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4.まとめと提言

 情報技術革命は、社会の神経網にあたる技術の革新であり、その影響は全産業におよぶ。そして、さらには、企業活動のみならず、行政や社会活動の細部にまで及ぶといわれている。この革命への迅速かつ適切な対応が、国とその国民の繁栄につながることを疑う者は最早いない。これまで産業の近代化に遅れを取っていた諸国も、この革命を自国を先進国へと跳躍させる好機と捉え、国をあげての情報化ビジョンの策定とその技術開発戦略を展開している。

 情報技術を生み出す資源は鍛えられた人間の頭脳であり、地下に埋蔵された天然資源などではない。ソフトウェアやコンテンツなど、まさに知識が富となる世界である。これまで蓄積された技術なくしてもコンピュータとネットワークがあれば、そこに産業の新天地が開ける。シンガポールやインドなど、これまでの重厚長大といわれる製造業では振るわなかった諸国が国を挙げて情報革命へ取り組み、数学的教育に優れた人材の活用を進め、情報産業の競争力ランキングの上位に登場してきている。

  わが国も情報革命への国をあげての対応を急がなければならない。しかし、現状は「科学技術立国」が叫ばれ、科学技術基本計画が立案され、情報通信分野への国の投資も急増する勢いであるにも拘わらず、情報技術を開発し人材を育むべき、大学や国研が旧態依然たる状況にある。インフラの一部ともいえる国の研究開発の仕組み・制度は、オールド・エコノミー時代の会計制度などの諸規制を引きずっており、未だ改革の手が入っていない。情報技術分野への研究投資を増やしても、この仕組み・制度の改革なくしては、投資効果も半減してしまう。

 今年度の「わが国の研究開発の仕組み・制度のあり方」の調査研究は、この面でのわが国の後進性を改めて浮き彫りにしたといえる。どのような事業を起こすにも、人、物、金といわれるごとく、人材、インフラ、資金が必要である。わが国の大学、国研は、この全部が不足し、その原因を作っているのが、人と金を縛っている会計制度や公務員制度などである。

 わが国のこれら制度は米国に比較して20年以上の遅れをとっている。米国の現在の連邦政府の仕組みができたのは、大恐慌に端を発した行政改革によっているから、そこを基準とするとわが国の諸制度は、もっと遅れていると言えよう。国をあげてのニューエコノミーに対応できる仕組み・制度作りが今こそ求められている。

 本調査研究結果が示唆する仕組み・制度改革は、国の会計制度や公務員制度という、わが国の行政府の根幹に触れる問題であり、省庁のレベルを超えた国を挙げての取り組みが不可欠である。現在、通信や金融などの分野では、これまでのわが国では考えられないような改革がすすめられている。大学や国研は、情報革命を遂行するための原動力となる知識と人材を生み出す場所である。その立て直しは、まさに急務である。 わが国も研究開発プロジェクトの舵取りを、できる限り研究開発の現場にまかせ、さらに予算の使い勝手にしても、米国の制度に見られるように、まず、人材を集めるために使えるようにしなければならない。人件費の間接費分の国の予算への算入などその第一歩であり、早急な改革が望まれる。 米国においては、会計制度などを新技術の研究開発の特質に合わせ進化させてゆく努力をひたむきに実施している。政府の研究開発契約の一般事項に記述されている内容を以下に引用する。

 この規則は、連邦政府が、研究開発契約にあたって、合理的な理由に基づく柔軟性(例:契約者の自発的会計原則変更やFARからの逸脱を認める等)と契約者に対する行政/事務的負荷の最小化(例:民間の会計原則の全面的採用、自社内の会計原則を一貫して使用することを認める等)、を基本精神としていることを示している。 また、先端技術の研究開発の進歩は早く、法・制度は、どうしてもその進歩に遅れを取り、その障害となることが危惧される。 そのような場合には、研究者は、連邦調達規則(FAR:Federal Accounting Regulation)から逸脱することを認めている。

 わが国においても、科学技術立国を国の基本理念とするなら、米国のようなその実現を促進するような仕組みや法・制度を遅滞無く整備してゆくべきである。しかし、わが国の現状を見るに、官学産の改革に向けての足取りはそろわず、ともすれば既得権維持に走り、改革の芽を摘んでしまうことさえ起こり得る状況である。 情報先進国の米国の、技術と共に、このような国民重視の基本理念や合理的な法制度についてもキャッチアップすべきであり、これを2000年代の国家目標として掲げることを提言したい。

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