1. 調査の目的と調査企業の概要


1.1 調査の目的と方法

 近年の急速な情報技術の発展は全ての産業の立脚する基盤を変革し、さらにわれわれの社会の構造をも変えようとしている。特に、ソフトウェア技術、及びその担い手であるソフトウェア産業は情報技術の発展の先頭に位置するものとなり、その活性度や国際的な競争力がその他の全産業に大きな影響を及ぼすようになってきた。しかしながら、日本のソフトウェア産業やソフトウェア技術の研究開発は、現在さまざまな問題を抱えており、米欧などとの技術格差が全般的に拡大傾向にあると認識せざるを得ない状況である。

 ソフトウェア産業の各企業における経営努力がまず第一に不可欠であるが、研究開発、環境整備等に関する適切な国の支援も望まれる。最近のソフトウェア技術を中心とする情報技術のめざましい進歩とその急速な社会への浸透や、国際ネットワークの普及によるボーダレス化などを考えると、これらを考慮した技術開発や産業振興策など国の役割を再度検討する時期にきているといえる。

 本調査は、このような状況に鑑み、ソフトウェア産業の国際的競争力の確保を目指し、ソフトウェア技術を中心とする新しい情報技術の研究開発や新しい市場開拓において国の果たすべき役割を見直すための各種基礎データの収集を行うことを目的として実施したものである。

 日本のソフトウェア産業は、7000〜8000社といわれているが、本調査ではその中から特に今後の戦略的な事業分野と考えられるパッケージソフトウェア事業を手掛けていると思われる企業776社を抽出し、調査票を郵送した。その結果、240社から有効回答を得た。

 本報告書は、その調査結果を取りまとめたものである。まず、本章では調査対象の企業のプロフィール、経営状況、経営課題の状況を示す。次に、第2章から第7章までは、下記に示す各調査項目ごとに、結果と考察を示す。

 それらの結果に基づき、最後の章では、示唆される国の役割/政策課題について検討する。

 

1.2 企業規模

 回答企業を規模別に見ると比較的小さい企業が多く、従業員数では50人以下の企業が過半数を占めた。

 また、6割弱の企業は年間売上高が10億円以下である。

 

資本金(N=240)

 

年間売上高(N=240)

 

従業員数(N=240)

 

 

1.3 設立時期と資本系列

 設立時期に関しては、1976年から1985年に設立された企業が最も多いが、60年代に設立された企業から85年以降に設立された企業まで多様である。

 資本系列では独立系が75.4%を占めている。

 

設立時期(N=240)

 

資本系列(N=240)

 

 回答企業の多くは官公庁比率も低く、最大顧客への依存度も比較的少ない。

 

売上高構成の中で最も大きい顧客(親会社等も含む)の売上比率(N=240)

 

売上高構成の中での官公庁自治体等比率(関連行政機関含む)(N=240)

 

1.4 現在の主力事業と今後の注力事業分野

 主力事業に関しては、「受託ソフトウェア開発」が64%と過半数を越えており、続いて「SI事業」(15%)、「パッケージソフト開発事業」(13%)の順となっている。日本におけるソフトウェア企業の多くが受託型のソフトウェア開発を中心に進展し、現在でも受託ソフトウェア開発中心の経営であることがわかる。

 一方、今後最も注力し、伸ばしていきたい事業としては、「パッケージソフト開発事業」が40%で第一位となっている。その後に、「SI事業」(30%)が続いており、「受託ソフトウェア開発」は17%にとどまっている。

 

現在の事業類型(N=240)

 

今後注力したい事業分野(N=240)

 

 現在の主力事業と今後の注力事業分野との関係を見ると、現在最も多い「受託ソフトウェア開発」事業者(154社)の今後の注力分野はおもに3方向に分かれた。受託ソフトウェア開発を継承する会社が36社あるが、SI事業(54社)、パッケージソフト開発事業(52社)に注力しようとする企業が上回っている。経営の高付加価値化に向けて、SIあるいはパッケージのいずれかの事業を拡大しようと企図していることがうかがえる。また、SI事業者(36社)の中でも今後はパッケージソフトに注力しようとする企業が15社ある。

 

現在の主力事業と今後の注力事業分野(N=240)

 

事業推進の今後の方向(N=240)

 

1.5 経営状況

 ソフトウェア業の経営状況は、企業間で格差が大きい。過去3年間の年平均売上高成長率については、5%以上20%未満で全体の約半数となっており、20%以上の成長を続ける企業も15%ある。その一方、マイナス10%を越える企業(7%)を含めマイナス成長の企業は12%に達する。企業規模別に見ると、従業員数51人から300人の企業が比較的成長率が高くなっている。

 

売上高成長率(従業員数別)

 

 利益率は、主力事業によって異なる傾向を示している。情報サービス/VAN事業の収益性が最も高く、パッケージソフト開発事業がそれに続いている。受託ソフト開発、SI等はそれらに比べて収益性が低い。

 

売上高経常利益率(現在の主力事業分野別)

 

 売上高人件費比率は30%未満の企業から、70%以上の企業まで多岐にわたっている。

 

売上高人件費率(N=240)

 

 

1.6 経営課題

 ソフトウェア企業が抱える経営課題としては、「人材の獲得」が62.5%で最も大きな課題だとしている。「新規顧客・市場の拡大」、「生産性向上、開発コストの低減」も4割前後の企業から指摘されている。

 しかし、現在の主力事業別による差異も大きい。「人材の獲得」はSIや受託ソフトウェア開発といった受託型事業において特に重要視されている。一方、パッケージソフト開発型の企業の7割近くが「新規顧客・市場の拡大」を指摘している。また、パッケージソフト開発企業では、「財務体質の改善」に関する意識も高い。 

 

経営課題(現在の主力事業分野別)

 

 経営機能に対する現状の評価では、「経営者のリーダーシップ」、「上級技術者の技術力」に強みがあるとする一方、「市場開拓・マーケティング力」、「人材教育・研修の充実度」が弱いと考えている企業が多い。

 今後重要な経営機能としては、大きな差異が示されなかったが、その結果「市場開拓・マーケティング力」、「財務面の体力」等の現状評価との乖離が大きく、今後の重要な課題といえる。

 

経営機能に対する評価と今後重視する機能(N=240)

 

 

 経営課題を達成するための手段として、「業歴者の採用増」、「能力給・年俸制の導入」が2〜3割の企業で実施されている。それらに続き「販売網の拡大」、「他社との共同開発」が計画・検討されつつある。

 

経営課題を達成するための手段(N=240)