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米国の連邦政府R&D計画における省庁間の役割分担と連携の仕組み

3.2 省庁間協力に関連する組織の全容

このような経緯で創設されたNSTCは、コラボレーションの時代の幕開けを告げるものでもあり、研究開発機関同士の相互関係、そしてOSTPやOMBをはじめとする多数の組織との関係を今日に至るまで劇的に変革し続けている。本項では、新しいNSTCの概要と、省庁間連携に直接間接に大きな影響を及ぼしてきたその他の組織の概要を示す。「省庁間」で「機関横断的」な役割を果たす組織の全貌を概観することで、そうした組織がどのような方法で協力し合っているのか、またどのような場面で省庁間の連携が期待を下回る恐れがあるのか、という問題の一端を垣間見ることができる。

3.2.1 国家科学技術会議 (NSTC)

前述のように、NSTCは、FCCSETの組織構造、機能、運営方式を改革することから誕生した。NSTCの設立趣旨は、第一に、科学技術 (S&T) 政策の決定プロセスを調整すること、第二に、連邦政府全体にわたる大統領の科学技術政策の課題を統合すること、そして第三に、政策やプログラムの作成と実施に際して、科学技術の課題が、大統領の公約目標と一貫した形で適切に考慮されるように取り計らうことであった。1993年の創設以来、NSTCは、実質はさておき、少なくとも名目および権限系統としては政策と予算の調整機関となり、高いレベルの省庁間連携が必要となる科学技術活動については、行政府のすべての官庁と機関がNSTCを通じて相互に調整を図る、という建前になった。以下に、NSTCの主要な機能の一部を示す。

・ NSTCの構成メンバーは、参加機関の長から構成される。すなわち、連邦政府の研究開発関連省庁/機関 (例:DOD、DOE、NASA、HHS-NIH、NSFなど) すべてに加えて、経済政策や国内政策を担当する機関 (例:商務省、内務省など) の中でこの機構に参加している一部の機関の長がメンバーとなる。

・ 大統領を議長とする。そのため、NSTCの地位は閣僚レベルまで上昇している。したがって、理論上は、科学技術政策と予算上の意思決定に関して、大統領への諮問機能と大統領の権限を有していることになる。

・ NSTCは、委員会、専門調査特別委員会 (タスクフォース)、または省庁間作業部会 (省庁間ワーキング・グループ) の設立を通じて機能し、法律で認められる範囲内で、メンバー機関は、NSTCが行政の資源を利用できるように取り計らう義務を負う。

・ すべてのメンバー機関は、NSTCを通じて科学技術政策を調整し、研究開発予算の要求に関する情報をNSTCと共有する義務を負う。

・ NSTCは、各政府機関の研究開発予算案に関して行政管理予算局 (OMB) に提言を行い、国家目標を反映した総合的な予算請求案を作成する。

以上から理解できるように、NSTCが実行する最も重要な機能の1つは、整合の取れた研究開発戦略と予算案を作成し、大統領が発表した国家目標の達成に向けて科学技術の道筋を定めることである。これを実行するために、現在のNSTCは、過去10年間にわたる発展の中で、次の5つの目標指向型の委員会を設けている。

1. 環境/自然資源委員会 (CENR: Committee on Environment and Natural Resources) − CENRは、地球環境変動研究、大気環境研究、生態系、有毒物質/リスクアセスメント、そして自然災害低減を対象とした小委員会と省庁間作業部会を設けている。CENRは、他の機関の多くにとって、省庁間連携だけでなく、国際協力による研究開発活動に関しても、初期の模範となるモデルの役割を果たしている。

2. 科学委員会 (CS: Committee on Science) − CSは、最も多くの小委員会と作業部会 (ワーキング・グループ) を設けており、それぞれが、特定の研究開発優先領域 (食品の安全性、バイオテクノロジー、人間栄養研究、生物放射能調査、植物遺伝子工学など) に焦点を合わせて活動しているほか、ヒト組織工学を扱う省庁間作業部会 (MATES: Multi-Agency Tissue Engineering) もある。このMATESは、現在、最も活発に活動している省庁横断的取り組みの1つであり、この新興研究領域における国家プログラムを始動させることを目指している。

3. 技術委員会 (CT: Committee on Technology) − この委員会は、省庁間研究開発プログラムの発足と、省庁間プログラムを効果的に管理するための運営の仕組みの開発という2つのテーマに積極的に取り組んでいる。活発に活動が展開されている新興の重点研究領域としては、材料研究、次世代車両研究、ナノテクノロジーが挙げられるほか、コンピューティング/情報/通信研究開発小委員会 (Subcommittee on Computing, Information and Communications R&D) は、情報技術分野の省庁間研究開発プログラムの発展に強力かつ効果的な役割を果たす国家調整局 (NCO: National Coordination Office) を設置した。このNCOは、1つの成功したモデルとして、他の省庁間活動の手本となっている (このテーマについては後の項で詳しく論じる)。

4. 国際科学工学技術委員会 (CISET: Committee on International Science, Engineering, and Technology) − 経済協力開発機構 (OECD)、アジア太平洋経済協力会議 (APEC)、そして政治的/経済的な重要性が高まっている地域 (例:中国、日本、ロシア) に焦点を合わせた小委員会と作業部会 (ワーキング・グループ) が最近になって編成された。しかし、コラボレーティブな研究開発イニシアチブの実現を強力に推進する真の省庁間連携活動が欠けている。

5. 国家安全保障委員会 (CNS: Committee on National Security) − 国内および国際的な安全保障 (セキュリティ) の分野における近年の優先研究開発テーマである、重要インフラストラクチャ (社会基盤) 保護研究開発、国際技術移転問題/政策、そして核不拡散/軍縮技術に対応した、3つの省庁間作業部会が設けられている。米国が資源の重点投入先を国土防衛と国家安全保障へと移すにつれて、CNSは、NSTC内の研究開発優先課題設定プロセスの中で次第に大きな役割を演じるようになることが予想される。また、CNSは、他の委員会が代表している政府機関のミッションと重なり合う部分が多く、任務の重複が生じる可能性がある委員会でもある。現在および将来、この委員会で実施される作業は、1つの実験であり、省庁間の連携に関心を持つ者はその行方を見守るべきであろう。

3.2.2 大統領科学技術諮問委員会 (PCAST)

PCAST (President's Council of Advisors on Science and Technology) は、アイゼンハワー大統領とトルーマン大統領の時代にまで遡る、科学技術に関する大統領諮問機関の伝統を踏襲したものである。創設以来、PCASTは、徐々に拡大され、現在は大統領によって任命された23人のメンバーから成る。PCASTの主な任務は、民間部門の意見を米国の科学技術政策に反映させる方向で大統領とNSTCを支援することである。そのため、PCASTのメンバーは、産業界、教育界、研究施設、およびその他の非政府組織から選ばれた要人から成り立っている。PCASTから公表される調査と報告書の大半の内容は、一般的な政策提案であるが、その一部には、米国が直面している科学技術の問題に基づいた具体的な提言も含まれている。また、PCASTは、1990年代の省庁間情報技術研究開発 (IT R&D) プログラム・イニシアチブでも一定の役割を果たしてきた。

3.2.3 科学技術政策局 (OSTP)

連邦議会は、1976年にOSTP (Office of Science and Technology Policy) を設立し、科学技術政策の作成とその政策が米国の内外の情勢に及ぼす影響の評価に関して、大統領と大統領府のスタッフに対する提言を行う広範な任務をOSTPに委ねた。また、OSTPには、科学技術政策と予算を作成するための省庁横断的な作業を先導し、民間部門、地方政府、科学技術教育界、さらには同じ目標を目指す他国政府との連携を進める幅広い権限が与えられている。クリントン政権の時代以降、OSTPは、行政管理予算局 (OMB) とともに、その権限を利用して、国家の優先課題を解決するための連邦政府の研究開発プログラムの形成を主導して方向付ける役割を果たしてきた。OSTPの長官 (現在はJohn H. Marburger氏) は、科学技術情勢に関して大統領に提言する主席顧問を務め、PCASTの議長を兼任し、NSTCの議長役としての大統領の役割を補佐する。

3.2.4 管理予算局 (OMB)

OMB (Office of Management and Budget) は、大統領の予算編成プロセスを調整する。このプロセスは、毎年、各政府機関が翌年10月に始まる次の会計年度に向けた準備に着手する夏に開始される。OMB自体には、研究開発機関の科学技術予算を編成する専門性も権限もないが、OMBは、OSTPと連携して、研究開発の責任を担う政府機関のために研究開発費の要求に関するガイドラインを発行する。近年、OMBは、各省庁の予算案の冗漫をチェックする作業に加えて、省庁間の連携の機会を探る作業にも、従来より積極的に関与するようになっている。しかし、特定の省庁間イニシアチブを除くと、OMBは、連邦政府の研究開発ポートフォリオ全体にわたる予算配分や優先課題設定を関係省庁に強く促す真の執行手段を欠いている。

3.2.5 連邦議会、および省庁予算を監督する多数の立法府委員会

上記の4つの組織、すなわち、NSTC、PCAST、OSTP、OMBは、互いに連携しながら連邦政府の予算編成プロセスの主体となり、省庁間研究開発プログラムを開発および実施するために欠かせない重要なメカニズムを形作っている。この4つの機関は、いずれも連邦政府の行政部門である。一方、立法府である連邦議会も、研究開発政策と省庁間連携で、行政府に匹敵するほどの重要な役割を果たしている。米国の科学技術プログラムに関する省庁間連携と優先課題設定には多数の組織が関与しているが、その中で、連邦議会は、行政機関と比べると社会から十分な注目を集めてこなかった。これまで、連邦議会が、省庁間の様々な日常的な調整業務 (すなわち、議会の監督下で予算を執行しているさまざまな行政機関の間で、研究開発政策、計画立案、そして財政支援の意思決定を日常的に調整する業務) を、行政部門に比肩するレベルで実施してこなかったことは確かである。それでも、予算作成、資源配分、そしてときには省庁間プログラム・イニシアチブで議会が果たしている役割を見過ごすことはできない。現在、少なくとも21の立法府委員会が、連邦政府の研究開発政策や財政支援に関する直接的な任務を担っている。このような委員会、特に、科学技術関連の政府機関の歳出予算に関する責任を負っている委員会は、省庁間連携をもたらす力として、非常に大きな実効性を発揮することができるのである。たとえば、クリントン大統領の就任直前とその在任中、1990年代初期の高性能コンピューティング/通信 (HPCC) イニシアチブを承認する法案を提出して成立にまで持ち込んだのは、ゴア上院議員であった。その後さらに大規模なプログラムへと発展したこの初期のHPCCプログラムは、連邦政府全体にわたる省庁間連携の典型的な成功事例であり、戦略的プランニング、予算作成、2つの行政部門間の対話、プログラムの審査と監視、そして民間部門と一般社会の参画といった多くの面で、省庁間連携がどのように成功を収めたかを具体的に示している。この成功事例の多くの側面が、現在進行中の他のプログラム・イニシアチブに対して、貴重な教訓を提供してくれる。

連邦議会が省庁間連携の推進に利用してきたもう1つの重要な手段として、監督機能がある。監督のための議会公聴会は、特定の研究プログラムの予算やその他の資源を決定する上で重要な役割を果たす。新興の研究分野や新しいプログラム・イニシアチブなどで、参加機関の間の正式な合意が存在しない場合には、予算、歳出、監督のプロセスが、複数の省庁を結び付ける事実上の調整メカニズムとなっている。また近年は、議会がさらに踏み込んだ動きを見せている。1993年に制定された政府業績成果法 (GPRA: Government Performance Results Act) によって、現在では、すべての連邦政府機関が、それぞれの業務と成果に対する説明責任を継続的な形でより厳格に果たすことを義務付けられている。この法的措置によって、説明責任に対する新しい考え方が導入された結果、議会は、研究開発投資に対して便益/成果指向の評価手法を行政に対して適用できるようになった。たとえば、さまざまな政府機関が、ミッションと国家目標のより効果的な達成に向けてどこまで適切にプログラムを調整しているか、といった評価もこれに含まれる。省庁間連携のこの側面については、第5章でさらに詳細に論じる。

3.2.6 国家調整局 (NCO)

NSTC、OSTP、OMBのような行政機構は、複数の政府機関の間のコラボレーションの方向性を高いレベルで提供するが、実際の調整と連携の作業は、個々の省庁のための日常的な活動を可能にする効果的な組織が存在してはじめて実現可能になる。国家調整局 (NCO: National Coordination Office) の構想は、こうした必要を満たすために生み出された。最初の成功事例 (そして、おそらく現在までに最も成功した事例) は、1990年代初期に、当時の高性能コンピューティング/通信 (HPCC) イニシアチブを対象として創設されたNCOである。このNCOは、非常に効果的な調整活動へと急速に発展し、参加機関はNCOを通じて共通の課題に協力して取り組むことが可能となった。それに続く数年間、このNCOは、HPCCプログラムが現在の情報技術イニシアチブの姿へと発展するのに大きく貢献し、その結果として、認知度の大幅な向上と活動範囲の拡大を遂げ、研究開発プログラムのために新たな資源を獲得するに至っている。現形態のNCOは、局長がOSTPの長官に直属する形になっている。現在、このNCOは、情報技術プログラム・イニシアチブに参加する政府機関のために計画立案、予算、および評価の活動を調整するとともに、特定の技術分野に焦点を合わせたさまざまな省庁間作業部会 (ワーキング・グループ) を支援している。また、民間部門 (産業界、非営利組織、そして一般国民) との橋渡し役も務めている。他の省庁間プログラム (例:ナノテクノロジー・イニシアチブ) は、この調整モデルを1つの活動モデルと考え、模倣したり管理構造の中に取り入れようと試みている。

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