ICOT TODAY Issue #4

December 10,1993



[目次]





[はじめに]

ICOTのある三田国際ビルの 1Fに、背の高いクリスマスツリーが 3本、金、銀、 赤のオーナメントをまとって登場しました。足もとにはポインセチアの鉢が飾 られ、もうすっかりクリスマス気分です。気がつけば街もクリスマス一色 !!

最近のクリスマスは、街の飾りつけも段々欧米風になってきていますね。表参 道の並木道のイルミネーションをご覧になったことがありますか ? 通りの両 側に並ぶすべてのケヤキの木に、それぞれの枝の形に沿って灯りがともされ、 さながら光のトンネルのようです。ケヤキの数は 140本をこえ、それを彩る電 球は、全部でなんと 43万個だそうです。

また、ICOTから手の届きそうな距離に見える東京タワーも、クリスマスには特 別にキャンドル風のライティングをするようです。このライティングは クリ スマス・イヴの夜、何時間かだけの演出ということで、今から楽しみです。

一方、オランダやアメリカの一部の都市では、毎年徐々に時期が繰り上がって いるクリスマスの飾りつけや( New Yorkの或る店は、9月末から飾りつけを 始めるそうです !!)、クリスマス本来の趣旨と何の関わりもないパーティーの 大騒ぎや無意味なプレゼント交換に抗議して、

「クリスマスの在り方を見直そう運動」

が行われているそうです。それぞれのクリスマスの過ごし方があっていいです よね。さて、あなたのクリスマスは ??

ICOTでは、12/17に恒例のクリスマス・パーティーを行います。今年は OBの方々 もまじえて、ワイワイ盛り上がることでしょう。また、この日は、ICOT Today でお知らせしてきた KLIC講習会の日でもあります。

KLIC講習会の一日目の夕方には、参加者に講師、ICOT研究員をまじえた懇親会 を開く予定です。ざっくばらんな雰囲気の中で、講習会ではききにくかった質 問をしてみるのもよいと思います。講習に参加されるかたは是非ご出席くださ い。

また、講習会の方も、第 1回目( 12/16, 17)は定員までまだ若干余裕があり ます。(第 2回目は既に定員に達しました。)直前のお申し込みでも受講する ことが出来るかも知れませんので、ご興味のある方は、irpr@icot.or.jp まで 問い合わせてみて下さい。お待ちしております。

浪越徳子


それでは、ICOT Today 第 4号、最近の ICOT関連ニュースの Headlineからお 伝えします。

[ICOT HEADLINE]

1. KLIC第一版、いよいよ IFSとして公開

皆さん、KLIC講習会にお申し込み頂きまして有難うございました。ICOTでは、 逐次型 WS上で稼働する KLIC第一版を、KLIC講習会の開催に合わせて ICOT Free Software (IFS)としてリリースすることが出来るよう手続きを進めてき ました。11月 30日にすべての手続きが完了し、この度、正式に IFSとして公 開出来ることになりました。現在配布のための準備中で、講習会までには実際 に皆さんに使っていただけるようになると思います。 KLIC第一版の内容およ び IFSのアクセス方法は、IFS Newsletter #7の中に書かれています。IFS Newsletter入手希望、また KLIC第一版配布についてのお問い合わせは、 ifs@icot.or.jp 宛にお願い致します。 (記事 なし)

2. 法的推論システムって何でしょう ?

実際の裁判を傍聴した経験がある人は少ないと思いますが、アメリカ映画など では裁判を扱ったものが多いですね。見ていると、検察側、弁護側の、まさに 論理の戦いという感じです。ところで、その複雑な論理の戦いを人間に代わっ てコンピュータがすることが可能だと思いますか ? 「コンピュータ弁護士の 出現を目指して」という副題のもとに、ICOT第 2研究部長の新田さんが、法的 推論システムの研究状況をお話して下さいました。(記事 No.4-1)

3. ILPS '93 報告

バンクーバーに行ったことがありますか ? テレビのコマーシャルを見ていて、 自然が美しいなぁと思うと取材地はバンクーバーだったということが良くあり ます。そんな素晴らしい環境の中で今年の ILPS( International Logic Programming Symposium '93)は行われたそうです。ICOTの六沢さんに、 ILPS'93に参加した感想等を語ってもらいましょう。(記 事 No.4-2)

4. KB&KS '93 で ICOTがデモ出展

KB&KS'93(大規模知識ベースの構築と共有に関する国際会議 1993)が、12/1, 12/2 と京王プラザホテルで行われました。「大規模知識ベースの構築と共有 化」という壮大な目標を目指して 400人の出席者が集まり、発表や討論を行い ました。「アプリケーション開発」と「国際協力」の重要性を叫ぶ声が高かっ たのが印象的です。ICOTは会場に「 IFSコーナー」を設け、IFSの最新カタロ グを配ると共に IFS配布の案内等を行ないました。大変多くの方が感心をもっ て下さり、2日間の会議で 100部以上のカタログを持っていって下さいました。

また、本会議に続いて 12/3, 4 と行なわれたワークショップでは、KLICと Micro Quixoteのデモを行いました。これらは、IFSとして近々公開されますの で、是非アクセスしてみて下さい。 (記事なし)

5. 早稲田大学助教授の上田和紀氏、日本 IBM科学賞を 受賞 !!

日本 IBM科学賞という賞があります。この賞(審査委員長:福井謙一氏)は、 我が国の基礎研究の振興と優れた人材の育成に寄与することを目的として、 1987年に創設されました。受賞対象者は、物理、化学、コンピュータサイエン ス、エレクトロニクスの基礎研究の分野で優れた研究活動を行なっていると認 められた 45歳以下の研究者で、国内の大学あるいは公的研究機関に所属して いることが条件となります。

この栄誉ある賞を、ICOTの卒業生であり、現在早稲田大学助教授の上田和紀さ んが、この度受賞なさいました。今回(第 7回)は、146件の候補の中から選 ばれた 6名 6件(物理、化学各 2件、コンピュータサイエンス、エレクトロニ クス各 1件)の内のひとりとしての受賞です。

上田さんの受賞タイトルは、「並行論理プログラミング言語の研究」で、核言 語 KL1の基盤となった GHCの提案を含む、一連の研究活動に対するものです。

11月 16日(火)に学士会館で行なわれた授賞式において、上田さんは、これ までの研究について、第五世代コンピュータプロジェクトの概要と成果をまじ えながら、5分ほどのプレゼンテーションをなさいました。

今回の受賞について、上田さんはこのようにおっしゃっています。

「授賞式の時プレゼンテーションでも述べたのですが、今回賞をいただけるこ とになったのは、次のような点がよかったのではないかと思います。

(1) GHCが、通常の言語の提案と異なり、既存の言語の概念を整理し、単純化 する方向のものであった。これによって、並行論理プログラミング言語の本質 が明らかになり、並列知識情報処理の研究開発の安定した土台が得られた。

(2) 提案した言語の検討を長年にわたって継続した。また、処理系、応用プロ グラム記述、理論基盤の各周辺分野をバランスよく考慮するように努め、第五 世代プロジェクトの研究開発の接点としての役割を果たせるように留意した。

(3) 並行論理プログラミングの研究の波及効果として、並行処理理論や制約プ ログラミングなど、計算機科学の他分野との関連も出てきた。

(4) 国際交流を心がけた。

(5) 何よりも有難いことに、第五世代プロジェクトの中にあって、核言語を実 装し、また利用してくれる多くの人に恵まれた。

私も4月から大学勤務になりましたが、特に(5)は、本プロジェクトの研究開発 環境ならではの恩恵だったと思います。第五世代プロジェクトを企画・推進し ていただいた方々、ICOTや関連会社で共に研究開発にたずさわった方々に、深 く感謝したいと思います。私も、GHC/KL1を、『21世紀までもつ』言語とすべ く、研究を続けていきたいと考えています。」


[法的推論システムの開発]

-- コンピュータ弁護士の実現を目指して --
ICOT 第 2研究部長 新田克己

1.裁判官は真実を発見する?

あなたは「裁判なんて自分には関係ない」と楽観していませんか。訪問販売や 交通事故やローン返済など、私たちは常にトラブルに巻き込まれる危険があり ます。トラブルが起きてから、「そんな法律があるのを知らなかった」という のは言い訳にはなりません。社会は、みんなが法律を知っていることを前提に 動いているのです。

さて、不幸にも「お金を貸した」「貸さない」という問題で、裁判になってし まったとしましょう。裁判官は「本当に、貸したかどうか」という真実を検証 するため、 証人を捜し出して、正しく判決を下してくれるでしょうか?

答えは No! です。

この場合、裁判官の役割は、真実の発見をすることではなく、原告と被告の双 方の主張に食い違いがあるとき、どちらの主張がもっともらしいかを判断する ことです。従って、反論しなかったことについては、それが真実でなくとも、 事実として受け入れられてしまいます。裁判においては、裁判官の指示を待っ ていては、裁判に勝つことはできません。自分に有利な事実を見つけ、法令文 の有利な解釈を主張して、裁判官を説得することが裁判に勝つ途なのです。

「主張をしなければ勝てない! 大岡裁きは期待できない!」

このような裁判に勝つための論理の構築を支援することが、ICOTの法的推論シ ステムの1つの目標になっています。

2.法律は無矛盾な知識ベース?

法律の条文の多くは、

「 〜 ならば 〜 である 」

という形式で書かれており、ルールに比較的、変換しやすいと言えます。従っ て、世間では、法律のエキスパートシステムは開発が容易だと誤解される方が 多いようです。

事実、1970年ごろから、法律のルール化の試みはたくさん行われてきています。 しかしながら、多くのシステムでは、その実用化は成功しませんでした。その 原因の1つは、法律の条文をそのままルール化しただけでは、

などの問題があるからです。 これは法律の欠陥とは限りません。ルールを抽 象的にしておいて、その時代の社会の要請にあわせて運用を変えていくからこ そ、ルールの安定性が保たれるのです。

しかしながら、これらの問題点があることにより、同じ事実を与えても、解釈 によっては、正反対の結論が導かれてしまうことがあります。その場合、どち らの論理が優先するかを決めるのに、高度な価値判断が必要になります。価値 判断には、社会感情や、慣習や、産業政策などの幅広い知識が考慮されます。

このように考えると、本格的な法律の推論システムを構築するには、法律の条 文だけでなく、社会感情や慣習などの価値判断に関する膨大な知識までも知識 ベース化しなければならないことになってしまいます。これでは、法的推論の コンピュータ化などは、とても不可能でしょう。

しかし、法律には「判例」という頼もしい知識源があります。判例は、過去の 事件で、どのような事実があり、双方がどのような論理を展開し、裁判官がど のように判断したかが、記述されています。状況が似ている事件は似た判断が なされるので、過去の判例を参照することによって、 (i)論理展開の参考にし たり、(ii)相手の出方を予想したり、 (iii)裁判所の判断を予測したりするこ とが可能になります。

従って、判例のデータベースを利用することによって、社会感情などの膨大な 知識の知識ベース化を避けることができるわけです。

3.法的推論=価値判断+論証

不幸にも裁判に巻き込まれたら、法廷で論争に勝たなくてはなりません。法廷 では、自分に有利な論証をするだけでなく、相手の論理を攻撃していかなくて はなりません。

攻撃手段の1つは、「着眼点を替える」などです。法律に限らず、TVの討論番 組などで、「苦しくなると争点をそらす」なんていう場面がよく見られますね。

攻撃手段の2つ目は、 「法令文の解釈を替える」ことです。 解釈には、(i) すでに確立している解釈を引用する場合、(ii)ルールの拡張、縮小、類推、 などで動的に行う場合、(iii)全く新しい理屈を考える場合、などがあって、 法的推論のメカニズムで最も面白いところです。相手が、ある判例を引用して きたときは、「この事件と似ていないじゃないか」と反論することもありえま す。

攻撃の3つ目は、「事実を替える」ことです。新しい証拠を追加することがこ れにあたりますが、タイミングを逃すと、反論しそこなうかもしれません。

これらの論争を聞いて、裁判官はいずれを勝たせるかを決めることになります。 どちらの主張ももっともなこともあり、「両方ともかわいそうだから、どちら も勝たせたい」と裁判官が悩みに悩むこともあります。裁判官の価値観が大き く影響します。

4.HELIC-II の開発

私たちの法的推論システムは HELIC-IIという名前です。 このシステムは、条 文のルールベースと、判例の事例ベースと、2つの推論エンジン(ルールベー ス推論エンジン、事例ベース推論エンジン)と、概念辞書を持ち、入力された 事件に対して、可能な論理展開をすべて生成するものです。

HELIC-IIは「ヘリクツ」と読み、「どんなに苦しい状況でも、何らかの論理を 展開する」という機能と対応させるために、この名を付けました。最近、アメ リカの研究者が、「HELIC-II は double helix(遺伝子の2重らせん構造)か ら名付けたのではないか」と誤解していたことが判明しました。「議論が堂々 めぐりする」「2つの推論エンジンの間をデータが行ったり来たりする」とい うことから、「2重らせん」もなかなか味のあるネーミングではあります。

この研究は、89年度の後半にスタートしました。最初は、事例ベース推論エン ジンだけを持ち、「持病を持っている人が過労死したとき、労災認定されるか」 という問題を扱いました。判例を集めたり、労働省にお話しをうかがったりし て、情報を集めました。判例には、「かわいそうだから労災認定してあげれば いいのに」というケースもたくさんありましたが、認定基準を適用する側(労 働基準監督署)にも、一貫した立場があることもわかりました。

労災問題は、それなりに面白かったのですが、法令文が少なく、法的推論の研 究分野としては、バランスがとれていないと感じました。そこで、91年度に研 究メンバーが交替したのをきっかけに、対象を刑法に移し、ルールベース推論 エンジンを開発し、 新たなシステム作りを行いました。 ICOT内で、一時、 「殴った」「刺した」「麻薬を輸入した」「毒を盛った」などの不穏な言葉が とび交っていたのは、刑法の勉強をしている場なのでした。

刑法システムは予想以上にまとめるのが難しく、渕所長(当時)に披露する前 日に徹夜して、 明け方にやっと動いた、 ということもありました。これを発 展させたのが、FGCS92で発表したHELIC-IIシステムです。このシステムでは、 検察側の判例を引用すると、 きびしい結論 (犯罪名) が生成され、被告側 の判例を引用すると、 甘い結論が生成されます。 このシステムは、 NHKの正 月のニュースでも取り上げられましたが、新年早々、「子供を捨てた」「首を 絞めた」などの物騒な言葉が出てくるので、撮影中、肩身が狭い思いをしまし た。

「だいたい、労災や刑法問題が明るい話題であるはずがない !!」

HELIC-IIで、いくつかの実問題にアタックして、問題が解決できることを示し、 能力の実証を行ってきました。「解いた問題の範囲では、司法試験に挑戦でき るだけの分析がなされているよ」という専門家の評価をいただいたものの、実 用にするには、知識ベースや判例の数はとても足りません。また、多くの問題 を解いてみると、知識表現や推論の問題点が明らかになってきました。そこで、 後継プロジェクトで、研究メンバーが新しくなったのを機会に、これらの問題 点を解消する、より完全な法的推論システムの構築を目指して、研究開発を進 めることにしました。

5.new HELIC-II の目標

新しいシステムには、法律の解釈生成機能と論争機能を持たせることを目標と しています。このシステムは、入力として、事件の概要と論証したい結論を与 えると、その結論を達成するための論理を生成するシステムです。出力された 論理に対して、どのような反論が考えられるかの材料も出力します。

このシステムは、以下の3つの段階で開発を行っています。

(1) 矛盾を含む知識に対処できる新言語の開発:
具体的には、 Quixote, LOGIN, HiLOG などを参考にした、 非単調推論、 型推論、高階の述語表現、類似照合、などを特徴とする論理型言語です。
(2) 法的推論システムの新しい枠組の開発:
論争、価値判断、演繹、類似検索、法令文解釈、などの推論モジュールか らなり、法律の論争の実現手段を一通り備えることになります。また、 刑法 専門用語、判例の記述用語、 一般用語、などの概念辞書を整備します。
(3) 法律のルールや判例の事例の蓄積:
当面は刑法がターゲットですが、次第に民法や、その他の応用問題に取り 組む予定です。
6.研究動向など

さて、法的推論システムの研究を行っているのはICOTだけではありません。文 部省の科学研究費重点領域研究「法律エキスパートシステム」 (明治学院大 学 吉野一教授代表) が本年度からスタートしました。このプロジェクトでは、 法律の先生や情報処理の先生が共同で法律エキスパートシステムを開発するこ とを目指しています。私たちは、このプロジェクトの先生方とも情報交換をし ながら、より洗練された法的推論システムの構築を目指しています。

以上


[ILPS ’93 報告]

ICOT 第 1研究部 六沢一昭

やっぱりサンフランシスコ経由は遠いですね. UA1414はシアトルにも立ち寄 るので, 離着陸を3回に荷物の出し入れと出国入国を2回ずつやって, やっとバ ンクーバに着きました. 海外出張はもう緊張しない相場さん, 久しぶりでやっ ぱり緊張する私に, ICOTの新人, 国際会議は初めてという山内, 和住の両君が メンバです.

International Logic Programming Symposium 1993 (ILPS'93) は10/26(火)か ら29(金)までの4日間, カナダのバンクーバで開かれました(25(月)にレセプショ ン, 29(金),30(土)にワークショップがありました). 最終日に配られた参加 者リストによると, 参加者は200人弱で, 153件から選ばれた32件の論文の発表, 2つの招待講演, 4つのチュートリアル, それにポスターセッションでの50件の 発表がありました.

会場は Coast Plaza Hotel at Stanley Park というホテルで, バンクーバの 西の端の住宅地にあり, 海には近く, ダウンタウンへも歩いて行けるというな かなかよい場所でした. ちょうど紅葉の季節でまわりの並木道がとても美し かったです.

1泊CA$130程度の中級以上のホテルのようで, 設備やフロントの感じもよかっ たし, コンファレンス価格CA$95はとても安かったと思います. 私の場合, 8 階で眺めはよくありませんでしたが(最上階は30階近い), ベッドルーム以外に 台所とリビングの付いたスイートルームだったようで, ここで暮らした8日間 はとても幸せでした.

さて, コンファレンスの方ですが, abstract interpretation と constraint がやたらと目,耳につきました. 発表はやはり理論が主体だったように思いま す. 私が取り組んでいる KLIC処理系のような非常にpracticalな話しはわず かでした. それから応用に関する発表もまるでなかったですね. まともな応 用と言えるのは Ewing Lusk氏(Argonne National Laboratory)等の発表だけで した. 「応用が出てこないとなぁ...」とつくづく思いました.

ILPS'93の発表で最も活発だったのはポスターセッションでしょう. コンファ レンスデスク前の広いスペースにポスターを貼るためのパネルが何枚も立ち, 講演者はそこに立って説明します. ポスターセッション自体は火曜 17:30-19:00と木曜16:30-18:00の1時間半ずつでしたが, ポスター自身は当日 の昼から貼られていてセッションが終ってもそのままになっていました. こ のため, 当日/翌日の昼間もポスターを前にしてディスカッションする光景が けっこう見られました.

普通の発表だと一度に見えるOHPは一枚だけだし, (当たり前のことですが)講 演者がコントロールするので, こっちがもっと長く見たいと思ってもどんどん 先へ進んでいってしまいます. これがポスターセッションだと, 枚数は少な いですが, 全部を一覧できるわけです. これがなかなかわかりやすいんです ね. 自分の意志で後戻りもできますから. それに講演者がすぐ目の前にいる のでディスカッションもやりやすい. 目の前のポスターを指しながら話しの できるのはお互いにうれしいです. 28(木)夜のバンケットでは「ポスターセッ ションがとても活発だったので来年はすべてポスターにしよう」というような スピーチもありました. (^_^)

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バンクーバの中心部は, 太平洋に続く English Bay に突き出した半島で, 先 端(北西端)が Stanley Park という公園になっています. この公園, とても 広くて(面積1,000エーカ)日比谷公園の約25倍もあり, 海沿いに一周すると9km 近くになります. ニューヨークの Central Park をワイルドにしたような感 じでしょうか, 周囲は, 海沿いの散歩道とサイクリングロード,それに半分天 然のプール. 中は, 原生林と池と数々のトレイルがあります. 観光スポット をピンポイントに見て回るのではなく, 特に目的を持たずのんびりと過ごすの が楽しいところです.

28(木)の昼にはこの Stanley Park をジョギングで一周する FunRun というイ ベントが行なわれました. 完走者には ILPS'93 のTシャツがプレゼントされ ます. 因みにこのTシャツ, 最初 1枚 CA$15で売られていたのですが, 最終日 には値下がりして 1枚 CA$10, 2枚では CA$15 になりました. この FunRunに は ICOTを代表して山内, 和住の両君が出場しました. 某A部長代理から「質 問3つと走るのとどっちがいいか」と言われた結果です. 英語で質問するのは 大変なようで頭脳労働ではなく肉体労働を選びました. ふたりとも見事完走 しましたが, だいぶ筋肉を酷使したようで, しばらく筋肉痛に悩まされていた ようです. やはり慣れないことをすると ...

ワークショップも終わった日曜日の昼過ぎに, この Stanley Park にぶらっと 出かけました. ここ2,3日は曇りの日が続いていたのですが, この日は素晴ら しくよく晴れて外にいるだけでうきうきしてしまいます. 住宅地の並木道を 抜けて左へ曲がって海へ出ました. 海辺ってやっぱり気持ちいいですね.

左に海を, 右に森を見ながらしばらく歩きました. 風は少し強めだけどさわ やかです. どこまでも続いてそうな海は太陽の光を反射して輝き, 森は黄色 や赤に色を変えた葉が美しいです.

Third Beach というところから今度は原生林のトレイルに入りました. 森の 中の土の道を歩くのは久しぶりなのでそれだけで楽しいです. 森林浴の気分 かな.

森で出会ったリスとしばらく話しをし, Beaver Lake (池です)で暮れゆく太陽 を眺め, Lost Lagoon (大きな池です)でカナディアンギースの群れに出会い, 夕方過ぎにホテルに戻りました.

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バンクーバには SkyTrain というコンピュータ制御の鉄道が走っています. 線路と車輪がありますが駆動はリニアモータです. ワークショップの終った 30(土)の午後, 鉄道研究会OBのU氏に誘われて終点まで行ってきました.

まず近くのセブンイレブンで DayPassという一日チケットを買いました. こ のチケットで, バス, SkyTrain, SeaBus のすべてに何回でも乗れます. SeaBus というのはフェリーでダウンタウンとノースバンクーバを結んでいま す.

バンクーバのバスのほとんどはトロリーバスです. このトロリーバスに乗っ て WaterFront駅まで行き, そこから SkyTrain に乗る予定でしたが, ちょう ど時間がよかったので SeaBus に乗って対岸のノースバンクーバを往復してか ら SkyTrain に乗り込みました. SeaBus から眺めるノースバンクーバは香港 のようで, ダウンタウンはニューヨークのように見えました(U氏のコメント).

SkyTrain は, 音は静かで, 加速も鋭いけどなめらかで, なかなか快適でした. WaterFront駅付近は地下を走るのですが, 地上に出てからは高いところを走る のと, 線路の両脇に何もないので, 眺めもよかったです. 帰りは途中下車し てカナダ大陸横断鉄道の駅をちょっと見学しました. WaterFront駅もそうで したがこの駅もなかなか立派でした.

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さてさて, 日本人はバンクーバに対して「なかなかよいイメージ」をもってい ると思いますが, 行ってみて「本当によいところ」でした.

サマータイムが終ったばかりの11/1(月)(いったいどこが『サマー』なんだ)バ ンクーバ発6:45のUA404便に乗るべく, もっと居たい/寝たい気持ちでまだまだ 暗い中, ホテルをあとにしました.

(おわり)


[Message from Editorial desk]

以上、ICOT Today 第 4号、お楽しみいただけましたでしょうか ?

ICOT Todayをお読みいただいたご感想、また、今後はこんな記事を読みたい ! 等の皆さまの声を、是非聞きたいと思っております。 irpr@icot.or.jp 宛に 電子メールにてご意見をお寄せ下さい。お待ちしております。

次号は、以下のような内容を予定しています。

  1. 遺伝子情報処理について
  2. KLIC講習会を受講して

早いもので、1993年も終りに近付きました。次号の ICOT Today, Issue #5を 皆様にお届けするのは新年、1月半ば頃の予定です。ちょっと早いですが、皆 様、どうぞ良いお年をお迎え下さい !!


ICOT TODAY	Issue #4
  編集・配布 海外渉外広報担当グループ(IR&PR-G)         内田俊一相場亮成田一夫兼子利夫         浪越徳子仲瀬明彦白井康之田中秀俊         坂田毅 発行1993年 12月         財団法人 新世代コンピュータ技術開発機構         東京都港区三田 1-4-28 三田国際ビル 21F         電話: 03-3456-3195    FAX: 03-3456-3158         e-mail: irpr@icot.or.jp

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