公共部門、民間部門を問わず、米国政府による情報テクノロジに関する研究開発への投資額は、総じて少なかった。米国内のビジネスは、縮小傾向にあり、競争が激化する環境の中で長期的な研究開発に対して貴重な資源を投じることが少なくなっている。主な努力は、将来性という側面を犠牲にした上で、コストの削減と、新製品の実用化という側面に向けられるようになっている。連邦政府も、研究開発関連の予算縮小という圧力を受け、支援額をわずかに増額したものの、こうした傾向に追従するようになっている。これに応じて、予算当局側も、情報テクノロジに関する長期的な研究よりも、短期的な任務指向型の計画を重視するようになっている。米国政府が主導するハイエンド・コンピューティングを中心とした研究活動も、冷戦時代当時には米国の軍事力を維持する上で不可欠とされたが、この動きもベルリンの壁とともに崩壊した。
この結果、かつては強力なテクノロジの面では他国の追従を許さなかった米国も、現在では、その基盤がしだいに脆弱化しつつある。こうした長期的研究から離れる傾向が続いていくと、これまで情報経済を支える原動力となってきた斬新な発想の流れが勢いを失い、2010年までにはほとんど姿を消すことにもなりかねない。今後、競争力を維持し、米国民にとって重要な問題に対応していくには、ハイテク関連の研究開発を最優先課題として考え直し、将来に向けた明確なプランと強力な展望によって、直面するリスクを回避していかなければならない。今や、こうしたリスクを米国が一手に背負っていくほどの余裕はない。
本報告書で提案した構想は、次世紀における国家の繁栄を維持し、重要な問題に対する斬新な解決策を実現できるように、情報テクノロジに関する連邦政府主導型の長期的な研究開発の重要さを見直すための第一歩のなるものである。今は、まさにアクションを取るべき時機である。連邦政府は、こうした重要な分野における研究活動を支援する上で、特別な役割を果たすものである。Brooks-Sutherlandの報告書には、次のような指摘がある。
「今から10年先の見返りを見越して先行投資している企業はほとんどない。それどころか、技術革新はほとんどの場合、応用面が多様化/複雑化し過ぎていて、エンジニアリングの反復化を適切に行うことはできないため、重要な洞察が「公共化」され、ある企業が単独で研究開発関連の投資を回収しにくくなっている。斬新なアイデアと訓練を積んだ人材を豊富に確保する上で、研究開発に向けた公共投資は、情報産業における雇用や税収の増加、さらなる技術革新、生産性の向上、市民生活の改善といった形で何倍もの見返りがある。こうした投資は、今後米国が競争を維持していく上でも不可欠の要素となる。13
当委員会では、今から30年前には不可能と考えられていた市民生活のあり方に変革をもたらしてきた最先端の構想に関する研究開発の役割について、連邦政府がもう一度、積極的な取り組みを再検討することを強く推奨する。当委員会の推奨案では、基本的に次の2つの点を強調しておく。
今、こうしたステップを踏んでおけば、今後数十年にわたって国家は魅力のある方向に向けて一段と発展することができる。