【前へ】

3.7 ディジタル図書館(電子図書館、Digital Library)

 1990年代、WWWに代表される情報提供とアクセスのためのソフトウェアに加え使いやすいブラウザの登場によりインターネットが爆発的に広がった。そうした背景に加えて、国家情報基盤(National Information Infrastructure)や、それに続くG7による世界情報基盤(Global Information Infrastructure)構想の中でディジタル図書館が重要な応用分野として位置づけられた。こうした背景の下、新しい情報技術を指向した計算機科学から図書館にまたがる分野でディジタル図書館に関するさまざまな活動、プロジェクトが進められてきている。
 本稿では、ディジタル図書館に関する研究開発の現状と、インターネットやディジタル図書館上での情報アクセスと利用において重要な役割を果たすメタデータについて述べる。さらに、この領域における研究開発の重要性について筆者の観点から考察する。

 

3.7.1 背景

 1990年代、WWWに代表される情報提供とアクセスのためのソフトウェアと、Mosaicから始まった使いやすいブラウザの登場によりインターネットが爆発的に広がった。そうした背景に加えて、クリントン政権の発足に伴う国家情報基盤(National Information Infrastructure)と、それに続くG7による世界情報基盤(Global Information Infrastructure)構想の中でディジタル図書館が重要な応用分野のひとつとして位置づけられたことによってディジタル図書館(電子図書館,Digital Library,Electronic Library)が注目を浴びるようになった。こうした背景の下、計算機科学を中心とする新しい情報技術の研究開発から図書館現場におけるディジタル図書館の実現およびその利用までにまたがる広い分野で、ディジタル図書館に関するさまざまな活動やプロジェクトが進められてきている。
 ディジタル図書館の研究開発は計算機科学を中心とする情報技術指向のものと、図書館現場を中心に進められる資料のディジタル化資料の提供を主とする実システム、実サービス開発指向のものに大別できる。図書館においてはアメリカ議会図書館や英国図書館に代表される国立図書館や、カリフォルニア大学、ミシガン大学などの大規模大学図書館を中心に、各図書館の特色を反映したディジタルコンテンツ提供への取組みが進められてきている。我が国においても、学術審議会から出された建議を背景に学術情報センターや国立大学図書館での取組みが活発である。また、国立国会図書館では、国際子ども図書館や2002年開館予定の関西館での電子図書館機能への取組みがなされている。図書館での取組みは、図書館自身によるディジタルコンテンツの作成と提供、第3者たとえば出版社によって提供されるディジタルコンテンツの提供、ディジタルコンテンツを含む様々な情報資源に関する情報の提供の3種に大別することができる。また、これに加えてインターネットやディジタル図書館の利用支援なども進められてきている。
本稿では、情報技術の研究開発の視点を中心に述べてみたい。まず、研究助成プログラムとしては1994年から1998年までアメリカで進められたNSF、NASA、DARPAの共同助成によるDigital Library Initiative(第1フェーズ、DLI-1と呼ばれる)がもっとも著名なものであろう。DLIは1998年から第2フェーズ(DLI-2)が始まり,規模を拡大して続けられている。NSFでは大学学部レベルの教育のためにディジタルコンテンツとその利用環境を整備するためのプログラム(NSDL)を進めている4 。イギリスでは1995年からElectronic Library Program(eLib)がJISC5の下で進められてきている。また、EUでは科学技術研究を進める5th Frameworkの中のInformation Societies Technologyプログラムにおいてこの分野に関する助成が行われている。また、NSFは国際的な研究助成プログラムを進めており、中でもNSF-JISC、NSF-DFG6 (ドイツ)との間では共同で研究助成が行われている。
 ネットワークを介して、利用者にとって適切かつ有用な情報資源を効率よく見つけ出し、アクセスし、利用するということは、ディジタル図書館にとっての基本的な要求である。これには適切に構成されたメタデータ,すなわち「データに関するデータ」が重要な役割を持っている。WWW上での情報資源発見を目的として草の根的に作り上げられてきたDublin Core Metadata Element SetやWWWコンソーシアム(W3C)で進められているResource Description Frameworkなどはディジタル図書館に関する重要な話題の一つである。筆者自身はメタデータに関心を持っており、本稿でも後に改めて触れる。

4 NSDL: National SMETE (Science, Mathematics, Engineering, and Technology Education) Digital Libraryとよばれているもの。高校以下の教育での利用も含めている。
5 JISC: Joint Information Systems Committee, イギリスにおける高等教育および研究のための情報システム環境とネットワーク基盤を提供するための公的組織
6 DFG: Deutsche Forschunsgemainschaft, ドイツの学術的研究を助成する公的機関

 

3.7.2 ディジタル図書館のための情報技術の研究開発

 DLI-1では、スタンフォード大学,カリフォルニア大学バークレー校、同サンタバーバラ校、イリノイ大学アーバナ・シャンペイン校、ミシガン大学、カーネギーメロン大学の6大学で進められたほぼ同規模の6つのプロジェクトに4年間で2300万ドルの助成が行われた。DLI-1の期間の半分が過ぎて1997年3月にサンタフェで開かれたワークショップで、フェーズ2ではどのように進めるべきかということが議論され、規模を拡大すること、100万ドル超の少数のプロジェクトとより多くの中小規模プロジェクトが提案された。DLI-2では、それまでの助成母体に加えて、議会図書館(LoC)、医学図書館(NLM)、人文基金(NEH)が参加することになり、さらにFBIも加わっている。また、公文書・記録管理局(NARA)やスミソニアン協会他も協力している。DLI-2は1998年秋から開始されることになっていたが、実際に1998年秋に開始されたものは比較的小規模なもののみで、大規模プロジェクトは1999年になってから開始された。助成期間は大規模なもので2004年までの5年間である。付録1にDLI-2で助成されているプロジェクトの一覧を示す。全部で27プロジェクトあり、その内の6プロジェクトは大学学部レベルの教育を指向したものである。
 付録1に含まれる総額100万ドル以上の大規模プロジェクトの中で、スタンフォード大学、カーネギーメロン大学(CMU)、カリフォルニア大学バークレー校(UCB)、サンタバーバラ校(UCSB)はDLI-1でも助成されていたグループであり,内容的にも継続的色彩が強い。また、この内カリフォルニア州の3大学のプロジェクトは互いに協力関係を持つことを前提にしており、カリフォルニア大学の9キャンパスを結んで進められているCalifornia Digital Library上で試用できるようにすることを予定している。ミシガン州立大学のプロジェクトは20世紀に記録されてきた様々な講演・演説の録音データの検索可能なオンラインリポジトリを構築する。コロンビア大学のプロジェクトは、個人利用者による利用を指向した医療情報の分散ディジタル図書館を作り上げようというものである。コーネル大学のプロジェクトでは、信頼性、セキュリティ、保存性といったディジタル図書館を十分に頼りにできる完全なものにするための技術基盤を研究する。このように、人文科学、社会科学、自然科学・技術の広い分野をカバーしていることが理解できる。
 NSFでは科学・数学・工学および技術の大学学部レベル(ならびにそれ以下)の教育に利用できる情報資源開発や環境整備を目指した研究開発の助成(NSDL)を進めている。NSDLでは現在プロジェクトの募集が進められている。以上のほか、DLIの隣接領域として、NSFではネットワーク上での知識共有や協調に関する研究を進めるKDI(Knowledge and Distributed Intelligence)と呼ばれる研究助成プログラムを進めた。また現在、ITR(Information Technology Research)と呼ばれる大規模な情報技術研究プログラムがスタートしている。これは幅広い情報技術分野の研究の助成を進めるものである。DLIに比べてこうした研究助成の方がより大規模である。一方、研究助成母体の広がりからも理解できるように、DLIの特徴は計算機技術を背景とする研究組織とコンテンツを持つ研究組織、図書館や美術館・博物館間にまたがった研究を進めようとしている点にある。これは、単独の分野での研究では、技術のみ、コンテンツのみ、あるいはサービスのみになりがちであるのに対して、これらを結んだ研究としての役割が大きいといえる。
 ヨーロッパでは、ディジタル図書館に関連する情報技術開発助成プログラムとして、昨年より5th Frameworkの中でInformation Societies Technology(IST)がはじめられている。イギリスでは1995年よりJISCによって研究助成プログラムeLib(Phase1,2,3)が続けてこられている。
 我が国では、学術情報センターでのNACSIS-ELSや統合的な電子ジャーナル編集出版環境の開発等、ディジタル図書館を指向した研究が進められてきている。また,1995年から2000年までに渡って、(財)日本情報処理協会(JIPDEC)を中心次世代電子図書館システム研究開発事業が進められてきた。この事業は次世代の電子図書館システムにおいて必要とされるいろいろな要素情報技術と、それらを統合化し、次世代電子図書館システムのプロトタイプとして実装、評価することを目的として進められたものである。しかしながら、欧米に見られるようなディジタル図書館を指向した情報技術の大きな研究開発助成のプログラムは行われていない。

 

3.7.3 メタデータ

3.7.3.1 メタデータの重要性

 メタデータは簡単には「データに関するデータ」と定義される。目録や索引、抄録などは典型的なメタデータである。それ以外にも辞書やシソーラス,URLやISBN等の識別子、ビデオの内容に関する記述、著作権の記述等利用条件に関する記述、倫理面からの内容や利用条件等の記述、利用者の環境に関する記述などさまざまなものがある。
 インターネットやディジタル図書館上での情報資源の利用を考えると、メタデータの重要性に容易に気がつく。たとえば、従来、利用者は特定のデータベースやサービスを介して必要な情報資源にアクセスしていた。ところが、ネットワーク上では特定の場所、特定のサービスということは必ずしも意味を持たず、ネットワーク上のどこかにある情報資源にアクセスし、サービスを受けることができればよい。しかも、当然のことではあるが、情報資源を探し出し、内容を吟味し、必要であれば料金を適切に支払うといった作業をすべてネットワーク上で行うことになる。また、情報資源が多様かつ大量であること、利用者と利用方法が多様であることを考えると、こうした作業を効率よく行えるようにするには多様なメタデータが必要であること、かつそれらがネットワーク上で有機的に組み合わせて利用できねばならないことに容易に気がつく。
 こうした背景の下で、現在メタデータの開発が活発に進められている。たとえば,情報資源発見を目的として提案されているDublin Core Metadata Element Set(通称Dublin Core)、教育資料を対象に開発が進められているIMS、電子商取引指向のIndecs、ビデオデータに関するMPEG7、インターネット上で流通するコンテンツの倫理的内容記述を指向したPICSなどがある。加えて、こうした様々なメタデータ記述方式をWWW上で流通できるようにするための共通のメタデータ記述方式を与えるResource Description Framework(RDF)の開発も進められている。次節では、Dublin Core Metadata Element Setとその現状を簡単に解説する。

 

3.7.3.2 Dublin Coreに関して

 Dublin Core Metadata Element Set(通称Dublin Core,以下ではDCMESと記す7)はインターネットでの情報資源の記述と発見のための「コア・メタデータ」として提案されてきたものである。コア・メタデータとは様々な分野に共通の性質のみを定義したもので、従来の目録規則を適用することが困難なネットワーク情報資源に適用すること、図書館や美術館といったコミュニティの壁を越えたメタデータの相互利用性(interoperability)を得ることを目的として提案されたものである。情報資源の効率よい発見のためにはインターネットやディジタル図書館の環境に適したコア・メタデータが必要であるとの理解から、現在、図書館や美術館・博物館のコミュニティを中心にDCMESの重要性が広く認められ、その利用も広がりつつある8(付録2に基本15エレメントの定義を示す)。
 現在,DCMESの開発活動は米国のOCLCに活動の拠点を置き、ネットワーク上での議論を中心に進めている。基本エレメントの定義を終了し、現在、詳細なメタデータ記述を可能にするためのサブエレメントや統制語彙の指定形式等の定義を進めている(こうしたより詳細な記述内容を指定するための記述要素を総称してqualifierと呼んでいる9)。こうした詳細な記述のための仕組みは,ある意味で「コア・メタデータ」の概念と矛盾するものであるが、より詳細で統制されたメタデータ記述と、かつ効率の良い検索にも重要な役割を演ずると考えられる。
 これまではDublin Coreそのものの定義に関する議論、たとえばエレメントやqualifierの定義が中心であったが、今後は実際の応用分野における問題に関する議論やDublin Coreの維持や修正等に関する議論が中心になっていく。現在、qualifierに関する議論が進められ、近い将来標準として推奨されるqualifierセットが作られることになっている(本稿を執筆時点において,最初のqualifierセットの承認に関する投票がUsage committeeで進められている)。

7 Dublin Coreということばが,メタデータ記述のためのエレメントセットのことを意味する場合と,メタデータ記述規則の開発の活動全体を表す場合がある。混乱を避けるため,必要に応じて前者をDCMESと呼び,後者をDublin Core Metadata Initiative (DCMI)と呼び,明確化している。
8 Dublin Coreに関する標準化はSimple Dublin Coreに関してCEN(ヨーロッパ)やNISO(アメリカ)で進められている。実際には既にいろいろなところで利用が始められており,応用目的に応じた拡張(応用に合ったqualifierの導入やエレメントの追加)も現実にはなされている。
9 Qualifierを一切含まない基本エレメントのみのものをSimple DC(あるいはDC Simple),qualifierを含むものをQualified DCと呼んでいる。標準化機関で標準化が進められているのはSimple DCである。

 

3.7.4 考察

3.7.4.1 ディジタル図書館のための情報技術開発の観点から

 当然のことではあるが、ディジタル図書館(DL)の実現には様々な要素情報技術を総合することが要求される。個別の要素技術について詳しく述べることはできないので、下に研究プロジェクトからDLにとって特徴的な研究開発のための視点をいくつか列挙する。

  1. 情報アクセス支援:高機能情報検索技術、情報発見技術。文書の内容の抽出、抄録作成、分類、索引等、メタデータの自動作成技術。多言語情報アクセス技術。情報資源間の相互利用性技術。
  2. コンテンツ処理:自然言語の内容理解や機械翻訳など自然言語技術。音声や画像等非テキストデータの内容理解や内容抽出技術。印刷物、電子出版物など文書の構造と内容理解の技術。
  3. ユーザインタフェース:情報の可視化による情報アクセス支援技術。利用者による情報アクセスや情報生産を支援するための共同作業支援技術。障害者向けの情報アクセス・情報生産支援技術。
  4. コンテンツ作成・保存:多様なコンテンツの編集・文書化技術。電子文書、ディジタルデータの流通技術や長期間保存技術。
  5. 情報アクセスのための条件や制約の管理:知的財産権、Ratingなどに基づくアクセス制限技術。課金技術。プライバシやコンテンツの保護などのセキュリティ技術。

 このように並べてみると情報技術分野のほとんどすべてが含まれてしまう。この分野の国際会議等から中心的な話題を見てみると、情報資源の発見や情報資源へのナビゲーションのための技術、マルチメディア情報や多言語情報の検索技術といったものが挙げられる。一方、DLI等のプロジェクトに見られる別の特徴は、開発した技術を実際にコンテンツと利用者に適用し評価するためのテストベッド構築を含めている点であろう。
 1997-98年にNSFとEUは共同でディジタル図書館に関する研究戦略の検討を進めた。そこでは(1)高速高機能な情報検索、情報発見、(2)相互利用性、(3)メタデータ、(4)多言語情報アクセス、(5)知的財産権や経済モデル、の5テーマに対してワーキンググループが作られた。これらはディジタル図書館の研究開発にとって重要かつ特徴的な領域を表していると言える。

 

3.7.4.2 メタデータの観点から

 ディジタル図書館の発展によって一次資料、いわゆるコンテンツへのアクセス性が良くなり、ディジタル図書館というと、「ネットワーク経由でコンテンツを直接利用できるようにするもの」と一般的に理解されていると思われる。この理解は、もちろん間違ってはいないが、コンテンツへのアクセス性,コンテンツの利用性のためには適切なメタデータがなければならないことを忘れてはいけない。
 ディジタル図書館環境やインターネット環境では,情報資源の利用方法が従来の方法と大きく異なっていかねばならないことに注意しなければならない。異なる点を以下にいくつか挙げてみる(表3.7-1)。

表3.7-1
 
従来の図書館
ディジタル図書館
情報資源を探す入り口 場所に依存: 場所は無関係:
  利用者が図書館にやってくる。あるいは,図書館毎に提供するオンライン目録(OPAC)で資料を探してからやってくる。基本的に,一時にはひとつの図書館しか使わない。 ネットワーク上のどこかで見つかれば良い。情報資源を見つけだすための情報の果たす役割が大きくなる。また,同時に複数のサービスにアクセスすることは普通であり,かつ利用者が複数のサービスを同時利用していることを意識するとは限らない。
情報資源の粒度 大きい: 小さい:
  図書や雑誌,写真などの資料単位 必要な情報を含むところのみ
利用者環境 均一: 不均一:
  図書館の閲覧室,貸し出し ネットワークを介してつながったいろんな端末機器,PC。資料を利用するためのソフトウェアの準備は利用者任せ。
  図書館が用意する機器(マイクロフィルム,CD-ROM)  
利用者 均質: 多様:
  図書館の種類,場所によってある程度決まる。来館者を見ながらの図書館員による対応が中心。 世界中からアクセスがある。年齢,関心分野も多様。遠隔地の利用者を対象にし,ソフトウェアによるレファレンスサービスも必要。ディジタル図書館を利用した協調作業支援も重要な要素。
著作権管理 単純: 複雑:
  基本的には不要。(来館者を対象にオンライン利用しない物理的資源単位での管理。) ネットワーク経由のアクセス,資料の多様性,不正コピー対策,有償利用資料対応など。

 上の表からもわかるように,ディジタル図書館では,情報資源の発見からアクセス,利用に至るいろんな場面で柔軟な機能を持つことが要求される。こうした機能を実現するには適切なメタデータを利用する必要があることは疑えない。一方,メタデータに関しては次のような問題がある。

 

3.7.4.3 ディジタル図書館全体の観点から

 ディジタル図書館の研究開発全体を通して感じる点,要求される技術をいくつかあげたい。

 

3.7.5 まとめ

 図書館が提供するディジタル図書館(と呼ばれる)サービスは既に実際に始められている。しかしながら、それらはあるひとつの図書館が持つサービスの中のごく一部にすぎず、また、利用者が求める機能が実現されているとは考えられない。現在、実際に提供されているコンテンツは、従来型のメディア(印刷物、絵画や写真、オーディオ・ビデオなど)で作られた資料をディジタル化して提供しているものが中心である。一方、ディジタルメディアの発展によって今後さらにいろいろな形態、内容のコンテンツが作り出されることは疑えない。利用者の環境がどんどん変化していくことも疑えない。たとえば、DLI-1が始まったとき、Netscape NavigatorやInternet Explorerは影も形もなかった。DLI-2が始まったとき、携帯電話によるネットワークコミュニケーションはまだ普及していなかった。加えて、実際のディジタル図書館での経験から既存メディアの新しい利用方法も現れてくるであろう。
 ディジタル図書館においては、情報資源を扱い、情報資源へアクセスする直接的な技術だけではなく、情報資源の利用性を高める、あるいは情報資源を利用した人間の知的活動性を高めるという観点から、人間の知的活動を支えるための技術も要求される。
 ディジタル図書館分野は、多様な情報技術を多様かつ大量の情報資源に適用し、多様な利用者にサービスすることが求められる分野である。また、新しい情報メディアの登場によって新しい利用方法が現れ、それに対応する新しい技術が要求される。このように、新しい情報技術をどんどん実際に応用していくこと、そこからのフィードバックを新たな技術開発に活かすことの求められる分野であると思われる。

 

参考資料

NSFのプロジェクト(DLI他)について

eLib,JISCについて

NSF-EUのDL研究戦略ワーキンググループのレポート

EUの5th Frameworkについて

図書館等におけるディジタル図書館について

メタデータおよびサブジェクトゲートウェイについて

付録1: DLI2で研究助成を受けたプロジェクト
参考資料Edward Fox, Digital Library Initiative (DLI) Projects, ASIS Bulletin, 1999.11より

「UE」と付けたものは学部教育指向のもの

機関・代表者
期間(年)
助成額(千ドル)
題目
スタンフォード大学・Wiederhold
3
520
医療診断や研究で利用されるイメージに関するプライバシやセキュリティのためのイメージフィルタリング技術
アリゾナ大学・Chen
3
500
医学分野の大容量テキストデータの自動分類生成と人手によって作成された分類との間の自動統合化のためのアーキテクチャと関連技術
テキサス大学・Rowe
3
500
高精度X線CTによる脊椎の3次元イメージの提供
タフツ大学・Crane
5
2,760
人文科学分野において学際的に利用できる大規模ディジタル図書館基盤の構築
ワシントン大学・Etzioni
2
600
WWW上の情報資源のための自動化されたリファレンスツールの開発
カリフォルニア大学バークレー校・Wilensky
5
5,000
学術出版のモデルを捉え直して高度な情報の配布・提供のための技術を開発する。
コロンビア大学・McKeown
5
5,000
マルチメディアデータを含む医療情報のためのインターネット環境における個人向け情報アクセス技術の開発
コーネル大学・Lagoze
4
2,270
信頼性,安全性,保存性を提供するアーキテクチャを研究し,それに基づくプロトタイプを開発する。
ハーバード大学・Verba
3
1,800
社会科学分野の数値データを共同利用するための仮想データセンターの実現に向けた様々なツールや環境を構築する。
インディアナ大学・Palakal
3
310
個人向けに情報をフィルタリングし配布する知的システムの開発
ジョンズホプキンス大学・Choudury
3
530
演奏や高機能な検索による電子化した楽譜コレクションの利用性の向上
ケンタッキー大学・Seales
3
500
人文科学分野の貴重資料の補修のための照明技術,領域あるいはデータ依存の格納や高度な検索機能のための意味的モデルの開発
ミシガン州立大学・Kornbluh
5
3,600
記録音声(スピーチ)の検索可能なオンラインデータベースの開発
オレゴン保健科学大学・Gorman
3
650
専門家の情報アクセス過程を参考にした情報資源発見の支援機能の開発。保健管理分野を対象として行う。
ペンシルバニア大学・Buneman
3
500
データの生成・維持過程を扱うことをも含めた新しいデータモデルとその管理機構の開発。
サウスカロライナ大学・Willer
4
1,200
社会・経済学分野の実験,シミュレーションおよびアーカイブのためのソフトウェアとデータのライブラリの開発
スタンフォード大学・Garcia-Molina
5
4,300
不均一な情報とサービス,高性能なフィルタリング機能の不足,利用性に優れたインタフェースの欠如,商取引やプライバシ保護のための機能の欠如といったこれまでのDLにおける障害をできるだけ小さくするための技術開発
カーネギーメロン大学・Wactlar
4
4,000
DLI1におけるInformedia Digital Video Libraryに引き続きビデオ資料の検索と情報発見のための技術を開発する。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校・Smith
5
5,400
Digital Earthメタファーに基づき地理情報に関する様々なデータとそれを扱うサービスのための技術を開発する。
カーネギーメロン大学・Myers
3
450
Video資料を対象とする使いやすいグラフィカルな編集ツール
カリフォルニア大学デービス校・Armistead
3
500
Judeo-Spanishの民話,物語,詩などのマルチメディアコレクションの構築
カリフォルニア大学バークレー校・Agogino
2
400
SMETE libraryのための利用者要求を評価するためのモデルとそれに基づくシステム仕様の開発等(UE)
コロンビア大学・Wittenberg
3
580
地球科学分野の先端的な教育・研究資料等の配布・提供のためのモデルの開発(UE)
ジョージア州立大学・Owen
3
330
グラフィックスと可視化技術の教育資料のコレクションとその利用モデル,利用者コミュニティの開発(UE)
メリーランド大学・Druin
3
610
子供のための教育資料を提供するディジタル図書館のための情報アクセス支援のモデルと技法の開発(UE)
テキサス大学・Kappelman
2
290
動物の骨格の3次元データを提供するlibraryの実現(UE)
オールドドミニオン大学・Maly
1
80
SMETE libraryに向けたツールやプロセスの開発(UE)

 

付録2: Dublin Coreの基本15エレメント
DC1.1に基づく(http://purl.org/dc/documents/doc-dces-19990702.htm)
要素名
identifier
定義および説明
タイトル Title 情報資源に与えられた名前。
作成者 Creator 情報資源の内容の作成に主たる責任を持つ実体。
主題およびキーワード Subject 情報資源の内容のトピック。
内容記述 Description 情報資源の内容の記述。
公開者(出版者) Publisher 情報資源を利用可能にすることに対して責任を持つ実体。
寄与者 Contributor 情報資源の内容への寄与に対して責任を持つ実体。
日付 Date 情報資源のライフサイクルにおける何らかの事象に対して関連付けられた日付。
資源タイプ Type 情報資源の内容の性質もしくはジャンル。
形式 Format 物理的表現形式ないしディジタル形式での表現形式。
資源識別子 Identifier 与えられた環境において一意に定まる情報資源に対する参照。
情報源(出処) Source 現在の情報資源が作り出される源になった情報資源への参照。
言語 Language 当該情報資源の内容の言語。
関係 Relation 関連情報資源への参照。
対象範囲(空間的・時間的) Coverage 情報資源の内容が表す範囲あるいは領域。
権利管理 Rights 情報資源に含まれる,ないしは関わる権利に関する情報。

37

【次へ】