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米国の連邦政府R&D計画における省庁間の役割分担と連携の仕組み

3.3 省庁間連携を実現する各種のプロセスとモデル

前の項で説明したように、多様な組織が互いに補完し合う全体を構成しているメリットの1つは、そうした組織が全体として、間接的にではあるが、連邦政府全体に共通する研究開発の優先順位を設定するプロセスとモデルを改善する役割を果たすことである。優先順位の設定は、他の政府機関との境界を越えなければならない場合はもちろんのこと、単一の機関の内部であってさえも、本質的に困難なプロセスである。行政府の組織 (FCCSET、NSTC、OSTP、OMB) と立法府の組織 (議会委員会) の交差領域には、NCOと並んで、省庁間連携の実現を促す多数のプロセスとモデルが存在する。どのプロセスやモデルがより効果的に機能するかはプログラムと機関の特性によって異なるが、それぞれに固有の長所と限界が存在する。

3.3.1 公式か、非公式か

省庁や政府機関の連携は、公式にも非公式にも実施できるプロセスであり、場合によっては両方の形態を兼ね備えることもある。2つ以上の政府機関が研究開発プログラム・イニシアチブに関与するとき、そうした機関は、まず覚書 (MOU: memorandum of understanding) や他の正式文書を作成して取り交わすことで、協同作業に取り掛かることができる。この文書は、通常、各参加機関が共同研究開発プログラムのために確約した事項をそれぞれが遵守することを義務付けるものである。このような文書には、共有資源、管理責任、そして監督活動に関する詳細が記載されるのが普通である。たとえば、電子図書館研究イニシアチブは、複数の政府機関 (フェーズ1では3つの機関、フェーズ2では6つの機関) によって合意された正式なプログラムであるが、各機関がそれぞれの確約事項を遵守するように義務付けるMOUが取り交わされている。この正式なプロセスは、完結させるのに時間や大きな労力を必要とすることが多いが、研究開発プログラムが比較的大規模であったり、前例のない構想に基づく (つまりリスクが大きい) ものである場合には適した方法である。一方、比較的小規模で安定した基盤ができている多くの研究開発プロジェクトは、非公式な形で複数機関の間を調整することができる。そのような場合、活動資金やその他の資源 (人員、設備など) が、単にある機関から別の機関に移動されてゆき、最終的に研究実施機関まで行き着く、といったケースが非常に多い。たとえば、多くのNSFプログラムには、共同助成プロジェクトの伝統があり、追加的な資源が同様の関心を持つ他の機関 (例:NIH、DOEなど) から提供されている。助成を調整する非公式プロセスは、プログラム管理の時間と労力の点で、有利に働くこともある。一方、非公式のプロセスは、安定性という点で劣る傾向があり、共同事業の実施期間の途中で資源が不足してきたり、テーマの優先順位が変わったりすると、誤解や不信を招きやすい。したがって、非公式プロセスによる省庁間活動の大半は、期間が短い単発的なタイプのプログラムである。

3.3.2 多者間の連携か、二者間の連携か

大規模な学際的研究開発プログラムでは、明らかに、多数の機関が参加して資源、管理/運営の専門知識、そしてリスクを共有する必要が生じる。前述のように、米国政府の研究開発ポートフォリオの1つの特徴は、しばしば、1つの科学技術 (S&T) 分野の支援を任務としている機関/省庁が複数存在しており、それぞれが機関固有のミッションを完遂するために当該分野の支援を実施していることである。そのため、大きなテーマを扱う主要なプログラム・イニシアチブは、多数の政府機関や省庁にまたがって実行することが望ましく、ときにはそれが必要にもなる。過去10年間に開始された省庁横断型のプログラムの大半 (HPCC、次世代インターネット、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなど) は、こうした特性を備えている。ただし、単に2つの機関の間だけで実行されるプログラム連携活動も存在する。参加機関が関心を共有しており、しかも双方の資源や専門知識が相互に補完的であるような領域に注力する研究開発プロジェクトでは、二者間の連携が最適である。たとえば、NSFとNIHは、システム生物学と計算神経科学の分野で類似の関心を共有している。両機関は、同じ大学や研究所を利用して研究と教育/研修活動を実施している。両者のプロジェクト選定プロセスや優先課題設定方式も、互いに相容れるものである (下の表3.1を参照)。これは、2つの政府機関が二者間の研究開発イニシアチブを定常的に実施することが可能であることを示しており、実際に、上記の領域で最近発表されたNSF/NIHの共同プログラムでも実証されている。このテーマについては、第5章の5.3.3項で再び説明する。

明らかに、多者間の連携の方が、労力、経費、時間の観点から、よりコストの高い試みである。二者間連携はその対極にあるが、これが効果的に機能するのは、2つの機関がミッションと管理スタイルの点で相性がよい場合だけに限られる。

3.3.3 ボトムアップか、トップダウンか

初期の省庁間連携 (たとえば、FCCSETの創設前や活動中) は、通常、ボトムアップ方式で実施された。特に、新興プログラムではそうであり、当時の高性能コンピューティング/通信 (HPCC) がその一例である。つまり、研究開発を任務とする機関のプログラム・マネージャが、他の機関で同じ役職にある人物とともに、その分野を発展させる新しい構想や仕組みの足固めを図ろうとしたことが発端である。こうした先駆者たちが、1つの機関が単独で実行できる以上に幅広く野心的な研究計画を共同で作成する手段として、非公式のグループや推進団体を結成する。そして、いったん共同計画が作成され、そのプログラムが滑り出した時点で、推進者は、その研究計画を連邦政府予算イニシアチブという形で検討に付することができるように、相応の機関レベルに引き渡すのである。通常、各政府機関は、イニシアチブ全体の中で独自にプログラム推進と予算獲得の役割を担っており、常に次のような想定で行動している。すなわち、もし、こうした機関が適切な連携によって団結すれば、その主張は存在感と説得力を増し、大統領の国家予算の編成を支援するOSTPとOMBの意思決定プロセスの最高レベルまでこのイニシアチブを押し上げる原動力となるだろう、という想定である。

連邦政府の新しい研究開発の仕組みが古い仕組みに取って代わるにつれて、新しい方式が政治力と権限の両面で力を増し、徐々に発展する国家目標の達成に向けた効率性と実効性の向上に資する省庁間連携を育成する力を高めてきた。その結果、一般的な方向性と優先順位を設定するNSTC、OSTP、OMBのような部局から予算編成プロセスを開始する傾向が強まっている。実際、近年の省庁間イニシアチブの一部、たとえば、情報技術プログラムやナノテクノロジー・プログラムは、トップダウン・プロセスの特性を備えている。このプロセスは、現在進行中の2004会計年度予算編成活動の大半によって最も適切に説明できる。省庁/政府機関に向けた2002年5月30日付けのホワイトハウス覚書の中で、OSTP長官のJohn Marburger氏とOMB長官のMitchell Daniels氏は、将来の研究開発予算編成に関する一連のガイドラインを共同で発表した。「2004会計年度の省庁共同研究開発の優先課題」("FY 2004 Interagency Research and Development Priorities") と題するこの14ページの覚書は、今後、米国政府が研究開発の優先課題をどのように決定するかを明らかにしており、省庁間の連携を伴うプログラムを優遇するという方針を明確に打ち出している。また、省庁共同研究開発イニシアチブの対象となる科学技術研究の6つの最優先領域も列挙している。これは以下のとおりである。

・ 国土安全保障/対テロリズム研究開発
・ ネットワーキング/情報技術研究開発
・ 国家ナノテクノロジー・イニシアチブ
・ 分子レベルにおける生命プロセスの解明
・ 気候変動科学技術
・ 教育研究

このリストには、「単一の機関の権限内に含まれる優先課題」は入っていない。このOSTP/OMB共同の覚書は、連邦政府の研究開発予算編成に関する近年のトップダウン・プロセスを明確に定義しており、個々の機関の優先課題よりも、省庁間連携を通じた国家全体の優先課題への取り組みに重点を置いている (本覚書の全文は、www.ostp.gov/html/ombguidmemo.pdfで公開されている)。今後、この覚書は、さまざまな機関がどのようにそれぞれのプログラムを開発するか、そしてどのように優先順位設定の手法や省庁間活動への取り組み姿勢を見直すかという問題に、大きな影響を及ぼすであろう。

3.3.4 集中型か、分散型か

ここで検討する省庁間連携のほとんどには、連邦政府の研究開発機関が参加している。その場合、資源 (予算、人員、施設、管理機能など) の総体は、最終的に、ある特定の単一の権限 (例:国家の政府やその任命された行政機関) の支配下に置かれることになる。往時のHPCCと、国家調整局 (NCO) の管理下で実施されたHPCCの後継プログラムである情報技術研究プログラムはそうした例である。他方、実際の調整と連携の実際の活動は、さまざまな機関の代表者が長を務める多数の連携支援組織に分散化されることが多い。一般に、そのような省庁間作業部会 (ワーキング・グループ) は、活動の重点を特定の研究テーマ (例:ソフトウェア、ネットワーキング、ハイエンド・コンピューティングなど) に置くように構想されている。したがって、多くの場合、最も優れた省庁間プログラムは、2つの補完的な構成要素、すなわち、権限が集中化された中央の機関と、地理的あるいは対象分野別に分散化された拠点への実務の配分という2つの要素の組み合わせの形態を取る傾向が強い。こうした2つの構成要素の最適な組み合わせは、省庁横断的なプログラムを成功させる処方箋であると見なされる。

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