JIPDEC AITEC NEWS
News on FGCS Technology and related activities by
Research Institute for Advanced Information Technology(AITEC),
the successor of ICOT |
June 11, 1998 |
Issue #16 |
[目次]
短い春が終り、平年より一週間も早く関東地方は梅雨を迎えました。
AITECは新しい年度を迎え、情報技術の動向を追跡する技術調査事業もいろい
ろな新しい概念と遭遇しています。その代表が「デジタルエコノミー」です。
「デジタルエコノミー」の浸透につれ、SOHOビジネスの出現や、オンライン
ショッピングが盛んになるなど、われわれの仕事環境や社会生活に様々な変化
が起こり、それは第2次産業革命とも言うべき大きな社会の変化に発展すると
言われています。それはどのような変化なのでしょうか。みなさんはどうお考
えになりますか。
さて話は変わりますが、念願のワールドカップ初出場を果たした日本のサッカー
チームが活躍する日が真近に迫ってきました。日本代表は、25人の代表候補
メンバーの中から22人の正式メンバーが開会目前にして選ばれました。残念
ながら3人の選手が代表メンバーから外れたのですが、選抜した岡田監督にとっ
ても、難しく厳しい決断だったことでしょう。しかし、チームの目標はただ一
つ、勝つことにあるのです。「選手と会食をすることはない」という岡田監督
は、情に流され、目標を見失うことのないように厳しく生活を律し、自信をもっ
て決断したのだと思います。
岡田監督の決断がどのように効果をもたらすかは、もうすぐ結果となって現れ
ます。いずれにしても、日本代表チームは監督の勇気ある決断に応え、自信を
持って世界に挑んでくれることを祈りたいと思います。
サッカーに限らず、世界を相手に闘うには並大抵の精神力では負けてしまうこ
とでしょう。今日、日本の競争力というものが様々な分野で問われていますが、
どんな分野でも一人一人が自分の意見に自信をもち、責任をもって勇気ある行
動をとることが、国際舞台では必須であり、競争力を強化するための第一歩と
なるのではないでしょうか。
AITECは新年度、新たな努力を重ねさらに成長して、ますます皆様の期待に応
えられるように職員一同はりきっております。どうぞよろしくお願い致します。
今号では、新年度のAITECの活動や平成9年度委託研究成果公開のお知らせな
ど盛り沢山でお送りします。
それでは、AITEC NEWS第16号のHeadlineをお伝えします。
(福嶋真砂代)
1. 平成10年度のAITECの活動について
平成10年度最初のAITECニュースとして、内田研究所長より、AITECの平成9
年度の活動のポイントと、平成10年度の活動計画についてご案内させていた
だきます。是非ご覧ください。
(記事 No. 16-1)
2. 平成9年度委託研究成果の公開始まる。平成10年度は?
平成9年度に大学の研究者にお願いしておりました委託研究の成果であるソフ
トウェアと報告書の公開が始まりました。
平成9年度は初めて海外の大学にも委託研究を実施し、6ヶ国22件の委託研
究をお願いしました。各委託研究の内容や成果については、是非AITECのWWW
ページ、
http://www.icot.or.jp/AITEC/FGCS/funding/itaku-H9-index-J.html
をご覧下さい。
また、平成10年度委託研究の公募開始も間近に迫っています。今年度は、第
五世代普及振興事業も一区切りということで、これまでの委託研究とは内容の
異なるものとなっています。
今回は、平成9年度委託研究成果公開の様子と、平成10年度委託研究の概要
についてお知らせします。
(相場 亮)
(記事 No.16-2)
3. 第五世代プロジェクトで活躍した研究者、国の提案公募型研究でも活躍-その2
ICOT OBの先生方やメーカの研究者の方々、海外の協力者がグループを作り、
競争率の高い国の提案公募型研究支援プログラムにいくつも採択されていると
いうニュースは、AITEC NEWSの第14号でもお知らせしました。
これらの研究には、第五世代プロジェクトで培った研究を基盤として、さらに
発展させる内容のものが多く含まれ、第五世代コンピュータ技術の普及振興事
業を実施しているAITECとしては、大変に嬉しいニュースです。
こうした提案公募型研究の成果が、さらに発展を遂げ、日本の情報技術研究や
産業のレベルアップに貢献することを切に望むところです。
AITEC NEWS No.14では、神戸大学の瀧先生のグループ、岡山県立大学の横田先
生のグループ、東京大学の近山先生のグループ、九州大学の長谷川先生のグルー
プについて紹介しましたが、その後、松下技研株式会社の岡夏樹さんから、ご
連絡を頂きました。
松下技研株式会社の岡夏樹さんのグループが、情報処理振興事業協会(IPA)の
創造的ソフトウェア育成事業において、「多戦略学習によって効率的に構造を
創発するソフトウェアの開発」というテーマで応募して採択。研究期間は平成
8年から9年。
(記事 No.16-3)
これで、現在までにAITECの把握している限りでは、こうした研究グループは
5件となりました。
今回は、岡さんに、研究実施状況や採択されたことについての感想などを書
いて頂きました。
(記事とりまとめ:相場 亮)
4. 平成9年度 AITEC 調査研究 報告書 一覧
AITECは、第五世代技術の普及振興事業、および先端情報技術の調査事業を実
施しています。それぞれの事業では、下記のような調査報告書を発行しており
ます。主要な報告書はWWWにて準備でき次第公開しております。その他の報告
書につきましてはメイルにてお問い合わせください。
1. 第五世代技術の普及振興事業による調査報告書
(a) 新世代知的ソフトウェア資源の創造と共有に関する調査研究報告書
(要旨)
(a-1)と(a-2)の要旨
(a-1) 第1編 知的ソフトウェア資源の実験的研究開発調査研究報告書
(a-2) 第2編 知的ソフトウェア資源の創造と共有のメカニズム調査研
究報告書
(b) 平成9年度知的ソフトウェア委託研究成果報告書
大学へ委託して作成したソフトウェアの概要説明
*(a)はWWWにて公開予定
*(b)はWWWのIFSのページにて仕様書、ソースプログラムを公開予定
2. 先端情報技術の調査事業による調査報告書
(a) わが国が行う情報技術研究開発のあり方に関する調査研究(その2)
(a-1)から(a-5)までの調査概要を含む総集編
(a-1) 米国における情報技術企業のM&A戦略
(a-2) ソフトウェア産業振興のための国の役割(アンケート調査)
(a-3) 米国政府の政府調達にみる中小企業支援制度
(a-4) 米国国立研究所の運営形態と技術移転
(a-5) 欧州の主要情報技術プロジェクト
(b) ペタフロップスマシン技術に関する調査研究Ⅱ
(c) 人間主体の知的情報技術に関する調査研究
*(a)(b)(c)はWWWにて公開予定
(内田 俊一)
(関連記事なし)
1. 平成10年度の開始にあたって
平成10年度になり、早くも2ケ月が過ぎてしまいました。AITEC内は、前年
度の仕事のとりまとめや収支決算が終了し、今年度の仕事の立ち上げで忙しい
毎日を過ごしています。今年度の始まりが特に忙しくなったのには、いくつか
理由があります。
一つは、第五世代技術の普及振興事業が平成10年度で一段落することから、
その業務の中心であった大学への委託によるIFSの改良・拡張プロジェクト
の目的を、これまで作成したソフトウェアの使い勝手向上やドキュメントの品
質向上を行なう"ブラッシュアップ"を中心とするものへと変更しようとして
いるためです。
同時に、第五世代普及振興部が平成10年度末でクローズするため、その後、
IFSの公開や保守、普及活動をどのように継続していくかの検討もしなけれ
ばならず、これがさらに担当者を多忙にしています。この問題に関しましては、
これまで委託研究に参加された先生方のご協力を期待しております。
また、おなじみのKLICコンテストにもっと大勢の人が参加し、初心者の
方にも楽しんでもらえるよう間口を広げるための新ルールを検討して頂いてお
ります。
もちろん、例年同様、平成9年度に大学に委託し開発したソフトウェア(I
FSを拡大したものであるので、通称"拡大IFS"と呼ぶ)をWWW上で公開する
ための作業も行なっています。最近は、並列サーバーの規模拡大や普及
により、並列言語処理系KLICやその他のIFSへのアクセスも順調に増加
しております。
このほか、3年間に渡る拡大IFSのオープンかつコンペティティブな研究
開発の実施によって得たわが国大学におけるソフトウェア開発に関する仕組み
や制度上の問題点や米国との比較などによる分析結果も報告書としてまとめま
した。以上が、第五世代技術の普及振興事業に関連する仕事です。
一方、先端情報技術の調査事業の方も、従来の調査事業の他に、昨年度より
お引き受けしたスーパコンパイラ・テクノロジに関する調査事業の一環として、
6月末に早稲田大学主催でシンポジウムを開くこととしています。AITECは、
その事務局として開催準備に追われています。
また、情報産業の活性化と競争力強化を目指し、わが国の情報技術の研究開
発の仕組みや制度の変革をいかに行なうべきかという調査についても、実質2
年間に渡る調査結果がまとまりました。 日米を比較することにより、研究開
発を開始する上流から、商品化や市場参入といった下流域までにわたり、わが
国が抱える問題点や解決のための提言を報告書としてまとめています。
この調査においては、わが国のソフトウェア産業の抱える問題点を明確化す
るためにアンケート調査を行ない、240社より有効回答をいただきました。
(御協力いただきましたJISAおよびJPSAの皆様に改めてお礼申し上げます。)
その分析結果やそれに基づく提言も報告書に盛り込んでおります. 平成10年
度は、このような分析をもとに、情報産業の強化のためのより具体的な施策や
重点的な開発課題について、さらに調査を進める予定です。
最近、米国が将来の情報化社会のビジョンとして、「ディジタルエコノミー」
という新しい概念を打ち出しました。これは、第二の産業革命と呼ぶべき社会
的な変革をもたらすと予言しています。このような種々の情報技術とその応用
が絡み合って生み出される社会的なインパクトについても、調査分析したいと
考えています。
以上、昨年度の活動のポイントや今年度の活動予定について紹介しました。
上で述べた報告書の代表的なものは、WWWにて公開しております。今年度も
AITECは、従来同様ユニークな活動を目指しております。是非、AITECの活動に
皆様のご参加、ご協力をお願い申し上げます。
(内田 俊一)
2. 平成9年度委託研究成果公開と平成10年度委託研究について
今年も委託研究成果公開の時期となりました。AITECでは平成9年度に大学
の研究者の方々にお願いしていた委託研究成果であるソフトウェアと報告書を
WWWページとFTPサイトを通じ、公開を始めました。
平成9年度は、AITEC NEWS No.14にもあるように、昨年度は大変多くのご応
募を頂き、審査は大変な激戦となりました。その結果、
http://www.icot.or.jp/AITEC/FGCS/funding/itaku-H9-index-J.html
にもあるように、22件の委託研究を6ヶ国の研究者の方々にお願いしていま
した。
この委託研究は、平成10年度で一区切りとなり、平成11年度からはIFS
と、委託研究を通じて研究開発していただいたソフトウェアを、今後とも研究
者や技術者を始めとする多くの方々に使い続けていただくため、公開を引続き
行なうことになります。従いまして、委託研究をお願いするのも平成10年度
が最後となりました。
委託研究など、第五世代技術の普及振興事業の一区切りに伴い、これらを担
当してきた先端情報技術研究所の第五世代普及振興部も平成10年度末をもっ
て解散となります。
平成10年度の委託研究は、このように、年度末で担当の部が解散し、ソフ
トウェアの公開は引続き続行されるということから、これまで研究開発頂いた
ソフトウェアをブラッシュアップ(具体的には、プログラムの操作性の向上、
操作説明書や例題集の拡充、プログラムや用いられたアルゴリズムの解説など)
を中心にお願いすることになります。こうしたことにより、すでに公開してお
りますソフトウェアの使い勝手をより良くし、ソフトウェア資源として広く利
用されるものとしたいというのが、AITECの願いです。
もちろん、これまでに研究開発されたソフトウェアを、新たなアイデアに基
づいて機能向上・改良をしていただくのも歓迎致しますが、基本的にはこれま
でに作成され、公開されたソフトウェアを元に、今後の研究や利用をより容易
にするための改良が中心となります。
このように、平成10年度では、新たなソフトウェアをスクラッチで研究開
発していただくような委託研究ではないこと、そして平成10年度末でこの委
託研究を担当しておりました第五世代普及振興部が解散することから、遅くと
も平成11年3月末には平成10年度成果ソフトウェアを公開する必要があり、
委託研究成果の納入を1月末に早めさせていただきたく存じます。
平成9年度委託研究成果につきましては、残念ながらいくつかのソフトウェ
アがまだ公開に至っておりません。ひとつの大きな要因は、委託研究をお願い
している先が多岐にわたり、様々な環境を使っている関係で、なかなか私共の
ところでの動作確認が難しくなっているということもあげられます。また、少
しでも優れたアイデアを利用し、良いソフトウェアを作りたいとのことから、
あらかじめご連絡頂いた期限から遅れられる方も中にはいらっしゃいます。
その結果、実際に優れたソフトウェアをお収めいただいており、ありがたいの
ですが、平成10年度では、そのようなことになりますと、折角の成果を公開
できないという事態となります。
以上の事情を是非ご理解いただき、平成10年度委託研究に対しましてもご
協力頂きたく、よろしくお願い致します。
(相場 亮)
3. ICOT OBやICOT関係者の提案公募型研究制度での活躍レポート-その2
以前、AITC NEWS No.14でもお伝えしたように、近年、提案公募型の研究制
度が、文部省、通産省、科学技術庁やそれらの関連機関によって、盛んに実施
されるようになりました。これらのオープンかつコンペティティブな提案公募
型の制度は、欧米では古くから普通に行なわれてきたものの、我が国において
このように大規模に実施されるようになったのは最近のことです。
AITECの委託研究も、規模は小さいながら、こうしたオープンかつコンペティ
ティブな提案公募の制度を目指したものですが、これら多くの制度が有機的に
機能し、今後の我が国の研究開発にとって重要な役割を果たしていくものと考
えられます。
ここでは、AITEC NEWS No.14で御紹介した、神戸大学 瀧 和男 先生、岡山
県立大学 横田 一正 先生、東京大学 近山 隆 先生、九州大学 長谷川 隆三
先生に続き、現在松下技研株式会社におられ、以前ICOTに出向しておられた岡
夏樹さんのグループの研究についてご紹介します。
1)松下技研株式会社 岡 夏樹 さんのグループの研究紹介
a) 研究テーマ: 多戦略学習によって効率的に構造を創発するソフトウェアの
開発
b) 研究者 : 岡 夏樹(松下技研(株))、寺野 隆雄(筑波大学)、
沼尾 正行(東京工業大学)、中川 裕志、森 辰則(横浜国立大学)
吉村 宏之(松下電器産業(株))、他 多数
c) 研究期間 : 1996〜1997年度
d) 研究の目標、背景など:
多戦略学習(multistrategy learning)とは、複数の学習・推論・計算
方式を統合した学習アルゴリズムの総称であり、単一戦略の学習方式
の限界を打破し、従来より広い応用範囲を持つことが期待されている。
本プロジェクトでは、参加メンバーそれぞれが得意とする学習技術を
結集することにより、本格的な応用において実際に役立つ機械学習技
術を研究開発・検証することを目指す。応用課題としては、プリント
基板上の部品自動配置、オーサリングシステムにおけるシナリオ自動
作成などを取り上げる。
e) 採択の感想や研究成果など:
機械学習関係のプロジェクトで、これだけまとまった予算がついたの
は、国内では、恐らくこれが初めてだったのではないかと思います。
多様なメンバーからなる刺激的な環境の下で、かなりの人数をかけて
集中的に研究開発を進めることができ、「機械学習が本当に役に立つ
ところを見せよう」という当初の目的も達成することができたと考え
ています。成果の一部はIJCAI-97のAI学術研究展示等でお目にかけま
した。そのほか、人工知能学会の大会等でも発表やデモを行ました。
関連情報につきましては、(まだ整備が不十分ですが)
http://www.mrit.co.jp/proj/muse
などをご覧いただければ幸いです。
(記事とりまとめ:相場 亮)
以上、AITEC NEWS 第16号、いかがでしたか?
今後も AITEC NEWS では、AITEC の周りにある、さまざまな活動や、研究、成果な
どを皆さんに報告していきたいと思います。又、何か「皆さんに知らせた方がいい」
というものなどがありましたら、是非、
aitec-news@icot.or.jp
までお知らせ下さい。また、AITEC NEWS送付不要の方も同様に上記アドレスまで、そ
の旨お知らせ下さい。
では、また近いうちに皆さまにお会いするのを楽しみにしています。(^_^)/
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AITEC NEWS Issue #16
編集・配布 AITEC NEWS編集グループ
佐藤真紀子 高橋千恵 相場 亮 河西和美
武田 浩一 鳥居良春 佐藤 博 内田俊一
発行 1998年6月11日
財団法人 日本情報処理開発協会 先端情報技術研究所
東京都港区芝2丁目3番3号 芝東京海上ビル2F
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