はじめに

 

ソフトウェア技術分野で実施されている我が国の研究開発プロジェクトは最近になって特に量的に充実してきており、それらは基礎研究的な性格が支配的であるものから産業への応用を直接的な目標にしたものまで幅広いスペクトル上に分布している。こうしたプロジェクトの成果はそれぞれの性格に応じて適切に産業界で活用されることが期待される。例えば、基礎研究を対象にしたプロジェクトの成果を直ちに産業への応用に結びつけることには無理があるものの、幾ばくかの時間をおいて新たな産業創造の萌芽に成長することが俟たれるし、基本特許取得などを通じて我が国の情報技術分野の競争力強化に寄与するような局面もあり得る。さらに、産業応用を目指したプロジェクトはそもそもの目的がその成果の普及によって情報産業の規模を拡大し活性化を実現することが直接的な狙いである。したがって、国のプロジェクトの成果を元に企業内部での商品化への発展や国際的なデファクトスタンダード化などの道につながることが望まれる。

 

  しかし、我が国のソフトウェア技術分野のプロジェクトの成果が産業的な観点で十分に有効活用されているか否かに関しては、総じて改善の余地を無しとしない。改善策の対象には様々な要因があると考えられるが、その一つとして国のプロジェクトで生じた知的財産権(以下、Intellectual Property Right、IPRと言う)の扱いが挙げられる。従来の国のプロジェクトでは、そこで生じたIPRは基本的に国に属すると規定されていることが多く、企業がその成果を活用するためには事務手続き上の問題やロイヤリティ支払いの必要性などのいくつかの壁があった。最近の大きな流れとしては国のプロジェクトのIPRを受託企業にも何らかの形で認め活用の可能性を大きくする方向に動いているが、今後プロジェクト成果の有効活用を一層促進するためには、国の資金活用上の制約、ソフトウェア技術の特殊性、さらにプロジェクト参画機関による展開の容易さなどを勘案した適切なIPR政策の確立が求められている。

 

  本調査では、国のプロジェクトで生じたIPRの扱いが、成果を普及させると言う観点でどのような課題を抱えているか、またその解決のための方策は何か、などを調査してまとめている。調査は、各種プロジェクトの公募要領や成果報告書を始めとして公開されている各種資料および国のソフトウェア技術分野のプロジェクトに何らかの形で関わってこられた関係者の方々に対するヒアリングに基づいている。