などは特に重要な要素となる。ただし、研究助成機関同士が積極的な連携を行わない限り、こうした努力も実を結ばない。この点については、IT関連の具体的な事例を取り上げて詳しく議論する。本章では、若干の汎用テクノロジーを取り上げ、省庁間プログラムがこうしたテクノロジーの開発に与えてきた影響を振り返ってみる。また、第5章では、具体的な大規模イニシアチブにおいて政府機関が果たしている役割について検討する。

情報技術 (IT) における技術革新は、新しい着想が製品化に至るまでの過程で生じる。しかし残念ながら、この道筋は直線的であることも予測可能であることも稀である。事実、ITの主な技術革新の多くは、長期にわたる複雑な道筋をたどっており、関係機関、制度、財政支援のあり方なども多様であった。米国学術研究会議 (NRC: National Research Council) のコンピュータ科学電気通信委員会 (CSTB: Computer Science and Telecommunications Board) は、高性能コンピューティング/通信イニシアチブ (HPCCI: High Performance Computing and Communications Initiative) に関する1995年の報告書 [6] の中で、約30年の歳月 (1965〜1994年) にわたって発展してきた主要ITテクノロジーに関する数々の事例を引いて、こうした現象の説明を試みている。この報告書の指摘によると、図4.1に示すとおり、イノベーション・パイプラインは、IT関連の主な技術がその着想段階から数十億ドル規模のビジネスや市場にまで発展していくまでの一連の流れによって特徴付けられる。この報告書が取り上げているビジネス/市場の分野として、タイムシェアリング、グラフィックスとウィンドウ、RAID (Redundant Arrays of Inexpensive Disks)、超大規模集積回路 (VLSI: Very Large Integrated Circuit) 設計、および縮小命令セット・コンピューティング (RISC: Reduced Instruction Set Computing) プロセッサがあるが、どれも依然として今日の経済に欠くことのできない技術ばかりである。どのケースも、政府による一定の研究助成が、複数の機関を通じて、一回限り、あるいは継続的に提供された点が共通している。技術的な課題を中心とした基礎的な作業や調査が要求されるこうした研究活動は、やがては産業界が実施する研究開発に結び付く。いずれの場合も、大学チームが初期の段階はもとより、研究段階から産業界における高度な応用に移行するまでの過程に深く関わっていた。


図4.1 イノベーション・パイプライン:着想から数十億ドル規模のビジネスまで
出典:米国学術研究会議 (NRC)、"Funding a Revolution: Government Support for Computing Research"、National Academy Press、1999年

図4.1は、一連の主要テクノロジーに関連するイノベーション・パイプライン、テクノロジー間の相互関係、そして大学から産業界を経て製品化に至るまでの一連の流れの様子を示したものである。また、研究の担当機関、および製品の代表例も示してある。各テクノロジーの領域の配列順序は、10億ドル規模の産業まで成長した時期にほぼ従っている。この図解は非常に優れたものであるが、当然ながら、これで図が完成しているわけではない。

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