● この章のポイント
1) IPには4種類あり、それぞれ法的取り扱いが異なる。そのうち政府資金による研究開発プロジェクトから生じるIPは、著作権と特許である。
2) 政府はコントロール力を利用することで、IPを所有することなく将来においてIPが有益に使用されるよう確証する。
3) IPに対する政府の取り扱い方は多様だが、究極的には国益を最優先するという目的で一致している。

IPの法的所有権に加えて、IPの使用をどう管理しアクセスするかについてはさまざまなしくみがある。政府は以下のようにそのコントロール力を使うことで、将来においてIPが有益に使用されることを、IPを所有せずして確証することができる。
政府資金によるプロジェクトから生じたIPの取り扱いに関する政策や実践は、多様を極めており、全体を覆う合意もほとんどない。だが、究極的には国益を最優先で尊重するという目的のもとに政策が解釈されている。だが実践的には、相反する状況間のバランスを取るために政府資金が融通されることが多い。
しかし実際のIPの扱いは、硬直した責任感や財源を得たいなど各省の偏狭な判断に左右されることは少なくない。
● この章のポイント
1) IPの法的取り扱いは、基本的に資金を出す各省庁によって規定される。
2) 政府とIPとの関係は原則としてFederal Acquisition Regulation (FAR) によって規定されている。だが、各省庁がそれと方針を異にした法律を作った場合は、その法律がFARより効力を発揮する。
3) FARは、政府のコントラクターが特許所有を要求する権利を認めているが、さまざまな形式的理由によって例外が設けられている。
4) 著作権は自動的に政府に帰属するとされるが、コントラクターからの要求があれば、政府は著作権を譲与することができる。
5) 殊にソフトウェアの著作権に関しては、明確にFARの規定するところに収まっている。
6) ヨーロッパのIPの基本哲学は(Espritプログラムに関する限り)、コントラクター側にIPの権利が属するものとし、商用化プロセスを遂行できる手に委ねるものとなっている。
IPの法的取り扱いは、基本的に資金を出す各省庁によって規定されている。連邦政府調達によるプロジェクト(1996年度1千975億ドル)を見ると、IPが高い比率で生まれる研究開発は全体の15.8%で、そのうちおよそ半分が契約上は「所有/調達」され、残りは「支援」「協力に関する合意」と位置づけられる。

「所有/調達」「支援/助成金支給」「協力に関する合意」のそれぞれについて、以下のようなポイントが挙げられる。

政府とIPとの関係は原則としてFederal Acquisition Regulation (FAR) によって規定されている。だが、各省庁がそれと方針を異にした法律を作った場合は、その法律がFARより効力を発揮する。
政府からの資金提供を受けたNGOによって開発されたIPのほとんどは、政府による「所有」(すべての調達において行われ、これが全研究開発の約半分をしめる)扱いとなる。FARは、調達と関係省庁によるサービスについて統一した政策を法律化するために設立されたもので、さまざまな条例(例:特許に関するBayh
Dole政策など)の基本となっている。特許に関してFARは、政府のコントラクターがそれを所有を要求する権利を認めているが、さまざまな形式的理由によって例外が設けられている。著作権は自動的に政府に帰属するとされるが、コントラクターからの要求があれば、政府は著作権を譲与することができる。また「政府は、研究開発プロジェクトから生まれた技術を、最大限商用化することを奨励するものとする」(FAR
27.104(a)による)。FAR はさらに、各省庁が独自のFARを規定することを認めており、実際にそれを行う省庁が多いためにIP政策が顕著な多様性を生み出す結果となっている。
特許に関してFARは、政府のコントラクターがそれを所有を要求する権利を認めている(FAR 27.302のコントラクターが所有を要求する権利
)。これは「政府の特許政策に関する大統領覚書」(1983年)と行政指令12591に基づくものである。だがFAR 27.302では同時に、コントラクターが権利を所有しても商用化に結びつかない場合は、政府がそれを阻むことができるとする。
権利所有が認められない例外の形式的な理由としては、次のようなものが挙げられる。

「データ(技術の著作権)」の著作権に関する権利(使用、複製、公開)は自動的に政府に帰属する(FAR 27.404)。そのデータがすでに著作権を含む場合、政府は著作権のライセンスを受ける。しかしコントラクターからの要求があれば、政府は著作権を譲与することができる。だが著作権がコントラクターに譲与された場合も、政府はその使用、複製、公開に関する無制限のライセンスを保有する。
著作権の譲与が認められない例外には、次のような場合が考えられる。
ソフトウェアの著作権は、明確にFARの規定するところに収まっている。1976年の著作権条例(1980年に改訂)により、アメリカではソフトウェアは「文学的」作品とみなされ、その創作時に著作権が発生する(システム、操作方法、プロセスは除外)。
特許によるプロテクションは可能だが、大部分のソフトウェア・プログラムは「新しい」とされないためにこれを取得するのは難しい。政府自体が開発したソフトウェアには、特別は条項がない限り著作権がない。一方、政府資金の提供を受けてコントラクターが開発したソフトウェアには著作権があり、FARによって規定される。また実際には、こうしたソフトウェアは商用化が認められる。だが政府はそのソフトウェアのライセンスを所有して他のコントラクターの使用を認めることが一般的に行われている。その場合は、第二のコントラクターにはオリジナルのかたちでそのソフトウェアを商用化することはできない。

ヨーロッパのIPに対する基本哲学は(Espritプログラムに関する限り)、コントラクター側にIPの権利が属するものとし、商用化プロセスを遂行できる手に委ねるものとなっている。
● この章のポイント
1) 各省庁によってIPの取り扱いの相違は、それぞれの性質と研究目的の違いによって生じるものである。
2) FARは、各省庁が独自のFARを設定することを認めており、実際に大部分の省庁がそうするためIP政策には省庁による大きなバリエーションが見られる。
3) 法律や規制が数多く存在するということは、実際にはIP取り扱いに関しては個々の折衝の余地が大きいことを意味する。
4) IP政策は、各省庁の性質と研究自体の目的の違いによって左右される。
各省庁によってIPの取り扱いの相違は、それぞれの性質と研究目的の違いによって生じるものである。
まず法制化の手続きのちがいが挙げられる。FARは各省庁が独自の規制を設定することを認めているため、それによって生まれたIP政策は多様なバリエーションを見せる。こうしたバリエーションがあるということは、実際にはIP取り扱いには個々の折衝の余地が大きいことを意味している。さらに各省庁の組織的、歴史的な性質も影響を与えているのを確かめることができる。また各省庁による研究の性質、研究目的の違いがIP政策の中核を左右している。
FARは、各省庁が独自のFARを設定し、「法律、行政指令、条約、国際的合意が定める特定の必要性に合致させるために」手続き、条項を適用することを認めている(FAR27.101)。実際に大部分の省庁がそれを行うためIP政策には省庁による大きなバリエーションが見られる。
1997 年度の政府資金提供による研究開発のうち、各省庁によるプロジェクトが占める割合は以下の通りである。

法律や規制が数多く存在するということは、実際にはIP取り扱いに関しては個々の折衝の余地が大きいことを意味している。FARにはロイヤリティの支払い、独占権、出版義務といった項目について明文化されていないため、各省庁は独自のガイドラインを設けてそれを実践しているのが現状である。こうしたプロジェクトごとのアプローチは、最も厳格な省庁においてですら見られることである。
また契約(FAR)か助成金かCRADAかなど、資金提供のメカニズムによっても、規制には大きな相違が見られる。たとえばDARPAには、「その他のR&D取り引き」というカテゴリーがあり、IPの取り扱い条件設定でDARPAが最大にフレキシブルに対応できるようにしている。
各省庁は、その組織的、歴史的な性質によって、強い相違を見せる。
各組織による違いは、下表を参照。

開発に重点を置く省庁の場合は、プロジェクトの成果が商用製品に近いものとなる。その場合、省庁の目的は商用化するのにもっとも適した組織、つまり大抵の場合は民間組織となるが、そうした組織にIPが譲与されることとなる。
他方、基礎研究に重点を置く省庁の場合は、プロジェクトの成果は「基礎的知識」となり、これがさらに新しい研究、あるいは開発に応用されることもある。この場合の省庁の目的は、次のプロジェクトに関わる組織がそのIPに(無料で)アクセスできるようにすることであり、そうするとIPの帰属先として最も適切なのは政府自身となる。
それぞれの省庁による研究の違いは、以下の通りである。

各省庁のIP政策の違いは、その省庁の性質と研究の内容によって左右される。以下に基礎研究/応用研究/開発の軸と、IP政府保有/IPに対して操作的(状況次第)/IP放任主義に対応の軸にしたがったプロジェクトの分布を示した。