はじめに

本調査の背景と問題認識

 特許、著作権、ノウハウといった知的財産権(IPR)が一国の産業全体に大きなインパクトを与えるようになった。特に米国は情報技術/インターネット及びバイオテクノロジー関連のIPRを国際的比較優位の源泉、通商の切り札として最重要視しており、「技術貿易中心の時代」を自ら創出し、制覇しようとしている。そこで米国は、他国に先駆けて上記戦略分野における中長期的研究開発を支援、先端的知的財産の先行的形成を進めると共に、国家戦略としてのプロパテント政策に基づき、IPRの先行的取得・蓄積を進めている。さらにはそれらIPRの積極的商業化を通じた経済的価値への転換、国富の増大を企図している。こうしたIPR政策の背景には、国の支援によって創出されたIPRを、積極的に民間の手に委ね、市場原理に基づいてその商業化の果実を最大化しようとする価値観が存在しているように思われる。
 このような問題認識に立脚し、本調査では米国政府が支援する研究開発プロジェクトによるIPR創出、取得、管理、商業化のルール、現実の成果等について、実態を調査する。特に、IPRの国から民間への移転を促進してきた具体的施策、その効果、そして国家予算によって私企業の発展を支える同政策の思想的背景などを調査の焦点とする。
 本調査は、当研究所の研究員や外部の有識者とMUSE Associatesの研究員による議論を通じて、以下の諸点にポイントを置いて調査を行うこととし、具体的な調査は、MUSE Associatesが実施した。

1.IPR創出のメカニズム:

2.IPRの帰属と取得のスキーム:

3.IPRの創出状況

4.IPRの商業化メカニズム

5.IPR商業化の経済効果

6.思想的背景

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