ICOT TODAY Issue #5

January 31,1994



[目次]





[はじめに]

寒い日が続いていますね。あたたかい布団から離れるのがつらい季節ですが、 この時期、三田国際ビル 21Fの窓辺からは、冬の張りつめた空気の中に凛とそ びえ立つ富士山の美しい姿を眺めることが出来ます。ここのところ毎朝富士山 が見えるので、それが ICOTに来る何よりの楽しみとなっています。

さて、1994年が明けてから、早いものでもうひと月たってしまいました。第五 世代コンピュータ技術の普及を目指して昨年の 4月にスタートした FGCS後継 プロジェクトも、早くも今年は最終年度を迎えます。

FGCSプロジェクトを引き継いで進めてきた研究開発はまとめの時期に入り、ま た、技術の普及という観点からは、来年の 3月で ICOTという母体がなくなっ てしまっても 5Gの技術をより多くの皆さんに研究基盤として使って頂くため にはどうしたらよいか、ということについて考える時期に入ってきています。

技術普及イベントの第一弾として、昨年末は ICOTにおいて KLIC講習会を開催 しました。おかげさまで好評をいただき、東京以外の場所でも開催してほしい という声が聞こえてきています。出張講習会第一回として、3/11, 12 には、 北陸先端大学で KLIC講習会を開催する計画が進んでいます。

また、3月には、海外の共同研究先等とのワークショップも開催する予定です。 現在、3分野におけるワークショップが計画されています。これについては ICOT Today Headline の中でもう少し詳しく紹介したいと思います。将来、5G 技術が市場の技術と融合して花開くために、今年も様々な工夫をして、より広 くより確実な技術の普及を目指して頑張りたいと思っておりますので、皆様か らも、アドバイスをお願い致します。

浪越徳子

それでは、ICOT Today 第 5号、最近の ICOT関連ニュースの Headlineからお 伝えします。


[ICOT HEADLINE]

1. ICOTで KLIC講習会開催

昨年末に行なわれた KLIC講習会は、忙しい時期にもかかわらずたくさんの参 加者にお集まりいただき、おかげさまで盛況でした。今号の ICOT Todayでは、 講習会の参加状況と講習プログラムに加え、受講者の方々に答えていただいた アンケートの結果と、講習を受けての感想文を皆さんにご紹介したいと思いま す。KLIC講習会なんて、本当に役に立つのだろうか ? KL1の知識がなくても大 丈夫だろうか ? などと考えていらっしゃる皆さん、どうぞ読んでみて下さい。 (記事 No.5-2)

2. 遺伝子情報処理って何するの ?

先頃、新潟大学で、条件付きながら国内で初めて遺伝子治療の臨床応用が承認 され、新聞やテレビのニュースを賑わせました。いま話題の遺伝子について、 皆さんはどのくらいご存じですか ? それが情報処理と結び付くと、一体どん なことが出来るのでしょう?

ICOT第 2研究部の石川さんに、「遺伝子情報処理」とは何なのか、遺伝子情報 処理の研究が進むと、私たちの未来はどうなっていくのか、ということを、 ICOTの研究状況を含めてお話しして頂きましょう。(記事 No.5-1)

3. 海外ワークショップの準備が本格化

研究者どうしが個人的にお互いを訪問したり、電子メールを使ってやりとりし たりする機会は多くても、世界中から同じ分野の研究者が集まって顔をみなが ら意見を交換する場をもつことはなかなか難しいと思います。ICOTでは、関連 分野の研究者の方々に多くの交流の場をもって頂き、また、ICOTの研究成果を 世界に普及させることを狙いとして、現在 3つのクローズド・ワークショップ 開催を企画しています。以下に簡単にご紹介致します。

1) 並列論理型プログラミングとそのプログラミング 環境に関するワークショップ

2) 法律の知識表現ワークショップ

3) 有限領域定理証明ワークショップ


[遺伝子情報処理について]

ICOT 第 2研究部 石川 幹人 皆さん、映画「ジュラシック・パーク」をご覧になりましたか。「ジュラシッ ク・パーク」とは、近未来のとある島につくられた、本物の生きた恐竜が棲息 するアドベンチャーランドです。そこを訪れた者は、まるでジュラ紀の地球に タイムスリップした感覚を楽しめます。さて、遺伝子情報処理とは何かといえ ば、「ジュラシック・パーク」のような夢の世界を実現するものといってもい いでしょう。「ジュラシック・パーク」は、遺伝子に関する生化学的実験技術 の進歩と、遺伝子情報を扱うコンピュータ処理技術の発展の賜(たまもの)な のです。

遺伝子は、いわば生命の設計図です。生物はすべて、たった1個の受精卵細胞 が増殖分化し、そのからだが形づくられていきます。遺伝子の設計図は、細胞 の分裂時に次から次へとコピーされて活用されます。ですから、からだ中のど の細胞をとっても基本的に同一の遺伝子情報をもっています。「ジュラシック・ パーク」の中では、樹液に閉じ込められた太古の時代の蚊を掘り出し、その蚊 が吸った血液から恐竜の遺伝子情報を取り出しています。将来、遺伝子の実験 技術が進みますと、そんなことも決して不可能ではないでしょう。

遺伝子情報は、DNA上に4種類の塩基対が長く連なった塩基配列で表現され ています。ヒトの場合ですと、細胞1個に含まれている塩基配列の総長は、な んと30億対にものぼります。現在、ヒトの細胞がもつ全塩基配列を読みとる プロジェクトが、米欧日の協力のもとに進められています。最近の配列決定技 術のめざましい進歩のおかげで、来世紀早々にも、大雑把ながらもその読みと りは達成される見通しです。

塩基配列は単に読みとっただけならば、記号の羅列にすぎません。そこに、生 命の設計図としての意味を見い出さねばなりません。すなわち、どういった記 号部分がどういった機能を反映しているかという複雑な対応関係を調べる必要 があります。つまり、複雑な暗号解読のようなプロセスが要求されるわけです。 それが、まさに遺伝子情報処理です。暗号解読には、塩基配列を大量に蓄えた データベースと、高速で高能率なコンピュータ解析技術が不可欠です。ノイズ の中から意味のある共通したパターンを抽出する技術や、生物学的な知識を解 析に盛り込む技術の開発も望まれています。 ですから、そこは第五世代コン ピュータ技術の活躍の場でもあるわけです。

我々ICOTの研究者もそうですが、ここ数年、多くの計算機科学の研究者が、遺 伝子情報処理の分野に乗り出してきました。この分野の研究は、まだ始まった ばかりですが、このまま研究人口が増えていきますと、来世紀中にも暗号の骨 格部分が判明してくるのではないでしょうか。21世紀の病院では、口の中か らちょっと粘膜を掻きとって機械にかけると、潜在的な病気の可能性と予防法 が打ち出されてくるといった光景が、ごく普通のこととなっているのは、ほぼ 確実です。「ジュラシック・パーク」の中では、欠けていた恐竜の遺伝子情報 は、カエルの遺伝子情報で補われましたが、そうした暗号の編集も少しづつで きるようになるでしょう。

新年ですので、遺伝子に関する科学技術の、もう少し遠い未来を想像してみま しょう。遺伝子の暗号の全貌が把握できれば、生物の設計図を書くCADのよ うなシステムが開発され、有益な生物をある程度自由に設計できるようになる かもしれません。そうすれば、医療だけでなく、人間の生活や産業に与える影 響は大きなものがあります。たとえば、高能率光合成生物がつくれれば、食糧 問題や環境問題の解決に大きな前進が期待できます。

皆さんは、自分で自由に生物が設計できるとなったら、どんな生物を設計した いですか。私は「家の種」とかができるといいなと思っています。CADシス テムに家の面積とか、間取りとかを入力します。すると遺伝子が設計されて、 それが格納された種子が製造されてきます。それを家を建てる地面に埋め、1 か月程たつと、樹木が生えるように設計どうりの家ができるというものです。 家の内側は、代謝反応で四季を通じて一定の温度に保たれます。照明はホタル の発光物質をアレンジしましょう。食事には天井に実る新鮮な果実を食べるの です。。。。

正月の初夢は膨らむ一方ですが、話を現実に戻しましょう。当然ながら、夢の 実現には、多くの研究者の長年にわたる地道な努力が必要なわけです。でも大 きな夢をもつと、研究の面白さも倍増します。我々ICOTのメンバーも微力なが ら、夢をもって頑張っています。

ICOTでは、遺伝子情報処理への並列推論技術の応用を始めて、早くも4年にな ります。これまで、遺伝子の塩基配列から翻訳生成される蛋白質の配列解析や、 蛋白質の立体構造解析、配列データベースの研究を中心に進めて参りました。 最初のうちは生物学的な知識が十分でなく、手探りでしたが、生物学者の方々 にいろいろと教えて頂き、徐々に生物学的に意義のある結果を得られるように なってきました。今では生物学者と共同して、遺伝子部位のシグナル抽出や、 RNAの分子進化などについても研究をしています。

では、今後の遺伝子情報処理の発展の鍵はなんでしょうか。短い経験ではあり ますが、私が重要に感じるのは、やはり計算機科学と生物学の良好な協力関係 です。計算機科学者が最先端の生物学の課題を理解し、生物学者が計算機の性 能と限界を理解するのが肝要です。両者はそれぞれ違った伝統と文化をもって おり、共同で仕事を進めるには難しい面もあります。しかし、そういった困難 を乗り越えていける研究チームから、遺伝子暗号のロゼッタストーンに相当す る発見がなされるに違いありません。

(おわり)


[KLIC講習会 報告]

ICOT 広報・渉外担当グループ 以前より ICOT Todayで皆様に参加を呼びかけていた KLIC講習会ですが、昨年 12月に開催の運びとなり、暮れの忙しい時期にもかかわらず、多くの方々にご 参加いただきました。ここに、その実施状況概要と、参加してくださった方の 感想文を紹介したいと思います。現在開発中の並列版 KLICが完成致しました ら、またこのような講習会を開催したいと思っております。その際は、ICOT Today誌上でご紹介致しますので、どうぞ奮ってご参加下さい。

[INDEX]

  1. 開催日
  2. 場所
  3. プログラム
  4. 参加状況
  5. 参加者アンケート
  6. KLIC講習会参加者の感想文




KLIC講習会 実施状況概要

1. 開催日

第1回平成5年12月16日(木)、17日(金) 第2回12月21日(火)、22日(水)

2. 場所ICOT アネックス会議室

3. プログラム

<第1日> 10:00-10:10オープニングICOT研究所長内田俊一 10:10-12:00KL1入門ICOT第1研究部長近山 隆 13:30-14:00PIMのデモICOT第2研究部戸谷智之 14:00-15:20KLICの使い方(compile & go) 三菱総合研究所関田大吾 15:40-17:00実行機構とトレーサの使い方 ICOT第1研究部仲瀬明彦 <第2日> 10:00-11:10プロセス・ネットワークの組み方 三菱総合研究所中村豪一 11:10-12:00差分リストの使い方 三菱総合研究所森田正雄 13:30-14:40優先度の使い方ICOT第1研究部長代理 藤瀬哲朗 ICOT第1研究部六沢一昭 14:40-15:00総合演習問題の出題同  上 15:20-16:40総合演習同  上 16:40-17:10総合演習問題の解答例同  上 17:10-17:20クロージングICOT研究所長内田俊一

4. 参加状況

第1回(12/16,17)第2回(12/21,22)合計 ------------------------------------------------------- 大学関連191938 国立研究所112 メーカ121527 団体235 ======================================================= 合計343872

5. 参加者アンケート

第1回、第2回とも、参加者全員を対象にアンケート調査を行ないました。 以下に、主な設問と回答を紹介します。 < KLIC 講習会アンケート> 1. 今回の講習会受講前から KL1の言語仕様とプログラミングについて知識は お持ちでしたか。 ・少しは知っていた(22名) ・ひと通りの知識はあった(18名) ・ほとんど何も知らなかった(14名) ・かなりプログラム経験もあった(7名) 2. KL1言語についての講習はわかりやすかったですか。 ・わかりやすかった(35名) ・ややわかりづらかった(19名) ・わかりづらかった(3名) ・簡単過ぎた(3名) 3. 設問 2で「わかりづらかった」または「ややわかりづらかった」とお答えの   方にお聞きします。特にわかりづらかったのはどこでしょうか。  (*回答の中から、複数意見のみご紹介します。以下の設問についても同様です。) ・差分リスト(9名) ・プロセスネットワーク(7名) ・ 2日目の説明がわかりにくかったので、KL1入門にもっと時間を かけてほしかった。(4名) ・プログラムの例題の細かいところまで説明してほしい。(3名) 4. KL1言語について、もっと詳しい説明をお聞きになりたかった部分は   おありですか。 ・言語仕様や組込み述語の一覧と機能(7名) ・プラグマなど並列環境で効果のありそうな部分(4名) ・他の並列論理型言語との比較(3名) ・プログラミングのコツについて(2名) ・UNIX,Cとのリンクについて具体例を説明してほしい。(2名) 5.KLICシステムの使い方についての講習は難しかったですか。 ・わかりやすかった(55名) ・ややわかりづらかった(3名) ・簡単過ぎた(3名) ・わかりづらかった(0名) 6.設問5で「わかりづらかった」または「ややわかりづらかった」とお答えの方に お聞きします。特にわかりづらかったのはどこでしょうか。 ・もう少し詳しい使い方(トレーサなど)を教えてほしい(2名) 7.KLICシステムについて、もっと詳しい説明をお聞きになりたかった部分は ありますか。 ・インプリメンテーションやパフォーマンスの詳細(5名) ・他言語とのインタフェース(3名) ・KL1からCへの変換アルゴリズム等、内部処理の説明(3名) ・KL1のトレースとprologのトレースの違い(2名) 8.演習問題は時間内に解けたでしょうか。 ・一部は解けた(44名) ・ほとんど解けた(11名) ・まったく解けなかった(3名) ・全部解けた(1名) 9.時間内に解けなかった問題について、もっと時間があれば解けたでしょうか。 ・ほとんど解けるだろう(21名) ・一部は解けるだろう(20名) ・全部解けるだろう(12名) ・まったく解けないだろう(2名) 10.特に難しかったのはどの問題ですか。 ・素数関連の問題(6名) ・演習問題8(20,000以下の素数列を生成するプログラム)(5名) ・要求駆動の考え方を必要とする部分(4名) ・演習問題7( 1,000以下の素数列を生成するプログラム)(3名) ・演習問題9( 1,000番目の素数を求めるプログラム)(3名) ・時間が短い(3名) ・すべて(2名) 11.今後KLICをご利用になるおつもりですか。 ・たぶん使うだろう(32名) ・ぜひ使いたい(12名) ・たぶん使わないだろう(9名) ・その他(条件による)(3名) ・まったく使うつもりはない(0名) 12.ご利用を予定の方は、できればご利用の機器・OSを簡単にご記入下さい。 ・Sun (SS10, SS2, etc.) (27名)       [OS] SUN-OS 4.1.2/4.1.3, Solaris 2.2 ・HP (700, 9000, etc.) ( 3名)       [OS] HP-UX 9 ・NEWS (841, 1420, etc.) ( 3名)       [OS] NEWS-OS 4 ・AP1000 ( 2名)       [OS] ? ・IBM-PC ( 2名)       [OS] DOS-V, UNIX ・PC98 ( 1名)       [OS] MS-DOS

6. KLIC講習会参加者の感想文

今回 KLIC講習会に参加して下さった方々の中で、以下の 4名の方に、講習会 を受講して実際に KLICに触れてみた感想を聞かせて頂きました。今回は受講 出来なかった方、また、次回は行ってみたいけれど難しそうだなぁ、などとお 考えの方、どうぞ参考になさって下さい。


「KLIC をさわってみて」

(株)豊田中央研究所
知識情報グループ
高田修

Prolog でESを開発しています。KLIC をさわってみて、一番感激したことは、 適当に (適切よりニュアンスがあっている )並列動作してくれることです。特 に、ストリームやプラグマがいいですね。この辺が並列処理用の C言語や FORTRAN より使えそうなところかな。(私は並列処理言語の素人です )。また、 ESのように scrap & build で開発する場合、KLIC のような記号処理言語が いいですね。今後並列処理の環境が整備されると出番かな。

KLIC は、Prolog と違って入出力変数の区別があり、出力変数には代入みたい なことをします。この辺は少し戸惑ってしまいました。逆に、Prolog を覚え たての頃、代入文が無くて、どういう風に書けばいいのかなと悩んだこともあ りました。そういう意味では、Prolog より、とっつき易いのかな?? 近山部 長の説明でもあったように、やはり Prolog とは別の言語だなということもちょっ と感じました。

講習会の最後にどのくらい理解できたかを試す演習がありました。答を見ずに やってみると全然解けませんでした :-(。演習形式もいいですが、その道の達 人がプログラミング技法をいろいろと紹介してそれをトレースする方法なんか もいいかも知れませんね。でも、せっかく手元に端末があるので自習(自作 ) するのもいいし、この辺なかなか難しいですね。


「KLIC 講習会に参加して」

東京大学工学系大学院
情報工学専攻修士1年
酒井清隆

先日はどうもお世話になりました。そもそも僕が KLIC 講習会に参加しようと 思った動機というのは、僕自身は Fleng という、うちの研究室で設計された、 KL1 と同じ並列論理型言語を使っているのですが、この手の言語に関して詳し く説明したものというのはあまり出されていないので、行ってみれば何かしら 得ることができるのではないかと思ったからです。それで実際にこの講習会に 参加してみると、今までもやもやとしていたものが解消されたりして、非常に ためになりました。その上、この分野で第一線でご活躍している方々の話も聞 けて、行ってよかったと思っています。

ただ、少し不満を言わせてもらいますと、講習会だけでは、多少、消化が不十 分になってしまったところがあって、もう少し時間をかけてもらえるとありが たかったです。

とはいえ、かなり充実したテキストが用意されていましたので、後でそれを使っ て補うことはできましたが。

それでは、ICOT の方々の今後のご活躍をお祈りしています。


「KLIC講習会に参加して」

慶應義塾大学
環境情報学部3年
川端律子

12月初旬に先生にお聞きして、突然参加させて頂くことになった今回の講習 会ですが、とても良い経験をさせて頂きました。初日はKL1入門及びKLI Cシステムの使い方を、2日目は少し進んだプログラミングの技法を懇切丁寧 に教えて頂いて、大変有難く思いました。

2日目の後半は演習問題に取り組んだのですが、このプログラミングに苦労し ました。概念的な話や例題などは理解していたつもりなのですが、いざ実際の 問題でやり方を考えて、そのやり方でプログラムを書いて実行しても、なかな か思うように実行できず、頭の中で考えた事を実際にどのように書いたらいい のかよくわからなくて大変苦労しました。プログラミング言語という観点から は、KL1とPrologは全く異なるにしても、基本的な論理プログラミン グ能力(再帰やリスト表現等)の必要性と自分の基礎力不足を痛感しました。

私はこのような学外の講習会に参加するのは初めてで、ほとんど予備知識もな かったので、とても不安でしたが、今まで聞いたことはあっても具体的にはよ く知らなかった”第五世代コンピュータプロジェクト”についても以前より知 識が増えたし、最新の技術や理論、また、研究者の皆様の情熱や意気込みを感 じることもできて、有意義な2日間でした。これからも頑張っていきたいと思 います。どうも有難うございました。


「KLIC講習会を受講して」

NTT情報通信網研究所
知識処理研究部
知識学習方式研究グループ
春野雅彦

KLIC講習会を受講して関心したのは, テキストが非常によく練られているため 講習全体の話のつながりがとても良かったことです. 1章で KL1言語について の概要が述べられ,その中で優先度などの概念がさりげなく紹介されます.それ 以降の章では 1章で触れられた内容を詳細に説明するという構成になっていて 自然に KL1に馴染めます. 私は GHCは知っていたのですが,この講習会のおか げで頭の中を整理することができましたし,KL1への拡張がどのような意図で行 なわれたのかも良く理解できました. 並列論理型言語というのは馴染み難そ うだと避けてこられた方にはぜひこの講習会をお勧めします. 難しい理屈は抜 きにして, プログラミング言語としての並列論理型言語の面白さが味わえます.

次に, 今後への希望なのですが,ガードにユーザ定義述語が書けないままでプ ログラミング言語として実際の役に立つのだろうかというのは誰もが持つ疑問 だと思います. それを許すと遅くなるのは何となく分かるのですが, インプ リメンテーションの話と絡めて素人にも分かるように解説していただければな お一層良かったと思います.

以上


[Message from Editorial desk]

ICOT Today 第 5号、お楽しみいただけましたでしょうか ?

ICOT Todayをお読みいただいたご感想、また、今後はこんな記事を読みたい ! 等の皆さまの声を、是非聞きたいと思っております。 irpr@icot.or.jp 宛に 電子メールにてご意見をお寄せ下さい。お待ちしております。

次号は、以下のような内容を予定しています。

  1. FGCSサテライト研究グループについて
  2. 海外ワークショップ報告
1994年がスタートし、ICOT Todayの編集も新たな気持ちで頑張っていこうと思っ ております。今年も ICOT Todayをよろしくご愛読下さいませ !! 1994年が皆 様にとりまして良い年でありますようにお祈りしております。


ICOT TODAY	Issue #5
編集・配布海外渉外広報担当グループ(IR&PR-G)
		内田俊一相場亮成田一夫兼子利夫
		浪越徳子仲瀬明彦白井康之田中秀俊
		坂田毅
発行1994年 1月
		財団法人 新世代コンピュータ技術開発機構
		東京都港区三田 1-4-28 三田国際ビル 21F
		電話: 03-3456-3195	FAX: 03-3456-3158
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