ICOT TODAY Issue #8
August 26, 1994
では、みなさんに猛暑データ・クイズを...。(正解はこのメールの最後にあ ります。)
熱帯夜なんて、戦前はほとんど無かったそうです。明治 9年(1876)以降の統計 を見ても、昭和 2年(1927)以前は、年間を通じて熱帯夜ゼロという年が目立ち ます。それが、なんと今年は 7月だけで熱帯夜が 20日間もありました。これ は、統計開始以来の最多記録です。
コンクリートに囲まれた都会で、車の排気ガスや冷房の室外機の熱気などが気 温を上げ、人間が暑い夜をつくり出したのだ... と、気象庁のかたが言ってい ました。
暦の上では、8月 23日は「処暑」。暑さが止み、新涼が間近い日、という意味 だそうです。
では、涼しい頃の話題をひとつ。
前号でもお伝えしました通り、ICOTでは、第五世代コンピュータ・プロジェク トの後を受けて実施している後継プロジェクト 2年間の研究開発成果を皆様に 発表するため、今年の 12月13日〜16日の 4日間、「第五世代コンピュータ国 際シンポジウム 1994」を開催することとし、現在、その準備を進めています。
このシンポジウムは、2年間の後継プロジェクトの成果発表の場であるととも に、ICOT 13年間のしめくくりでもありますので、この最後の機会に、是非と もたくさんの皆様にご参加いただきたいと思っております。
参加ご希望の方は、シンポジウムのご案内記事の最後に付いている参加申込書 に必要事項をご記入の上、電子メールまたは FAXにて ICOT調査国際部宛にお 送り下さい。宛先等の詳細は、ご案内の記事の中でお知らせ致しますので、是 非お読み下さい。
浪越徳子
それでは、ICOT Today 第 8号、最近の ICOT関連ニュースの Headlineからお 伝えします。
と開催してきましたが、この 7/25, 26には、名古屋大学で第 4回目の出張講 習会を行いました。参加者は 46名で、過去 3回の出張講習会同様、熱気あふ れる? 講義&実習だったようです。次回は、9/26(月)、27(火)に神戸大学 での講習会を予定しています。現在開発中の並列版 KLICも ICOT内でのリリー スを始めており、KLIC開発&講師部隊大忙しといったところです。また、並列 版 KLICの、海外・国内メーカの並列マシンへの移植の準備も徐々に進めてい ます。(記事なし)
このお知らせは、以下のような構成になっています。
・第五世代コンピュータ国際シンポジウム 1994の概要
・開催要項(場所、期日等のお知らせ)
・プログラム・参加申込書
・ワークショップのご案内
成果報告会(12/13, 14)およびワークショップ(12/15, 16)への参加ご希望 の方は、本文にある申込書に必要事項をご記入の上、ICOT調査国際部宛てにお 送り下さい(宛先等は本文参照)。また、ワークショップへの論文投稿につい ては、「ワークショップのご案内」をご参照下さい。(記 事 No.8-1)
WWWの浸透をみてもわかるように、アメリカのゴア副大統領が情報スーパーハ イウェイ構想を提唱して以来、ネットワークの発展にも拍車がかかったようで す。ネットワーク関連の国際会議も盛んに行われており、今年の 6月には、プ ラハにおいて、インターネットの年次国際会議である INET'94が開催されまし た。この会議に参加した ICOT研究計画部の赤木三樹也さんに、今回は会議の 内容についてというよりも、プラハの様子などを中心に報告して頂くことにし ました。(記事 No.8-2)
ICOTがこれまで行ってきた共同研究の最後をしめくくるような良い成果をあげ ようと、担当者は今年度も頑張っています。(記事なし)
第五世代コンピュータ国際シンポジウム1994
International Symposium on Fifth Generation Computer Systems 1994 (FGCS '94)
1994年12月13日(火) 〜 16日(金)
[概要]
このシンポジウムでは、第五世代コンピュータ・プロジェクトの後を受けて実 施された2年間の第五世代コンピュ−タの研究基盤化プロジェクトの成果が発 表されます。 第五世代コンピュータ・プロジェクトでは、1,000台規模のプロセッサからな る並列推論マシンPIMを開発し、その上で定理証明システムや遺伝子情報処理 システムなど、数々の知識処理の応用ソフトウェアを試作しました。これらの ソフトウェアの多くは、プロセッサ台数にほぼ比例した高速化を達成し、それ までの知識処理の問題の並列化は困難であるとの常識をくつがえしました。 その後、市場のコンピュータ技術が、並列・分散処理システムに、急速に移行 を開始し、第五世代コンピュータの大規模並列処理技術は、まさに、時代を先 取りしたものとなったわけです。この後継プロジェクトは、このような時代の 変化をとらえ、第五世代コンピュータ・プロジェクトで開発された主要なソフ トウェアを世の中で広く用いられるようになったUnixベースの並列マシン上に 移植し、世界の先端コンピュータ技術開発の技術基盤とすることを目指しまし た。 この目標の達成のために、まず、並列論理型言語KL1やそのソフトウェアの開 発環境が、汎用のUnixマシン上に構築されました。この環境をKLICと呼んでい ます。KLICは、汎用性に富み、Unixベースの並列マシンのほか、Unixワークス テーションやMS-DOSのパソコン上でも動作します。 これを受けて、それまで、並列推論マシンPIMの上でしか稼働しなかった並列 処理や知識処理の応用ソフトウェアをUnixマシン上で動作可能とするための変 更と改良が行われました。これらには、並列定理証明器 MGTP、遺伝子情報処 理システム、法的推論システム Helic-II 、並列データベース管理システム Kappa-P、演繹オブジェクト指向に基づく知識表現言語Quixote、異種分散協調 問題解決系 Heliosなどがあります。これらの応用ソフトウェアは、その機能 が大幅にアップされたり、新たに作り直されたりしました。この国際シンポジ ウムでは、KLICやこれらソフトウェアについての発表が行われます。また、こ れらのソフトウェアは、ICOTフリーソフトウェアとして無償公開され、実際に 皆様にお使い頂けるようになります。 世の中のコンピュータ技術が、並列・分散処理システムの時代に移行している 現在、それを先取りした第五世代コンピュータ技術に関する情報は、これから のコンピュータ技術開発に携わるものにとって、きわめて重要なものとなるで しょう。ぜひ、このシンポジウムに参加し、世の中のいろいろなコンピュータ の上で利用可能となった新たな第五世代コンピュータ技術の情報を入手し、お 役立てください。 このシンポジウムは、三段構えに構成されています。すなわち、第一日目には、 後継プロジェクト全体の概要が発表され、第二日目には、個別テーマの概要が 発表されます。個々の研究テーマの重要課題については、ICOT外部の研究者の 研究発表を交えて、第三日目と四日目に開催される6分野のワークショップで 討論されます。どうぞふるってご参加ください。
[開催要項]
場所:シェーンバッハ・サボー(砂防会館別館) 〒102 東京都千代田区平河町2-7-5 電話: 03-3261-8386 期日:平成6年12月13日(火)〜16日(金) 参加予定人数:500名 会議公用語:12月13日、14日:日本語、英語(同時通訳あり) 12月15日、16日:英語 参加費:ICOT賛助会員:無料 一般: 5,000円 学生: 1,000円 (いずれも予稿集代含) 社交行事:歓迎レセプション 12月13日(火) 18:00 〜 20:00 マツヤサロン 〒102 東京都千代田区平河町2-7-9 全共連ビル6階 電話: 03-3265-3301 主催:(財)新世代コンピュータ技術開発機構 後援:通商産業省(予定)
[プログラム]
成果報告会 -12月13日(火)- [10:00〜12:00]
6月の11日から19日、チェコのプラハで開催されたインターネットのコン ファランスに出席するために出張してきました。丁度夏至に近い時期であり、 緯度が日本より高いため昼間の時間が長いこと...。 チェコでは5月を「花の 月」と呼び、このころ一斉に花が咲くようです。私が訪れた6月にも、名前は わからなかったのですが白い花をつけた木がたくさんありました。その種のよ うな綿毛(ケサランパサランのような)が、風と共に一杯舞っていました。
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インターネットの年次のコンファランスは、アジア、米大陸、ヨーロッパの順 に開催地域を巡ることになっています。94年はヨーロッパ地域の番ですが、プ ラハが歴史的、文化的にヨーロッパの中心的な都市であること、最近のチェコ の自由化後には、西側諸国と呼ばれた先進工業国に、急速に、優等生的に追随 しつつあること、また、チェコ自身、コンピュータネットワークが先端技術の 一環として重要であるという意識が高いことなどから、今回の開催地がプラハ に決まったということです。
チェコ国内にはまだ光ケーブルは全くないので、本格的な高速ネットワークは ないのですが、インターネットのコンファランスでは、会場を充分高速な回線 でネットワーク接続することが呼び物になっていました。会期中だけLondonと New Yorkを 2Mbpsの回線(これは当然地上にケーブルを貼ったのではなく、通 信衛星を使ったもの)で結び、会場には 80台の端末を用意してありました。 チェコの人が、この回線設備をそのまま置いていってくれればいいのだが、と いうようなことを言っていました。
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プラハの町は、よく言われるように古い町並みがよく保存されていますが、そ れでも少し中心をはずれると、最近は建物の上に大きな看板が乗っていたり、 壁に宣伝の文字や絵がペンキで書かれてあったりしていて、かなり様子が変っ てきています。しかし、旧市街といわれる中心部や大統領府になっているプラ ハ城とその周りは、やはり中世の面影というところでしょう。
筆者は7年ほど前にも私費でプラハに来たことがありますが、そのときと較べ ると、市民の表情はやはり明るい感じがします。食料品店前の行列は全く見ら れなかったし、服装も少しよくなったようです。観光客が増えているのと同時 に、以前は表には見えなかった難民のような人やホームレスのような人、その 他怪しげな人もかなり多く、一部の地区は外人観光客には危険な地域なので用 心するようにと、ホテルの滞在案内の中に書いてあります。
まさに注意しなさいと書かれてあった地区を筆者が真昼に散歩していると、筆 者のブレザーの後ろにアイスクリームを付けておいて親切そうに拭こうとする 男がいたので、相手にせずにさっと立ち去った、ということがありました。ま た、会議に来た日本人が、昼間の地下鉄の中で実際に金をむしり取られたなど ということもあったようです。
経済力の違いで、先進諸国から来た人にはひときわ物価が安く感じられます。 ビールは小ジョッキ程度の量が 100円以下で飲め、だいたいプラハと東京との 物価の比は1対4か1対5位でしょう。それで、同じ陸続きの西欧側から大勢 観光客が来ています。特にドイツは隣なので、大型観光バスで次々とドイツ人 が高級ホテルに繰込むという状況でした。プラハの重要な収入源は観光客の落 としていく金でしょうが、そのため、プラハとそれ以外の町や地方との生活レ ベルや物価にはかなり格差があり、地方へ行くともっと物価は安く、生活は質 素なようです。
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チェコというと、クラシック音楽の好きな人にはその関係の見るものや聴くも のがいろいろあります。次にチェコに来たときは行ってみたいと前から思って いたドボジャークの生家を、今回は訪れることができました。その家はプラハ の北 30キロ程の田舎にあります。訪れる人は少なく、その時も他の訪問者は いなかったのですが、その家の番をしているおばーさん(筆者の歳との兼合い で言えばおばさんというべきかもしれません。失礼。)の話によると、そこへ 来るのはドイツ人かフランス人が多く、今年になって日本人が来たのは初めて だということでした。
他に、古い教会の中での室内楽の演奏と国民劇場でのオペラを聴きました。い ずれも演し物は、ドボジャークなどチェコの作曲家のものばかりです。国民劇 場でのオペラは、その前にたまたま知合いになったオーケストラのヴァイオリ ン奏者が招待してくれたものです。この人とは文通をすることになりました。
ネットワークの関係では、ベトナム人の青年と知合いになりました。パーティ で日本人かと思って話しかけたらベトナム人だったというわけです。2人組で、 一人はヴェトナムのホーチミン大学にいて、もう一人はプラハのカレル大学に いるとのことです。ヴェトナムはまだ共産主義ですが、いわゆるドイモイ政策 で、このような所にも来ることができるそうです。
知識欲が盛んというのか、我々日本のことについてなんでも聞いてきます。 Fifth Generation Computerとはどういうものなのかという質問もあったので、 ICOTの英文パンフレットの説明の一部を電子メールで送りました。
ベトナム本国から会議に出てきたという一人は、会議後もしばらくカレル大学 のベトナム人の下宿に滞在していましたが、電子メール環境は与えられず、カ レル大学の友人のアカウントでメールを送ってきました。まだ、ベトナム国内 には電子メールは直接到達できず、どこかに中継してもらうような話です(? まだ試していない)。
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インターネットのコンファランスには、中近東地域を除いて各地から参加者が 積極的に集まってきますが、インターネットの全体組織はまだ最低限のもので、 人はボランティア的に活動しているという感じです。これが漸次インフラスト ラクチャとして必須のものとなってくると、しっかりした組織と、多くの専従 者が必要になってくると思われます。例えば国連の中の1組織となるというこ とも考えられます。また、個々のユーザ/サイトが参加していくためには、積 極的な参加意識やスキルが必要で、それなりの要員と費用を確保しなければな らないでしょう。ICOTはこれらの点でめぐまれていて、比較的早くから関わっ てきており、それが研究にも大いに寄与してきたことを今回のコンファランス に出席してあらためて感じました。
ICOT Todayをお読みいただいたご感想、また、今後はこんな記事を読みたい ! 等の皆さまの声を、是非聞きたいと思っております。 irpr@icot.or.jp 宛に 電子メールにてご意見をお寄せ下さい。お待ちしております。
次号は、以下のような内容を予定しています。
<猛暑データ・クイズの回答>
ICOT TODAY Issue #8 編集・配布 海外渉外広報担当グループ( IR&PR-G ) 内田俊一相場亮成田一夫兼子利夫 浪越徳子仲瀬明彦白井康之田中秀俊 坂田毅 発行1994年 8月 財団法人 新世代コンピュータ技術開発機構 東京都港区三田 1-4-28 三田国際ビル 21F 電話: 03-3456-3195 FAX: 03-3456-3158 e-mail: irpr@icot.or.jp