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米国の連邦政府R&D計画における省庁間の役割分担と連携の仕組み

第2章 連邦政府の研究開発機関:ミッションと共通特性

要約

本章では、米国の研究開発 (R&D) 投資と、特に省庁横断的な研究開発プログラムに関する複雑な状況を分析するための背景を設定する。まず初めに、連邦政府が複数の省庁や政府機関を通じて科学技術研究に資金を提供していることのメリットについて検討する。次に、そうした政府機関の間に共通している特性を指摘することにより、機関相互の連携が必要であり、しかも互いに利益をもたらし合うことを示す。しかしながら、実際に連携を効果的かつ生産的に実行することは、また別の問題である。組織運営のスタイル、各機関の文化、ミッション (使命/任務) などの相違が、連携を阻む障害といった様相を呈することが多いからである。このような障害を乗り越えることは重要な課題であるが、そうした段階を踏むことではじめて、省庁間の連携が前進するチャンスが生じてくるのである。

ここではまず、電子図書館と電子政府の一般的な領域で実施されている研究活動に関する背景、周囲の環境、起源について簡単に振り返る。具体的には、これらのイニシアチブが国内の関連機関が協力する形で計画され、実施されるに至った背景について、知的資源、戦略、プログラムといった観点から検証する。これらのイニシアチブのもとで進められている研究プログラムは、多くの政府機関や民間企業にとって年間予算の相当部分を占めるようになった半面、こうした成果を上げるまでの道のりは、仮に結果論的にいかに刺激的な効果があっても、決して平坦なものとは言えない。こうした経験を背景として、今後の同様な取組みに向けた洞察と明確なガイドラインが得られるものと考える。

2.1 連邦政府の研究開発投資のメリット

米国の場合、研究開発に対する連邦政府の財政支援は、常に、国家の知識ベースと技術能力の拡充に大きく貢献してきた。特に、情報技術やバイオテクノロジーといった分野では、政府の研究開発プログラムが関連産業界の発展に及ぼした多大な影響は、米国内だけにとどまらず全世界にも広がっている。こうした投資を着実に継続させるためには、政策立案を担う機関が、投資の影響と効果を目に見える形で具体的に明示しなければならない。しかし、残念ながら、連邦政府の研究開発支援のメリットを測定すること、特に定量化することは、不可能とは言えないまでも非常に困難である。第一に、研究開発の成果 (特に、研究の成果) は、外に現れてこない無形の成果であることが多い。ほとんどの場合は、単に科学技術の知識ベースを増強するだけであり、一般社会の目に触れない部分が大きいのである。第二に、研究開発が実施された時期から、その成果を (たとえば、新しいテクノロジーや商品の形で) 具体化できる時期までの間には、大きなタイムラグがあるのが普通である。このタイムラグは、数年から数10年にも及ぶことがある。したがって、問題となっている研究開発プログラムの実効性の有無をまだ進行中の段階で判定することはきわめて困難なのである。第三に、特定の研究開発プログラムの利点や難点は、他の研究開発プログラムの進行状況と密接に関係していることがある。たとえば、バイオテクノロジーの進歩は、コンピュータや情報技術の発展に依存している面があり、その逆もまた同様である。このような形で異種プログラム間に相互依存性があることは、政府が各研究領域の貢献度を判定して優先順位を設定することを困難にしている。最後の点として、米国では、多数の省庁や政府機関が、それぞれの任務を果たすための要件の一部として幅広い科学技術領域に資金を提供する責任を負っている、という事情がある。この多様性は、1つの長所であると同時に、所期の研究目標を確実に達成する上で大きな障害ともなっており、研究開発のメリットをどのように理解して測定するかという方法論を一段と複雑化させている。

それでも、以下に示すようなポイントに注目することで、国の主要な技術革新の担い手である、政府、産業界、そして大学に対する連邦政府の研究開発投資の影響を定性的に理解することは可能である (もちろん、間接的な影響は、一般社会にまで及ぶ)。第一に、政府の研究開発投資は、新興産業のための技術ベースを作り出す。概して言えば、産業界は、急成長する新興分野に対して大規模な研究投資を行うことができないので、政府の財源による研究開発がこのギャップを埋める役割を果たす。こうした関係の例は、コンピュータ技術やバイオテクノロジーの分野などで豊富に見られる。第二に、連邦政府の研究開発プログラムは、大学の研究能力を維持する上で決定的に重要な役割を果たしている。大学は、米国の研究開発インフラストラクチャの要の1つであり、技術革新プロセスで重要な役割を担っている機関である。政府機関の大半は、研究開発活動の直接的な実施機関として、あるいは、なんらかの形で共同研究を実施する受託研究機関として、大学を使用している。したがって、大学は、省庁/機関横断的な連携プロセスを強化するという面でも、重要な役割を演じていることになる (こうしたプロセスについては、後続の項で詳細に検討する)。第三に、連邦政府の研究開発プログラムは、米国の人材と科学/工学分野の労働力を生み出すための重要な資源でもある。このような支援は、単に、学生の教育や研修に資金を提供することにとどまるものではない。教育以外をミッションとする機関も含めて、さまざまな連邦政府機関から投じられる研究開発資金は、多種多様な科学/工学分野において研究者のネットワークを生み出す上でも、また新興の学問分野に新しい研究者を送り込むという面でも、重要な役割を演じてきた。皮肉なことに、人材を生み出し、国の将来の労働力を創出するための資金援助が、省庁横断的な連携プロセスを活性化させる原動力にもなっているわけである。最後に、政府の研究開発プログラムは(科学/工学の優先課題や特徴という枠組みで予算が編成されることが多いが)、実は、個々の政府機関が、防衛、エネルギー、宇宙、保健といったそれぞれ固有のミッションを十全に遂行する最良の手段となっているのである。なぜなら、連邦政府の予算編成プロセスは各省庁のミッションを軸として進められるが、そのような予算編成プロセスに服している省庁も、研究開発プログラムを共同で実施することになれば、広範な科学/工学領域を扱うことができるからである。後続の項では、各省庁/政府機関のミッションの交差領域、予算編成プロセス、そして科学/工学分野に対する共通の利害といった要因によって、省庁横断的な連携によって実施されるプログラムが研究開発投資の望ましい魅力的な選択肢となっていることを示す。

2.2 連邦政府の研究開発の歴史と動向

米国の省庁間研究開発プログラムの分析から有益な結論を引き出すためには、まず最初に、米国の研究開発の歴史全体と近年の動向という背景状況を明らかにしておく必要がある。こうした背景に即して考えることで、省庁間プログラムが、どのような場面で、またどのような形で、実際に米国の研究開発ポートフォリオの中で特別な役割を果たしてきたかを検証することが可能になる。

米国は、世界最大の研究開発投資国であり、その投資規模は他国をはるかに引き離している。米国の研究開発ポートフォリオ全体の資金規模は、民間投資と公的投資を合わせて年間2,500億ドルを超えている。2001年のOECD統計によると、他の工業国、特にアジアの工業国の研究開発投資は、近年、成長速度では米国を上回っているが、米国は依然として全世界の研究開発費の40%を占めている。図2.1に、1950年代から2000年までの研究開発資金の推移を財源ごとに示す。


図2.1 米国の研究開発資金、財源別、1953〜2000年
出典:2002年NSF科学工学指標 ("NSF Science and Engineering Indicators 2002")

米国の研究開発ポートフォリオには、この先の議論に備えて留意しておくに値する若干の重要な特性と動向が存在する。第一に、米国の研究開発資金は、一貫した増加を示しながらも、その全体の構成に顕著な変化が見られることである。1970年代には、第二次世界大戦以来の傾向を引き継いで、連邦政府が財源の主役であった。ところが、1980年に、産業界の研究開発投資が政府を上回るという転機が訪れた。それ以来、不景気の時代を除いて、研究開発資金の供給源としての産官の相対的な地位は、現在に至るまでそのまま継続している。

第二に、産業界は政府の財源を金額的には上回っているが、産業界の研究開発は主として開発から成り立っており、応用研究に投じられる資源は少なく、技術革新の土台であると考えられる基礎研究への出資はさらに少ない、という事実がある。この様子を図2.2に示す。これに対して、連邦政府の研究開発ポートフォリオは、基礎研究、応用研究、開発という3つの領域により均等に分れていることが明らかに見て取れる。防衛関連の開発費 (兵器、戦備など) を除外すると、連邦政府と産業界の研究開発投資レベルを同じ条件で比較できるようになり、連邦政府の研究開発投資の内訳が基礎研究に大きく傾斜していることがわかる。


図2.2 米国の連邦政府と産業界の研究開発の特性:2000年の支出額(単位:10億ドル)
出典:連邦政府の研究開発投資 ("Federal Investment in R&D")、Randレポート、2002年9月

このことから、米国の研究開発ポートフォリオ全体、そして特に連邦政府の研究開発投資に関連した、第三の特徴を読み取ることができる。すなわち、他の多くの国では、政府の研究開発費の大半が、単一あるいは若干の科学技術担当省庁によって提供されているのと異なり、米国の研究開発投資システムは、多数の政府機関の管轄の下で、各機関のミッションに沿って運営される傾向が強いのである。多くの場合、研究開発プログラムの資金は、各省庁が担当する (ときには他のさまざまな機関と共有している) 国家目標とミッションに対するそのプログラムの貢献度に応じて省庁に配分される。このシステムは、研究開発プログラムを省庁/機関のミッション (さらには、国家目標) のニーズに役立つように構想して実施することができる限り、効果的に機能する。しかし、ときには、この資金提供システムのミッション指向性が (緩和されないまま) 高じすぎると、政府が、研究開発プログラムの全体的な有効性を評価すること、さまざまな政府機関の間で研究開発プログラムを調整すること、そして多数の主要な科学技術分野に対する財政支援のバランスを維持することが難しくなる恐れがある。実際、こうした懸念は、近年実施されている一部の新しい省庁間研究開発プログラムが誕生した理由になっている。

2.3 複数の政府機関:競争と相互補完

連邦政府機関が、過去30年間にわたって研究開発資源をどのような形で配分してきたかを簡単に振り返ることは、資源の分配と責任の分担がどのように相乗して国家目標を達成しているかを理解するのに役立つであろう。米国では、10を超える連邦政府機関が、さまざまな科学/工学分野 (保健医療、宇宙、一般科学、エネルギー、環境など) における研究開発プログラムを助成する責任を担っている (付録2のIT研究開発参加機関のリストを参照)。図2.3に、過去30年間にわたる連邦政府の研究開発の動向を分野別に示す。この図は、連邦政府の研究開発ポートフォリオの構成が時代とともに変化し得ること、そして必要に応じて国策の優先順位の変化を反映するように管理できることを示している。こうした国の優先課題の変化は、科学技術の個別分野の情勢に合わせて編成される傾向が強い各機関の予算の変化となって現れてくる。


図2.3 連邦政府の研究開発の動向 (分野別)、1976〜2003年(単位:10億ドル)
出典:連邦政府の研究開発投資 ("Federal Investment in R&D")、
Randレポート、2002年9月

たとえば、近年では、保健医療に関連する課題の重要性の高まりによって、保健福祉省 (DHHS) の一部門である国立衛生研究所 (NIH) の研究開発資金が増大し続けている。1997年以来、この増大傾向に一段と弾みが付いているが、その理由は、NIHの予算を5年間で倍増する方針に基づいて、ホワイトハウスと議会の両方が予算の増額を強く求めたためである。もう1つの主要な科学担当機関である全米科学財団 (NSF) も、近年、予算が増加しており、2003年度もその傾向が持続している模様である。それに対して、国防総省 (DOD) の科学技術 (S&T) プログラム、エネルギー省 (DOE)、航空宇宙局 (NASA) といった省庁では、近年、予算の伸びが鈍く、中には若干低下している場合さえもある。図2.4は、1976〜2002年のこうした動向と予算の変化を、主要な研究開発機関について示したものである。


図2.4 連邦政府の研究開発の動向 (機関/省庁別)、1976〜2002年、(単位:10億ドル)
出典:連邦政府の研究開発投資 ("Federal Investment in R&D")、Randレポート、2002年9月

この図からは、次のような傾向が読み取れる。第一に、連邦政府は研究開発の任務を多数の省庁に分散し続けてきたが、過去10年間を見ると、実際には、研究開発資金提供機関の中で上位5位までのDOD、DHHS/NIH、NASA、DOE、NSFが、連邦政府の研究開発予算全体の90%以上を占めてきたことである。図2.5は、この事実を明瞭に示している。これは重要な事実である。なぜなら、こうした機関は、それぞれの研究開発ポートフォリオを適切に管理しているかどうかによって予算獲得の成否が大きく左右される機関でもあるからである。この5つの機関は、相互に研究開発資金を取り合う競合関係にあるが、それでも、連邦政府内の全体的な研究開発の実効性と効率性の向上を図る方向で各機関の研究プログラムと成果を適切に調整できるようになれば、各機関もそれぞれ利益を得ることになる。


図2.5 主要な研究開発機関に対する連邦政府研究開発費の配分 (支出限度額)
出典:2002年NSF科学工学指標 ("NSF Science and Engineering Indicators 2002")

第二に、近年ますます、連邦政府の予算編成プロセスが省庁間協力を奨励しており、こうした協力を通じて、緊急の要請に際して国家目標をより的確に満たせるようなプログラム・イニシアチブの実現を求めるようになったことがある。行政管理予算局 (OMB) は、科学技術政策局 (OSTP) の意見を仰ぎながら、特定の科学技術 (S&T) 分野における研究開発ポートフォリオの変更を実施するときに省庁間の調整と連携を奨励してきた。その結果、たとえば、工業技術、生命科学、コンピュータ科学などの分野では、この数年間に大幅な予算の増額が見られたが、その他の分野では、予算が順調に伸びない、あるいは減少することになった。図2.6に、このような優先順位の変化の一端を示す。


図2.6 一部の分野における研究開発資金配分の変化
出典:2002年NSF科学工学指標 ("NSF Science and Engineering Indicators 2002")

さらに目覚しい例として、OMBとOSTPは、科学技術の領域で何件かの大規模な省庁間イニシアチブの編成に成功しており、たとえば、その代表例であるネットワーキング/情報技術研究開発 (NITRD) プログラムや国家ナノテクノロジー・イニシアチブ (NNI) は、過去数年にわたって大幅な予算増額を獲得している。表2.1に、このようなイニシアチブの結果、関係機関の予算が全体としてどのように変化したかを示す。要するに、この2つのイニシアチブは、省庁間プログラムの模範例の役割を果たすフラグシップ・プログラムであり、単に予算面で意義があるだけでなく、米国全体の科学技術政策にも重大な影響をもたらすものなのである。この問題は、後の章で、こうした機関合同プログラムについて詳細に扱うときに再び検討する。

表2.1 主要な省庁間プログラム・イニシアチブ (予算権、単位:100万ドル)
イニシアチブの
対象領域
イニシアチブ
開始前

2001会計年度 2002会計年度 2003年度会計
ナノテクノロジー
250
466
604
710
情報技術
1500
1768
1884
1900

2.4 共通特性と相補的特性:省庁間連携の基盤

上記のように、予算の増減と省庁間の連携の間には明らかな結び付きが存在するが、それだけにとどまらず、なぜ、複数の機関にわたるプログラム・イニシアチブを開発することが、連邦政府の研究開発プログラムの全体的な目標を達成する上で重要かつ望ましいのかについては、もっと基本的な理由が存在する。連邦政府の研究開発投資の成功は、助成したプログラムとプロジェクトの種類、そしてプログラムを編成した方法から導き出される。たとえば、基礎研究とインフラストラクチャ・プロジェクトを組み合わせた形のプログラムに助成することで、政府は、科学/工学の長期的な健全性を促進し、知識基盤を拡大強化し、新しい技術を実証することが可能になる。同様に、大学と産業界における取り組みや研究者を組み合わせた形のプログラムに助成することで、長期的な目標を現実世界の問題と結び付けることが可能になる。さらに、多様な連邦政府機関を通じて助成金を配分することにより、政府は、多数の科学/工学分野を広範に網羅すること、そして多数の (あるいは代替の) 技術的アプローチに取り組むことが可能になった、という事実もある。連邦政府の研究開発予算の90%を占める主要な研究機関の予算と技術的守備範囲が幅広く深いのは確かであるが、国家目標にせよ、機関のミッションにせよ、すべての要請を単独で満たすことができる機関は存在しない。ある意味で、省庁間連携のプロセスは、他の多くの研究開発プログラムが効果的かつ効率的に達成することができなかった課題を補うための追加的な戦略なのである。以下では、さまざまな連邦政府機関の共通特性についてやや詳しく検討し、そうした共通特性が、全体として、連邦政府の研究開発にこのような運営戦略を採用する基盤を形成する主な要因となっていることを示す。第4章と第5章では、こうした原則をさらに具体的に示してくれる若干の事例研究を提示する。

長期的な基礎研究の支援

連邦政府の研究開発投資の主な特徴の1つは、民間の研究活動との競合ではなく補完を目的として構想されていることである。産業界の研究開発プログラムは、ほとんどのケースで、直ちに実用可能な技術や商品に直結する短期的な技術的目標を追求しなければならない。一般に、民間企業は、成果が不確実であったり、アイデアが実を結ぶまでに長い期間を要する可能性が高い基礎研究に対して長期的な投資を行うことはできないのである。この理由から、連邦政府の資金による研究開発は、技術革新や商品化に結び付く可能性がある新しい知識領域に踏み込んで、そのための基礎固めを実行することになる。このような投資は、多くの場合、長期にわたって実施する必要がある。なぜなら、技術革新が形となって、アイデアが実用可能な製品へと姿を変えるまでには、数年から数十年もの期間を要することが多いからである。もっとも、産業界が長期的な基礎研究に資金を提供していないわけではない。多数の大企業が、科学技術全般への貢献が見込まれる基礎研究を実施し続けている。しかし、現実には、そうした企業でさえも、実用化の見通しや企業の利益への直接的な関連性を実証することが、研究開発投資の必須条件となっていることに変りはない。そうした状況で、連邦政府の助成を受けた研究開発が果たし得る役割は、企業が研究に参加して適切な投資に踏み切れるようなレベルまで、対象分野の知識基盤を拡大強化することである。これは、今までに何度も繰り返されてきたプロセスである。たとえば、データベース、コンピュータ、ネットワーキング、バイオテクノロジーがそうであり、最近ではナノテクノロジーもその一例である。

大規模なインフラストラクチャを構築する事業の支援

大規模な研究インフラストラクチャ、たとえば、高性能コンピュータ、相互接続されたネットワーク、電子図書館テストベッド、実験的な生産設備、大型のデータ・レポジトリなどは、基礎研究にも技術開発にも必要不可欠である。多くの場合、連邦政府の研究開発プログラムだけが、この種の投資を実行できる唯一の財源である。同様に、大規模な包括的インフラストラクチャの構築には高いコストがかかるので、資源の負担、専門知識、そしてリスクを複数の政府機関に分散することは完全に理に適っている。この種の省庁横断的な取り組みの例としては、NSF/DARPAの主導による初期のMOSISプロジェクト (第4章の表4.1を参照)、初期および現在のインターネットの開発、ヒトゲノム・データベース、そしてNSFの全米ナノファブリケーション・ユーザー・ネットワーク (NNUN: National Nanofabrication Users Network) などがある。

産業界の研究活動の拡大強化による産官学連携の育成

産業界が実施する研究は、長期的な基礎研究に重点を置かないことが多いが、大学や政府機関との間に効果的な研究開発のパートナー関係を築く上で、有益な興味深い役割を演じている。連邦政府の研究開発ポートフォリオの中では、大学における研究が常に主役となってきた。しかし、ほとんどの連邦政府機関は、産業界への知識移転を (最優先の課題とまでは言えなくとも) 中核的な任務として実施することを強く求められている。一部の政府機関、たとえば、国立標準技術研究所 (NIST) や国防総省 (DOD) は、産業界を研究の主要な実施機関として利用しようとしているか、あるいは少なくとも、大学と産業界の間の強力なコラボレーションをコンソーシアム方式の連携の形で奨励しようと努めている。その結果、資金を提供する政府機関は、その主要なミッションが何であれ、そうしたコンソーシアム体制やその他の類似の関係の下で、人的/物理的資源を産学の組織と共有するように促されるようになる。したがって、産業界の研究も、この産官学の関係を育成することによって、省庁間の連携を発展させているのである。近年の省庁合同のイニシアチブ (たとえば、電子図書館、ITRプログラムなど、第5章を参照) の下で資金提供を受けている研究プロジェクトの多くは、このような特徴を明瞭に示している。

政府助成の多様な財源がもたらす全体的なレベルの向上

財源の多様性、すなわち、多数の部門や機関による助成は、連邦政府の研究開発活動に対して常に有益な影響を与えてきた。財源が多様であることの最も顕著なメリットは、研究者が複数のスポンサーから活動への支援を求める機会が得られることである。また、新しいアイデアを応用する対象の範囲の拡大や、異なるスポンサーの下で異なるアプローチを試みる機会が得られる、といったメリットもある。さらに、財源が多岐にわたることで、自由形式の研究 (例:NSFの資金による研究) とスポンサー (例:エネルギー省) のミッションのニーズへの対応を目標とする研究との間でバランスを取ることも可能になる。さらに重要なのは、複数の政府機関が連携して研究プロジェクトへの共同助成を行うと、メリットがさらに大きくなることである。複数の財源を適切に利用すれば、複数の代替的な技術アプローチを追求する機会が得られる。一方、スポンサーとなった機関は、より広範でリスクが高いアプローチを採用しているプロジェクトの運営のリスクを分担することができる。さらに、共同スポンサー方式と省庁間連携は、全参加機関が同時に資金を提供する方式に限られるわけではない。多くの場合、研究プロセスのさまざまな時点で、さまざまな機関から交替で支援を受けることが効果的なのである。たとえば、ある機関の提唱によって開始された活動が別の機関の支援による後継活動へとつながり、研究の継続や技術の成熟が可能になるケースも考えられる。これも、一種の省庁間連携であり、資源とミッション要件が相補的な関係にある複数の省庁や機関 (例:NSF、NIH、DARPAなど) にまたがる数多くの研究活動で実際に有効に機能してきた連携方式である。省庁間連携のこの特性の具体的な事例については、後の章で検討する。

組織の特徴と管理スタイルの相補性

前述のように、連邦政府の研究開発投資総額の90%は、少数の政府機関によって占められている。こうした機関 (特に、DARPAを主体とするDODの科学技術部門、NSF、NASA、DOE、NIH) は、それぞれ固有のミッションと管理スタイルを持っているが、それは機関の目標を最も適切に満たすために長年にわたって育成されてきたものである。しかし、こうした機関の組織文化と資源は、相互に補完し合う傾向があり、この相補性は、さまざまな時代に、省庁間連携の最も重要な源泉となってきた。たとえば、DARPAは、研究プロジェクトとその実施機関の選定などの面で、先進的な、ときには「革命的/破壊的」なスタイルで研究開発プログラムを管理している機関である。その目標は、公平の原則や論理的必然性を犠牲にすることさえ厭わずに、高いリスクをあえて冒しながら、アイデアと技術の最前線に立ち続けることである。こうした姿勢によって、DARPAは、1958年の創設以来、過去数十年間にわたって、多くの革新的な技術の推進役を務めることが可能となったのである。一方、NSFは、研究者間の相互審査 (ピア・レビュー) に基づく選定プロセスを最大の特徴としている機関であり、研究コミュニティにおいて、また研究ポートフォリオの構成に関して、常に公平とバランスの実現を期している。NSFの目標は、外部のメカニズムによる判定という基準に照らして最も適切な研究プロジェクトに資金を提供することによって、科学と工学を進歩させることである。DARPAが、大規模なプロジェクトとシステムにより大きな比重を置いているのに対して、NSFは、大小さまざまな規模の多種多様な研究プロジェクトから成る、バランスの取れたポートフォリオを作り出そうと試みている。その他の政府機関の大半は、DARPA型であるか (例:DOE)、NSF型であるか (例:NIH)、両者の中間である (例:NASA)。全体として、こうした機関の管理スタイルの相違は、省庁間連携に対する利点にもなり、ときには障害ともなってきた。

非研究開発機関との関係および社会との結び付き

連邦政府内には、主要な研究開発機関のほかに、研究への助成を主要業務としては必要とせずにミッションを遂行している機関が非常に数多く存在する。たとえば、教育省、復員軍人省、商務省 (NISTを除く) などがこれに当たる。しかし、こうした機関は、研究開発機関の多くと比べて、一般国民の利害と社会のニーズに近い立場にある。したがって、NSFは、教育省と連携することによって、たとえば、学習支援技術の開発を目的とした研究プログラムをより的確に立案することができる。このような研究開発機関と非研究開発機関の連携は、研究成果を短期間で社会にもたらす強力な原動力となる。これは、一般社会の視点から見て、省庁間の連携が生み出す結び付きの中でも、最も価値あるものである。

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