将来的な経済や行政の面にもたらす情報テクノロジの重要性が明らかになってきた段階で、研究の進展を継承していく際に、政府支援の意義が直接的には明確にならないことがある。各分野の代表者で構成される当委員会の各メンバーの間では、確かに情報テクノロジの市場では相当な成果が見られる反面、必ずしも民間部門が長期的なハイリスクの研究活動を進める中心的な原動力にはなり得ないという共通見解を持っている。当委員会の見解については囲み記事にて示す。
当委員会では、情報テクノロジの長期的な基礎研究を進めるにあたり、連邦政府の役割を強化・維持していくことが不可欠と考える。こうした基礎研究は、高度な行政サービスや国家の安全保障を提供する上で、必須の条件となる。ここから生まれる国家的・社会的な利点には多大なものがある。情報テクノロジの分野で国際的なリーダーシップが失われると、経済的にも多大な影響が及ぶことになる。
産業界はあくまで、短期的な経済的側面を重視するため、今後の研究活動を支援するとは考えにくい。産業界にとって、こうした投資がビジネス上のメリットとなることが確証されない限り、社会的に意義のある問題の解決に向けた投資を敢行することはなく、その可能性もない。
情報テクノロジの研究活動を支援することの意義は、単に経済的側面や国家安全の必要性だけにとどまるものではない。情報テクノロジの進展によって、社会的には計り知れない利点が享受できるようになる。私たちが今後迎える「変化」に対応できる下部構造として、あらゆる市民が利用できるインフラストラクチャを構築するには、現在実施されている研究活動の水準をはるかに越えた大規模な研究開発に着手する以外に方法はない。これについては、次章で詳しく検証する。
情報テクノロジに連邦政府が直接的な支援を実施することにより、この分野の研究活動における若い世代の育成と準備が強化される結果、急速な市場の変化に合わせて自分の技能を高めるためのトレーニングも可能になる。適切な訓練を受けた人材は単なる副産物ではなく、公的に支援される研究活動における重要な原動力となる。こうした専門の技能を備えた人材は、国家の重要なインフラストラクチャ資源として、斬新なアイデアの着想/開発を促進し、既存のビジネスに向けた人材プールを形成できるほか、新規事業を起こす可能性も生まれてくる。
次章で扱う「変化」が、国家の将来にもたらす利点には計り知れないものがある。ネットワーク社会では、あらゆる市民の中に浸透し、国家全体が一段と強固に結び付く結果、数多くの社会的な問題に対応できるようになる。決して、情報テクノロジですべての問題が解決されるわけではないが、解決に向けた有効な第一歩となることは間違いない。
とは言え、次章で検証する変化のプラス面だけが実現されるわけではない。こうした変化の成果は、まさに、連邦政府が実施する積極的で、かつ効果的に管理されたプログラムに依存する。優れた発想が生まれ、具体的な実用に向けて実を結ぶ段階に至るまでの成長を支え、プラス面での展望の実現に向けて進化の状況を評価・追跡する上で、こうした研究開発に対する連邦政府の長期的な投資が不可欠になる。
今後の経済成長を支えると同時に、今、国家が直面している最も重要な問題に対応する解決策を見出すために、情報テクノロジの研究は不可欠の課題となる。この重大な局面で連邦政府主導による研究活動を活性化する対策を取らない限り、今後10年の間に、発展を支える活力は大幅に低下する結果になる。こうした後退に対して国家が支払うべき代償は、今、問題に対処しておく際に必要な投資に比べ、はるかに多大なものになる。
President's Information Technology Advisory Committee(大統領直属情報テクノロジ諮問委員会)の参加メンバー:
共同委員長
Bill Joy
Sun Microsystems社
Eric Benhamou
3Com社
Vinton Cerf
MCI Communications社
David W. Dorman
Pointcast社
Steven D. Dorfman
Hughes Electronics社
Robert Ewald
前Cray Research社
James N. Gray
Microsoft Research
W. Daniel Hillis
Walt Disney Imagineering社
David C. Nagel
AT&T Labs社
Leslie Vadasz
Intel社
Andrew J. Viterbi
QUALCOMM社
Steven J. Wallach
CenterPoint Ventures社
Irving Wladawsky-Berger
IBM