ICOT Today Issue #2

1993年11月4


[目次]


[はじめに]

秋も深まり、紅葉のきれいな季節となりました。ICOT のそばだと、芝公園、 少し足をのばすと広尾の有栖川公園や神宮外苑も美しいですね。東京近郊で完 全に葉が色づくまでにはまだ少し間があるようなので、どこか北の方か山の方 へ遠出したいなぁ、と思う今日この頃です。

さて、FGCS 後継プロジェクトがスタートして 7ヶ月が過ぎました。 ICOT では、研究員はそれぞれの研究テーマごとに合宿を行なったり、大学の 先生方やメーカの研究者の方々とタスクグループなどを通して活発に討論を 行なったりして、研究活動にいそしんでいます。

また、ICOT Today 第 2号でお伝えした「 KLIC講習会」が開催の運びとなり、 いよいよ参加者募集を始めました。募集要領は、予告通りこの ICOT Today第 3号の中でお知らせします。「 KLIC」について広い範囲の方からたくさん問い 合せを頂いているので、参加募集要領を載せた今号の ICOT Today は、いつも 購読頂いている方以外にも配布させて頂くことにしました。今回、初めて ICOT Today を受取られた方のために、ICOT Today および KLICについて、少 し説明したいと思います。

ICOTは、今年の 4月より FGCS後継プロジェクトを開始致しました。このプロ ジェクトの目標である第五世代コンピュータ技術の普及を促進する意味でも、 ICOTの諸研究活動や海外との交流状況、各種イベントなどのニュースを タイムリーに皆さんにお伝えすることが必要だと考え、電子メールで情報を お届けする「 ICOT Today」を発刊しました。この号で第 3号となり、現在 約 250人の方にご購読頂いています。

今回、「 KLIC講習会」の参加募集を ICOT Today 第 3号の誌上で行なうにあ たり、この号に限り配布先を広げました。「 KLIC」とは、ICOTで研究開発し たシステムで、KL1プログラムを C言語に変換する処理系のことです。これに よって今までPIMの上でしか動かなかったプログラムがパソコン上でも使える ようになります。この度、その逐次版が完成し、11月中に ICOT Free Software として公開されることになりました。これに伴い、KLICをより多く の方に使って頂くために、ICOTでは「無料 KLIC講習会」を企画しました。開 催・募集要領および参加申込書は、今号の記事の最初にあります。また、KLIC についての詳細は、ICOT Today 第 2号でKLIC開発部隊のリーダである ICOTの 近山部長からご紹介しましたが、その記事を「 KLIC講習会参加申込書」のあ とにつけますので、ご参照下さい。

KLICの記事だけでなく、その他の記事も是非ご一読下さい ! これを機会に今 後 ICOT Today を購読したいという方、バックナンバーをご希望の方がいらっ しゃいましたら、下記のメールアドレス宛にご連絡をお願いします。

irpr@icot.or.jp

KLIC講習会は定員数が少ないのが難ですが、その分講義と実習をバランス良く とりいれて、中身の濃い講習会にしたいと思っております。皆さん、開催・募 集要領をよくお読みの上、どしどしご応募下さい。担当者一同、お待ちしてお ります。

浪越 徳子


それでは、ICOT Today 第 3号、最近の ICOT関連ニュースの Headlineからお 伝えします。

[ICOT HEADLINE]

1. 無料 KLIC 講習会の参加者募集 !!

今回の「 KLIC講習会」では、2日間連続の講習を 2回行ないます。第 1回が 12/16(木)・ 17(金)、第 2回が 12/21(火)・ 22(水)です。1人 1台の X端末を使用する実習もおり混ぜながら、KLICの使い方を習得して頂きたいと 思っています。詳しい内容と参加申込書は、この下の「 This Issue's Article」の中にあります。 皆様のご応募をお待ちしております !!(記事 No.3-1)

2. 最新 ICOTフリーソフトウェア事情

皆さんご存じのように、ICOTでは、FGCSプロジェクトおよび FGCS後継プロジェ クトで開発したソフトウェアを「 ICOT Free Software( IFS)」として無償 公開しています。KLICもそのひとつとして公開されます。自身の研究の他に、 IFSの担当でもあり、IFS Newsletter を発行している ICOT 第 2研究部の相 場亮氏が、現在公開中のソフトがどこの国からどの程度アクセスされているか 等について、最新の IFS事情を報告致します。(記事 No.3-2)

3. IJCAI'93報告

去る 8月 14日から 20日の 6日間、フランスのシャンベリーで IJCAI'93 が開 催されました。IJCAIは今回で 13回を数え、AIの会議としては最も大きく権威 があることで知られています。研究発表の中身については皆さん色々な学会誌 等でお読みになる機会も多いことと思いますので、ICOT Today では、研究の 堅い話ではなく、研究以外の華やかなイベント等について ICOT第 2研究部の 田中秀俊氏に報告してもらいましょう。(記事 No.3-3)

4. Tony Hoare教授、ICOTを訪問

コンピュータ科学の分野では、手続き型プログラミングに始まり、オブジェク ト指向および並行プログラミングの分野で大きな業績を残し、また最近は並列 論理プログラミングの分野にも興味を広げていらっしゃる オックスフォード 大学教授 C.A.R. Hoare さんが、10月 22日、ICOT を訪問されました。 Hoare さんは、並列定理証明( PTP)タスクグループにおいて、「 Compiler Design by Algebraic Transformation 」というタイトルで講演して下さいました。こ の講演について、もと ICOT の研究担当次長で現在慶應義塾大学教授の古川康 一氏にちょっと伺ってみました。

古川氏によると、Hoare さんの講演は、簡単に言えば、『正しく動くプログラ ムをどうやって作るか』、というお話だそうです。 Requirement, Specification, Program, Machine code, Hardware という過程を経て、やり たいことを実際に計算機で動く形に近付けていく。その際に、代数的な変換を していくというアプローチを Hoareさんは推奨されているということでした。 古川氏に講演の感想を伺ってみましょう。

「 Hoare さんのアプローチは、通常のプログラムを作る場合にはあまり現実 的ではないかも知れません。プログラムのサイズの問題や、代数式を使って要 求を正確に書くのは非常に難しいといった問題がある。ただ、応用分野を並列 アルゴリズムの開発にすると、彼のアプローチは大変有望です。その理由は、

  1. 並列の場合、自然言語では requirement を表現しにくい。
  2. 並列処理だと、人間の直観ではなかなか正しい判断が出来ない。

などですね。最後に Hoare 氏に『並列にもアプライしようとしているか』と 質問をしたら、彼は『 Yes.』と答えていましたね。」 (記事 なし)


[KLIC の講習会と参加者募集のお知らせ]

  ICOT広報・渉外担当グループ

現在、ICOTは、5G技術を既存のコンピュータ技術と融合させ、今後の知識処理 技術開発の研究基盤とするための研究開発を進めております。

この研究開発の主要テーマである「 KLICシステム」の開発も順調で、この度、 逐次版の KLIC が完成致しました。これは 11月中には ICOTフリーソフトウェ アとして公開する予定です。KLICシステムにつきましては、ICOT Today 第 2 号で ICOT 第 2研究部長の近山隆氏から紹介した通りです。

KLIC を広く皆様に使って頂くために、この度 ICOT では「無料 KLIC 講習会」 を企画致しました。講習会の開催要領は下記の通りです。残念ながら会場スペー スの都合上参加していただける方の数に限りがありますので、応募メールの到 着順の参加とさせていただきます。

参加を希望する方は、このお知らせの最後にある申込書に必要事項を記入の上、 e-mail にてお申し込み下さい。(申し込みの受け付けは、e-mail のみです。) 1件のメールにつき参加希望者 1名とします。定員は先着 50名で、定員になり 次第、締め切りとさせていただきます。

申し込み先・問い合せ先のアドレスは、

irpr@icot.or.jp

です。皆さん、奮ってご応募下さい。

応募頂いた方には、ご参加頂けるか否かのお返事をメールにてお送りすること にしております。11月 30日(火)までに返事が届かない場合は、上記アドレ スにお問い合せ下さい。

< 開 催 要 領 >

会場:  ICOTアネックス会議室

日時:  2日間連続の講習会を 同じ内容で 2回行ないます。

     次の日程のどちらかをお選び下さい。

第1回  12月16日(木)・ 17日(金)
第2回  12月21日(火)・ 22日(水)

     ☆昼食は用意しておりません。

定員:  25名×2回

参加費: 無料

対象:  次の条件を満たす技術者、研究者、学生等

1.Unix の利用経験があること
2.プログラミングの経験があること
3.OS, プログラミングについての基礎知識があること

スケジュール(予定):

-------------- 参 加 申 込 書 -------------------






以下は、ICOT Today 第 2号でお伝えした、KLIC 開発チームのリーダ ICOT第 1研究部長 近山隆氏からの、KLIC研究開発状況の最新情報です。今回初めて ICOT Today をお読みになる方は以下の記事をご参照下さい。


[ポータブルな KL1 処理系 KLIC]

  ICOT第1研究部部長 近山 隆

1. KLICの特徴

前号の ICOT Today でもお知らせしましたように, KLIC (クリック) は KL1 プログラムを C 言語にコンパイルすることによって, 従来のように PIM の上 だけではなく, 市場で入手できる Unix ベースの計算機システム上で動作でき るようにしたシステムです. この KLIC によって, 従来 PIM 上で開発してき た KL1 による知識処理のツール類や応用ソフトウェアが, Unix マシン上に簡 単に移植できるようになります.

Unix の標準の言語である C にコンパイルする方式をとったために, C などの 言語で書かれたプログラムと簡単に結合できるのも大きな利点です. たとえ ば, 既存のライブラリ・プログラムを簡単に KL1 から呼び出せます. また, 既に KL1 で書いてあるプログラムの中で, アルゴリズムが簡単で性能への影 響が大きい部分を, 人手で C などで記述し直し, 細部まで最適化することも できます.

逆に, 既存の逐次処理向けに書かれたプログラムを並列化するための道具とし て, KLIC を利用することもできます. C などで記述するとかなり繁雑になる プロセス間通信や同期の処理は KL1 がもっとも得意とするところですから, ずっと簡単に書けます. KLIC をいわば並列処理用の強力なスクリプト言語と して使うわけです.

2. 対象とする計算機システム

当面対象としているのは, Unix をベースにした計算機システムです.

生成する C プログラム・コードでは, 特定の C コンパイラだけが提供するよ うな機能は用いない方針をとっています. これは性能面だけから考えると不 利な点もあるのですが, 移植しやすさを最重視しました. このため, KLIC シ ステムはほとんどの Unix 計算機に問題なく移植できるようになっています.

逐次処理部分についてはパーソナル・コンピュータ上でも動作します. これ までに作った実験版については, PC/AT 互換のノートパソコンなどでも動作を 確認しています.

並列処理も行なえる版では, 以下のようなシステムを対象に考えています.

 ◎ Unix ベースの並列計算機 (共有メモリ, 非共有メモリの両者)

 ◎ ネットワーク接続した Unix 計算機群

並列処理に必要なプロセス間の通信や同期については, 残念ながら効率的な標 準インタフェースがありません. そこで当面は, PVM (Parallel Virtual Machine) というシステム依存部を隠蔽する通信・同期ライブラリ (テネシー 大学, オークリッジ国立研究所, エモリー大学で開発された, フリーソフトウェ ア) を, 共通の基盤として用いる予定です. 将来この PVM の改良や普及の動 向を見ながら, 必要なら移植性と効率の高い他の方法を選ぶ可能性もあります.

3. 処理方式の概略

KL1 から C へのコンパイラが, KL1 プログラムを C プログラムに変換します. 後は普通の Unix 上のプログラムの実行と同じです. C からのコンパイルは 対象システムごとの C コンパイラで行ないます. コンパイル結果は KLIC の 実行時システムや他言語で書いたプログラムなどとリンクして, 実行可能形式 になります.

これまでの記号処理言語 (Lisp や Prolog など ) の処理系では, コンパイラ もデバッガも実行時サポートもすべて含んだシステムがあり, いったんそれを 立ち上げるとすべてその中で作業する方式が良く見られました. このやりか たはソフトウェア開発には便利な面もあるのですが, できあがったソフトウェ アを走らせるだけの場合でも, 使わない機能も含んだ大きなシステムを動かさ ねばならない欠点がありました.

KLIC では実行に必要なプログラムだけをその都度リンクします. たとえば, トレース機能が必要な場合には, トレース機能付の実行時システムをリンクす ればトレース機能が得られます. 多倍長整数を使わないプログラムには, 多 倍長整数のライブラリはリンクされません. このため, プログラムの実行だ けなら, ごく小規模なシステム (たとえば組込み計算機 ) 上でも可能です.

4. 性能

KL1 と C とではプログラム実行のやり方が全く違いますから, C へコンパイ ルするのは直接機械語を生成する方式よりも性能面で不利なのは明らかです. どのハンディキャップをどの程度克服できるかが, KLIC の開発の要点のひと つです.

幸いさまざまな実行方式の工夫によって, 速度面での不利はかなり小さくでき ました. KLIC の実験システムの性能を, もっとも普及した, しかも効率的な Prolog 処理系である SICStus Prolog 2.1 版 (直接機械語を生成するモード でコンパイル ) と同じ計算機ハードウェア (Sparc-10 model 30) 上で比べた 結果は, 以下のようになりました.

プログラムデータ 実行時間比 コードサイズ比
(SICStus/KLIC)(SICStus/KLIC)
nreverse list30 1.77 1.37
qsort list50 2.47 1.17
deriv timse10 2.23 1.79
divide10 2.00 同上
log10 2.72 同上
ops8 2.73 同上
serialize palin25 3.05 1.39
primes 10000 2.31 1.40
tak 8 2.07 0.94

表からわかるように, 速度は KLIC が約 1.8〜3倍速くなっています (KL1 は Prolog より処理が簡単な部分もありますから, 単純には比較できませんが ). オブジェクトコードもほとんどが SICStus Prolog より小さくなっています. しかも, この結果は最適化をあまり行なっていない現在の KLIC についてのも ので, 今後まだ大幅に性能を向上させる余地があると考えています.

なお, 絶対性能としては Sparc-10 model 30 上の naive reverse で約 2 M LIPS を得ています.

5. KLIC システムの公開

KLIC システムを検討するために作った実験的な処理系は, 既に ICOT Free Software の一部として公開されています (KL1-C 変換処理系 実験版 pkl1). この処理系はまだバグも多く機能も限られていますが, どのような変換を行な うのか, どの程度の性能が出るのかなどに興味をお持ちの方には, すぐにお使 いいただけます.

もっと本格的な処理系の公開は, 10 月になる見込みです. 最初の並列動作版 は 94 年 3 月頃の公開を目指しています.

10 月に公開する版では, 以下の機能を提供する予定です.

現在 KL1 から C へのコンパイラは Prolog で記述してあり, 10月の公開はこ の版になる見込みです. これは近々 KL1 自身で記述した版に移行する予定で, その際には KL1 からコンパイルした結果の C のコードで配布することになる でしょう.

その後も, データ型の充実 (多倍長整数, 浮動小数点数 など ) や非同期入出 力などの機能の拡張と, トレーサの機能拡張やプロファイラの導入など, プロ グラム開発環境の充実を順次行なっていきます. また, コンパイル時のプロ グラム解析による最適化を主に, 効率面での改良も進めていく予定です. こ うした改良の結果は, その都度 ICOT Free Software として公開していきたい と考えています.

以上


[最新 ICOTフリーソフトウェア事情]

  ICOT第二研究部 相場 亮

1992年6月1日から5日の日程で、第五世代コンピュータ国際会議、FG CS’92が東京で開かれました。あれからそろそろ1年半が過ぎようとして いますが、その後忙しいこともあってか、私には、あの会議から2、3年もたっ たような気がします。

FGCS’92の直前、私は、自分の発表はもとより、タスクグループの一員 として、当時の田中第六研究室室長を手伝って、ICOT無償公開ソフトウェ アの公開準備に追われていました。ICOT無償公開ソフトウェア(IFS) は、第五世代プロジェクトの中で生み出された多くのソフトウェアを、ICO T外の研究活動に活用して頂くという趣旨で無償公開されることとなったソフ トウェアですが、当時公開されたソフトウェアの多くは並列論理型言語KL1 で書かれており、その実行には並列推論マシンが必要でした。したがって、公 開したとしても、ほとんどの方は、そのプログラムを実行することも出来ず、 眺めるだけといった状況になることは明らかで、公開準備作業で忙しい中、ど の程度コピーしていただけるものかと不安になったのを覚えています。

このとき71本のプログラムが公開され、その後、1993年の「第五世代コ ンピュータに関するシンポジウム」の時点でさらに6本を公開しました。また、 1993年の11月にはさらに7本を追加公開する予定です。

この公開は、原則としてFTPによるネットワーク経由の公開で、広く海外へ も広報したという点で、先駆的なものでした。最初の公開から約1年5ケ月、 当初想像もしていなかった量のソフトウェアが、日本中に、世界中にコピーさ れていきました。この間にIFS公開に関するICOTの体制も、かなりしっ かりしたものになりました。そのおかげで、この文の中に出てくるような統計 情報もとれるようになっています。

最初の公開からこれまでの期間で、IFSへのアクセスは、10月1日付けで 次のようになっています。

IFSに対するすべてのアクセス件数(READMEファイルを含む)
国名 アクセス人数 転送ファイル件数
日本 4132622
アメリカ 3512447
フランス 36 363
ドイツ 61 350
イギリス 61 258
カナダ 50 219
大韓民国 10 182
オーストラリア 43 128
スウェーデン 23 100
オランダ 21 56
その他 *) 164 563
合計 12337288

*) その他に含まれる国は、ポルトガル、オーストリア、南アフリカ、フィン ランド、イタリア、シンガポール、スイス、デンマーク、ノルウェー、ブラジ ル、香港、スペイン、トルコ、ギリシャ、ニュージーランド、ベルギー、台湾、 メキシコ、チェコスロバキア、イスラエル、インド、タイ、ハンガリー、ラト ビア、リトアニア、スロバキア、ベネズエラ、キプロス、スロベニアで、上の 表とも合わせて合計39の国と地域からアクセスを受けています。

このように、1年5ケ月で1,233人がIFSにアクセスをし、計7,288 ファイルが転送されています。ところが、この転送ファイル件数の中には、ど このFTPサイトにもあるような、ディレクトリの構成などを書いたREAD MEファイルもふくまれていますし、READMEファイルだけを転送した人 もアクセス人数に含まれています。したがって、このようなREADMEファ イルにだけアクセスしたケースを除外し、実質的にIFSとして公開されてい るファイルにアクセスした人数と件数は、以下のようになります。

IFSに対する実質アクセス件数(READMEファイルを除く)
国名 アクセス人数 転送ファイル件数
日本 3081375
アメリカ 2041353
フランス 26 216
ドイツ 40 197
大韓民国 139/TH>
カナダ 27 93
スウェーデン 47
ポルトガル 32
オーストラリア 15 23
オーストリア 23
その他 *) 121 306
合計 7703804

このデータによると、IFSにアクセスした人の60%以上が、実際のソフト ウェアの入っているファイルを転送していることが分かりますし、また、転送 されたファイルのおよそ52%が、そうしたソフトウェアのファイルであるこ とが分かります。

実際、転送されたファイルの約半分がソフトウェアのファイルであったことが 分かって、いささか驚いています。自分の経験からも、FTPサイトにアクセ スして、READMEファイルだけ転送し、それっきりになる場合が多かった からです。その分、本当にソフトウェアが必要でアクセスした方が多かったと いうことでしょう。IFS担当としては、ますます責任を感じ、安定した公開 を行わなければならないと考えています。

さて、770人の方は、どのような組織に所属しておられるのかも調べてみま した。といっても実際に学校関係や企業といった種別が電子メールアドレスか ら分かるのは日本とアメリカですので、判明したのは512人分だけです。

種別日本アメリカ
人数ファイル件数人数ファイル件数
学校関係(ac/edu)2531080119665
一般企業(co/com)3824867543
非営利団体(or/org)123271
政府関連(go/gov)65
その他
合計30813752041353

また、どのようなファイルが転送されたかについても統計をとってみました。 全部のソフトウェアについての転送件数をあげると大変なので、上位10ファ イルのみを示します。

登録番号ソフトウェア名称 転送件数
制約論理型言語:cu-Prolog 308
33 形態素辞書 183
10 力学プログラミング: DP 152
43 日本語文生成ツール 122
41 構文解析処理プログラム 118
UNIX 上の KL1 プログラミング環境:PDSS117
34 局所単一化文法:LUG 108
35 制限依存文法: RDG 100
25 前向き推論システム: KORE/IE 89
14 制約論理型言語:CAL (CESP版) 84
合計 3804

どうも、自然言語処理と制約論理型言語が強いようで、その中でPDSSが健 闘しているという状況のようです。PDSSはUNIX上でKL1を実行させ るための環境ですが、これが開発されたのはかなり古く、どちらかといえば、 KL1、というよりもGHCを勉強するための環境という性格が強いように思 います。

この5月には「KL1言語処理方式検討用処理系」(転送件数28)がリリー スされています。これは、KL1をUNIX上で動かすシステムであるKLI Cの開発に向けて、その処理方式を検討するための処理系です。それに続いて、 今回、逐次版のKLICを初めて公開します。

このKLICの公開により、KL1がUNIXマシン上、あるいは、パソコン の上ですら動作可能となりました。このような基幹的システムの公開によって、 さらにIFSへのアクセスは増加するものと思われますし、これまでIFSに アクセスしていない方の中にも、アクセスするようになる方がおられると思い ます。これらの公開済みのプログラムの情報は、「ICOT無償公開ソフトウェ ア一覧」をご欄下さい。これまでに2分冊が発行されていますが、今回の公開 に合わせて、これまでのリストをすべて含んだ新しい版が発行される予定です。

IFSグループでは「IFSニュースレター」を不定期に刊行しています。現 在6号まで出していますが、このニュースレターやICOT無償公開ソフトウェ ア一覧の入手希望を始め、IFSに関するお問い合わせは、下記まで出来るだ けメールでおよせ下さい。

[IFS担当連絡先]

〒108 東京都港区三田 1−4−28
三田国際ビル21階
(財)新世代コンピュータ技術開発機構
ICOT無償公開ソフトウェア担当

ifs@icot.or.jp


[IJCAI 93 報告]

  ICOT第二研究部 田中秀俊

忘れもしない2年前、オーストラリアへICOTから大勢が駆けつけ、ブース を設け、呼び込みをし、デモをし、コアラとたわむれた、あのIJCAIが、 今年はフランスのシャンベリーという場所で開催されました。これからご紹介 するのは、私の目を点にした、8月30日月曜日夜の巨大歓迎パーティです。

著名諸氏の挨拶やら表彰式やら野外立食パーティやらと、まずはごく普通に進 行しました。壇上にはフランス国旗と並んで、次回2年後開催国のカナダの国 旗と、次々回のIJCAI、4年後の日本の国旗とが掲げられるあたり、オリ ンピックの雰囲気を目指さんとしているようです。

そうそう、忘れてはいけません。表彰式で壇上に呼ばれたのは2グループあり まして、どちらも日本人が含まれていました。こんなことを意識するのも、オ リンピック的演出のせいでしょうか。もちろん、ご存じの通り一方はICOT とオーストラリアとの国際共同研究の成果、MGTPのグループです。

挨拶がフランス語の時は、壇上はるか上に設置された電光掲示版に英語の字幕 が流されます。フランス語は数字と英語的な単語しか聞きとれませんが、喋っ ていることと字幕とには随分時間差があったようです。それにしても、バンケッ トスピーチが長いってのは、なぜ万国共通なんでしょうね。

さて、意外に量は足りたしワインも飲めたおいしい野外パーティが終る頃、つ まり午後9時を回ってあたりが暗くなりはじめた頃、それは始まりました。

爆竹が轟いてその炎が赤くあたりの壁を染め、濃い化粧をした男女がサボイの 民族衣装らしきものをまとい、竹馬(足に履くだけのやつ)に乗って、何やら 剣や槍を手に踊りはじめました。パレードの始まりです。

顔に金粉をぬりたくった黒い皮の衣装の一団が、サックスやトロンボーンやら を吹きながら、軽快に野外パーティの会場をねり歩きます。やがて黒色金粉楽 団と竹馬演舞団は町の中心街へと繰り出して行きました。参加者も後に続きま す。爆竹が鳴りサックスが響きわたり、竹馬は飛びはね、走り、槍や剣が悠々 と宙を舞います。あたりは爆竹の煙で白く、炎で赤く染まります。

どうでもいいけど、さすがにAIの学会参加者のパレードだなと思ったのは、 後ろから何やら文法だとか何とかの生成とか、その辺の単語が聞こえてきた時 です。ふりむくと、黒色金粉楽団の曲に合わせて体を動かしながら歩きながら 討論している、言わせてもらえば不気味な二人がいらっしゃいました。

パレードは、街の中心にあるサボイ男爵城まで続きました。黒色金粉楽団は演 奏しつつ途中何度も立ち止まり、ひとしきり演奏を盛り上げ、また歩き始めま す。野外パーティの頃も結構な人数でしたが、そんなもんではすまない人数に 膨れあがってきました。街の一般市民も相当混じったようです。当然ですね。

お城につくと、今度は大花火大会です。空へ飛ぶ花火は音は大きいけれども比 較的あっさり系のものが主体で、五尺玉とかが幾重にも色を重ねていく日本の とはだいぶ趣が違いますが、真下で見る花火ってのはいずれにせよ迫力があり ます。お城には縦横に仕掛け花火が用意されていて、これでもかこれでもかと ばかりにお城を焦がしていきます。窓から花火、軒から花火、空中を張った糸 が燃え、その下でパレードをリードしてきた黒色金粉楽団が演奏高らかに場を 盛り上げます。

そろそろ終るかな、と思うとまた火の手があがる、曲が始まる、といった調子 が何度続いたでしょうか。実はホテルが足りないせいか、学会参加者は、市街 から何キロもはなれたモーテルや隣の町に泊まるはめになっていました。一応 シャトルバスが5コースほど運行していて、これが深夜まで30分おきくらい の間隔だったので便利だったんですが、その終バスがそろそろ気になりだしま す。結局夜中の12時近くまでこの大騒ぎは続きました。

とても学会の参加費だけであの大騒ぎをまかなったとは思えないので、夏の終 わりでちょうどいいと、たまたま市の予算でも出たんだと思うんですが…。4 年後の横浜パシフィコが今から楽しみです。中華街にでも応援頼んで、盛大に 踊って見せてもらえると凄いですね、と無責任に発言しておきたいと思います。


[Message from Editorial desk]

以上、ICOT Today 第 3号、お楽しみいただけましたでしょうか ?

より楽しく、より informative な次号のために、今号の記事、編集等につい ての皆様のご意見、ご感想をお聞かせ下さい。下記アドレスまでお送り下さる ようお願いします。

次号は、以下のような内容を予定しています。

  1. ICOTと大学・メーカとの協力体制について
  2. InfoScience'93 @韓国 報告
  3. 応用ソフトの研究開発状況
ICOT Today, Issue No. 4 は、12月初め頃に発行予定です。ご期待下さい !!


ICOT TODAY Issue #3

編集・配布海外渉外広報担当グループ(IR&PR-G)

        内田俊一相場亮成田一夫兼子利夫
         浪越徳子仲瀬明彦白井康之田中秀俊
        坂田毅

発行1993年 11月
        財団法人 新世代コンピュータ技術開発機構
        東京都港区三田 1-4-28 三田国際ビル 21F
        電話: 03-3456-3195    FAX: 03-3456-3158
        e-mail: irpr@icot.or.jp


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