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第1編 国が支援する情報技術研究開発のあり方

2.8 国研の不在をどう補完するか

■民間の研究管理力を取り込んだ、流動性の高いプロジェクト組織を作るべし。
 国研よりは、むしろ流動性の高いプロジェクト組織を必要に応じて作って、そこで規模の大きな研究をすればよい。米国の国研の多くは所有者は国だが、運用は大学や民間企業に任されている。目的意識をはっきりさせ、評価をはっきりさせるために、民間の研究管理力を活用すべきである。そして、その組織は、産官学の流動性の中できちんと運用すべきである。

■日本の国研の状態は非常に深刻である。
 日本の国研といえば産総研であるが、情報系はわずか3部署、5%の100人にも満たない規模で、これで米国に勝てと言われても無理である。大学よりひどい状態になっており、今後は更に弱体化していくのではないかという懸念がある。
企業も国研も、ソリューションビジネスに引っ張られて、基礎研究が少なくなっている。文科省関係はよりサイエンス寄り、経産省関係はより実用的になって、真ん中のフェーズが抜けている。国研がこの状態だと、大学に頑張ってもらうしかない。

■企業と国との方向性が合えば、国家支援の中長期の研究開発は是非やりたい。
 国研が不在だからといって、企業の研究所が、新規分野の研究から製品化における真ん中のステージを担当することは、金儲けを目的としている以上難しい。事業としての将来を見越して中長期の研究は続けていくが、国から支援される研究開発も国と企業の方向が合わないとやっていけない。国との方向性が合えば、委託としての研究費補助は大歓迎である。米国ATPのような公募型の研究であればどんどん応募していきたい。

■基礎研究から実証実験、事業化までを通し、産学が連携できる仕組みが必要である。
 日本では、研究の上流工程と下流工程の間にギャップが出来ている。米国では国研がここを埋めているが、日本には国研がほとんど無い。このことから、基礎研究から実証実験、事業化までをとおした産学連携の仕組みが重要である。シーズ型の基礎研究については、大学、国研がリードして企業は参加するスタイルとし、一方、ニーズにあった事業化フェーズの研究については企業がリードし、大学が参加するスタイルとするのが良いと思われる。

2.8.1 A氏意見
(1) 流動性の高いプロジェクト組織を作れ
 国研はなくてもいい。むしろ、流動性の高いプロジェクト組織を必要に応じて作って、そこで規模の大きな研究をすればよい。民間の研究管理力を活用すべきである。目的意識がはっきりするし、評価がはっきりする。そして、その組織は、産官学の流動性の中できちんと運用すべきである。
 米国の国研だって、国研の所有者は国だけれど、運用は大学に任されている。軍事研究はLockheed Martineといった民間が行っている。官の研究所は価値観が少し違う。産総研にいれば、国のために研究するのであって、メーカのために研究するのではない。しかし、民間の研究管理は、ターゲットを決め、期間を決めて、いついつまでにこれをやると、アウトプットが出たときに競争力があるかどうか、利益を生むかどうかという発想をする。
 昔は、産総研(電総研)だって競争が激しかった。敗れた人は通常は外に出た。それが、いつのまにか、定年制の通常のサラリーマン社会へと変貌を遂げてしまった。これも米国のプロパテント政策で技術の流出を極めて絞ったから、本当に研究所が種をクリエイトしなければならなくなったが、途端に何をやればよいかわからなくなった。以前は、留学して、それを噛み砕いて、追試験して、出来れば米国のオリジナルよりもクオリティとか機能の面でプラスアルファがあるようなものを作ることで良かった。

2.8.2 B氏意見
(1) 日本の国研の状態は非常に深刻
 日本の国研といえば産総研であり、全体で2000人規模のすごい研究所に見えるが、情報系はわずか3部署、5%の100人にも満たない規模である。情報の研究と言う意味で大変難しい状況になってきている。これで米国に勝てと言われても無理である。極めてまずい。大学よりひどい状態になっている。
 IT関連が大事だということになれば、内部で研究内容を見直すなどの構造改革は是非とも必要である。現状では、縦割りになってしまっていてうまく変革出来ていない。今後、産総研には情報系の良い人が集まらなくなるかもしれない。これが心配である。
 メーカでも今やOSやアーキテクチャ系の研究者がいなくなっている。企業はみんなソリューションに引っ張られてしまった。産総研自体も独立法人化して研究費を調達しなければならず、ソリューションビジネスに引っ張られており、基礎研究は少なくなっている。文部科学省関係はよりサイエンス寄りであり、経済産業省関係はよりプラクティカルになって、真ん中のフェーズが抜けている。国研がこの状態だと、ここは大学に頑張って頂くしかない。

(2) 企業と国との方向性が合うなら、国家支援の中長期の研究開発は是非やりたい
 事業としての将来を見越して中長期の研究は続けていく。国から支援される研究開発も国と企業の方向が合わないとやっていけない。国研が不在だからといって、企業の基礎研、中研が、新規分野の研究から製品化における真ん中のステージを担当することは、金儲けを目的としている以上難しい。
 ただ企業と国の方向性が合えば、委託としての研究費補助は大歓迎である。米国ATPのような公募型の研究であればどんどん応募していきたい

2.8.3 D氏意見
(1) 基礎研究から実証実験、事業化までを通し、産学が連携できる仕組みが必要
 企業の研究所においては、学問的かどうかは問題ではなくて、事業にするための種を作るというように、研究の方針が転換されている。例えば、スーパーコンピュータのエンジニアが、アプリケーションとして、金融工学のソリューションを研究している。研究所に業務の専門家がいないので、銀行の人と組んでやっている。パッケージの開発までおこない、複数の銀行に販売した実績がある。
 日本においては、研究の上流工程と下流工程の間にギャップが出来ている。米国では国研がここを埋めているが、日本には国研がほとんど無い。このことから、基礎研究から実証実験、事業化までをとおした、産学連携の仕組みが重要である。シーズ型の基礎研究については、大学、国研がリードし、企業は参加するスタイルとする。企業の研究所では、直近の事業に役立つ研究が中心となっており、基礎研究でのリードは経営的に苦しい。一方、ニーズにあった事業化フェーズの研究については企業がリードし、大学が参加するスタイルとする。インフラストラクチャの整備が必要な研究は、共同開発拠点にテストベッドを用意し、そこで共同研究のできる仕組みを整備する。

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