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4. IT立国実現に向けての提言

4.2 調査研究の結論

 ヒヤリング調査で得られた意見を、わが国のIT分野を始めとする中核的産業の空洞化の防止という観点からまとめなおしてみると、次のような研究開発機構の構造改革の重点目標が明確化してくる。

(1) わが国が繁栄を維持するためには、フロントランナーとならなければならない。
国も企業もIPRやライセンスを重視し、これらを生み出すような政策、仕組み、研究開発投資を行うことが必要。
国はフロントランナーとなるための技術シーズのアウトソーシング市場を作る必要がある。

(2) 国全体のIT投資を公共投資のレベルまで大幅に増額すべきである。
ITは全産業の共通基盤であるから、従来の公共投資に劣らぬ投資を行うべき分野である。

(3) IT研究開発拠点の国外流出が不必要となるくらい国内の環境条件を充実させるべきである。
IT研究開発拠点作りの最大の問題は人材不足。米国の大学、国研のように、国の投資により、国内、国外の研究者をプールする仕組みを作ることが必要。
人材を集め、インフラを整備して、国内の研究開発環境を充実させるべきである。
製造拠点の海外流出に関しては、コスト低減を目指した企業活動としては必然。ソフトウェアの海外発注も単純作業が多い。ハイテクや高付加価値の分野の開発や製造が残っていればよい。

(4) わが国の研究開発支援構造の欠落部分を補い、シームレスな構造を構築することが重要。
ビジョンや政策立案から、プロジェクト管理まで、IT専門家を動員した機構を整備する。(米国のPITACやプログラムマネージャ制度に対応するもの)
省庁間の縦割り構造の上に立って、省庁横断的な研究開発予算やプロジェクトの統合、整理する強力な組織を作る。(米国のOSTP、NSTCに対応するもの)
基礎研究を発展させ、事業化や産業競争力強化に結びつける一貫した国の仕組みを作る。
研究開発支援における評価を実質的なものとし、よいものを継続的に支援する。
米国のようなベンチャー創成と育成の仕組みを作る。
(米国のSBIRやSTTRのような仕組み)
新技術を持って市場参入した中小、ベンチャー企業を優遇するような市場構造の改革。
人材育成だけでなく、その人の進路やその後の起業支援など一貫性のある仕組みを作る。

(5) 研究開発の重要部分を占めるべき大学を改革強化し、産業との連携を密接化すべきである。
大学に優秀な人材が残り、研究開発のリーダとなり、大きな研究チームを構成できる仕組みを作る。
カリキュラム改革や、大学間の講座共有などによる大学間の連携を強化する。
情報系の教育、研究の定員増加や、大学に技術シーズを蓄積しベンチャーの起業の拠点とする。

(6) IT研究を行う国研が極めて弱体であり、その強化が急務。国研を補う機関として、企業の中研や基礎研が国の研究開発を請け負うことも検討すべきである。
米国と比較しIT関係の国研は比較にならないほど弱体。基礎研究分野の担い手として充実させることが必要。

 これまでのわが国の研究開発の構造は、産業の将来ビジョンや研究開発戦略が、諸外国との競争を前提として作られたものではなかった。オリジナルなアイデアから産業の技術シーズを生み出し、グローバルコンペティションに勝ち残るために、産官学の連携や省庁間の競争・協力関係を築くことや、大学が産業の技術シーズの創成と蓄積の要となる時代の来ることも予想外であったと言えよう。このため、国全体としてみると、競争より協力、変化より安定を指向してきた。
 このような状況の転換点は、1980年代の米国の産業再生を賭けたプロパテント政策とITへの重点投資の開始である。この結果としてIT革命がおこり、従来の産業の戦略や、国の研究開発のあり方を変えてしまった。
 ITを含めほとんどすべての産業は、進化を継続することが不可欠となった。立ち止まっていることは、追撃してくる諸国に追いつかれることを意味する。製造拠点を海外へ移し、その研究開発拠点まで移した企業は、やがてその国に飲み込まれ、日本からその存在を消していくことになる。その結果、国内の空洞化が進行する。
 空洞化を防ぐためには、追撃してくる諸国に真似のできないオリジナルな新技術開発とそれに基づく付加価値の高い新商品を製造し、新市場を創成することである。しかし、そのような新技術や新商品も、遠からず追撃する諸国へ技術移転され、国外へ出ていってしまう。継続的な国の繁栄を目指すためには、常に新産業を起こし、競争力を失った産業に置き換える新陳代謝を継続させることが不可欠となった。
 このような状況の中では、国全体の研究開発のリソースを増やすことと、それらのリソースを効率的に配置して、新技術開発と新産業育成を、競争相手国より少しでも能率よく実行できる構造を作り上げることが、勝者となるための条件となる。
 フロントランナー構造の整っている国では、研究者は、より多くの起業のチャンスと成功への期待を持つ事ができる。これは、国外から優秀な研究者を集め、リスクの大きな研究開発の初期段階を充実させ得ることを意味する。
 わが国は、また、米国のようなフロントランナー構造が形をなしていない。ITは、バイオ、機械製造、環境などの他分野を発展させる基盤的技術(インフラ)となるから、IT研究開発のためのフロントランナー構造の構築は急務である。
 このような観点から、わが国がまず改革すべき点をいくつか取り上げ、提言として次節に挙げる。

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