


ライス大学のKen Kennedy教授と、サンマイクロシステム社のBill Joy研究開発担当副社長を共同委員長とする大統領直属情報テクノロジ諮問委員会(PITAC:President's Information Technology Advisory Committee)は、1999年2月24日に、大統領向け最終報告(Final Report to The President)を出した。この報告書には、以下の手紙が添えられてあった。
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アメリカ合衆国大統領閣下: 当委員会では、情報テクノロジに関する研究開発活動に向けた連邦政府の支援を中心に最終報告として"Information Technology Research: Investing in Our Future"(情報テクノロジに関する調査報告:将来に向けた投資)を取りまとめました。 ここでは、中間報告で取り上げた推奨案を強調する方向で、特に社会面/経済面を研究活動が情報テクノロジにもたらす影響の重大さについて具体的に検証しています。 当委員会のメンバーは一同に、"Information Technology for Twenty-First Century(IT2)"構想に対する政府支援に深い感銘を受けています。この構想はまさに、情報テクノロジに関連した長期的でハイリスクの研究開発を強化していく上で重要な第一歩となるものです。 21世紀を迎えるにあたり、適切な研究開発活動を通じて情報テクノロジがもたらす機会を的確に捉えていく際に、連邦政府の支援の拡大は不可欠です。情報テクノロジが持つ経済的/戦略的な意義を理解し、連邦政府が情報テクノロジ関連の研究を支援する役割が明確化されて初めて、将来的な国家の繁栄を維持していく際に必要な連邦政府による財政支援の拡充が可能になります。 当委員会の推奨案が、今後の連邦政府の財政支援に関する検討に貢献することを大いに期待します。これまで私たちの活動をご支援いただきまして誠にありがとうございます。当委員会では、大統領閣下をはじめ、当局、議会の皆様方と、本報告書について詳しく検討できることを期待しております。 敬具 |
IT2 構想は、Ken Kennedy教授をはじめとするPITACの答申をベースに、米国政府が21世紀に向かって、どのように情報産業を発展させようと考えているかを示す構想で、2004年まで、毎年 数十億ドル(約 数千億円)ベースで継続するプロジェクトである
2000年度予算の一部として、クリントン大統領とゴア副大統領は、$366million(約440億円)の情報技術研究計画を提案した。これにより、情報技術研究への米国政府の投資は28パーセント増加する。
この情報技術研究計画はIT2 構想と呼ばれ、コンピューティング分野と通信分野のこれまでの計画を基にしている。既存の計画には、HPCC (High Performance Computing and Communications) 計画や、1998年に認可されたNGI (Next Generation Internet) 計画、DOE (エネルギー省、Department of Energy)のASCI (Accelerated Strategic Computing Initiative)などがある。

また、増額された$366million(約440億円)の内訳は、以下の通りである。

DoD (国防総省、Department of Defense)、
DOE(エネルギー省、Department of Energy)、
NASA (米国航空宇宙局、National Aeronautics and Space Administration)、
NIH (米国国立衛生研究所、National Institutes of Health)、
NOAA (米国海洋大気局、National Oceanic and Atmospheric Administration)
NSF (全米科学財団、National Science Foundation)
DoDはDARPA (米国防総省高等研究計画局、Defense Advanced Research Projects Agency)を含む。
資金の約60パーセントは大学をベースにした研究の支援に当てられ、これによって高度の情報技術スキルを持った労働者に対する需要の増大を喚起する。


1. ソフトウェア
ソフトウェア研究は、PITACが最高の優先順位を付けた基礎研究分野である。デスクトップ・コンピュータから電話網、株式市場に至るまで、米国の経済と社会はソフトウェアへの依存の度合いを高めてきた。ソフトウェアの小さな欠陥が米国の電話網の大部分を停止させた事件や、「2000年問題」は、どんな問題が起こり得るかを示す重要な例にすぎない。連邦政府の資金提供を受けたR&Dが、生産性・信頼性が高く使いやすいソフトウェアの作成に役立つ可能性がある研究分野を示す。
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テーマ |
内容 |
| ソフトウェア工学 |
数百万行のコードから成る複雑なソフトウェア・システムについては、どうやって設計しテストすればいいか、現在のところ分かっていない。この分野の研究は、ソフトウェアの生産性・信頼性・保守性を高め、エラーを自動的に検出する可能性がある。 安全で信頼性の高いシステムを構築するために、現在費やされているコストと時間を削減するための研究が必要である。安全性と信頼性の進歩は、通信ネットワークや医療機器、送電網、航空管制システムなどのシステムにとって、特に重要である。 |
| エンドユーザ・プログラミング |
プログラマ不足を解消する一つの方法は、プログラミング経験がほとんどあるいはまったくないユーザでも、プログラミングができるように簡単にすることである。 この一例として、表計算あげられる。表計算を使うとビジネスや財務のアナリストは、以前はカスタム・プログラムが必要だった数値操作や「こうしたらどうなるか」という仮定のシナリオの検討を行えるようになる。 このようなエンドユーザ・プログラミングを普及させるには、インテリジェント・テンプレートや領域固有言語、プログラミング・バイ・エグザンプル(例示照会プログラミング)などの分野での進歩が必要になる。 |
| コンポーネント方式のソフトウェアの開発 |
ソフトウェア産業は、製造部門で使われている交換可能なパーツに相当するものを欠いている。 適切なソフトウェア・コンポーネントを見つけ出しやすくしたり、ソフトウェア・コンポーネントから組み立てられたソフトウェア・システムの動作を正確に予想したり、さらにはソフトウェア・コンポーネントの電子市場を支援するために、ソフトウェアの開発方法に関する研究が必要とされる。 |
| アクティブ・ソフトウェア | インターネットからダウンロード可能な「アプレット」はアクティブ・ソフトウェアに向けての第一歩だが、これは始まりにすぎない。アクティブ・ソフトウェアは最終的には、自分自身をアップデートしたり、特定の目標実現へ向けての進行状況を監視したり、実行中の作業に必要な新しい機能を発見したり、その作業の遂行に必要なソフトウェア部分を安全かつ確実にダウンロードしたりできるようになる。 |
| 自律型ソフトウェア | この分野の研究により、インテリジェント・ソフトウェアやインテリジェント・ロボットが増える可能性がある。無人車両があれば、わが国の軍隊は安全な場所から出ずにすむようになる。「インテリジェント・エージェント」すなわち「ノウボット(knowbot)」は、われわれの代わりにインターネット上での検索を行う。ロボットとノウボットは、計画を立てたり、不測の変化に適切に対応したり、人間や他のロボットと協力したりすることができる。自動走行したり、衝突を自動的に避ける車も出現する。ロボットは、宇宙探査(たとえば、VoyagerやDeep Space 1)や人間にとって移動に危険を伴う地球上の場所での探査にも利用できる。 |
2. 人間-コンピュータ間のインタラクションと情報管理
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テーマ |
内容 |
| 人間の言語を話し、聞き取り、理解するコンピュータ |
現在、コンピュータを所有する米国の世帯の割合は40パーセントを超えている。しかし、ほとんどの米国人にとってはコンピュータの使用は相変わらず難しい。 調査によれば、ユーザはコンピュータが何をしているかを理解できないために、12パーセント以上の時間を無駄に費やしている。 人間とコンピュータの間のインタフェースが改善されれば、多くの米国人にとってコンピュータは使いやすく楽しいものとなり、生産性の向上がもたらされるだろう。 現在はWIMP (windows, icons, mouse, pointer)インタフェースに限定されているが、理想を言えばコンピュータと会話できるようになることが望ましい。コンピュータの話す言葉を分かりやすくしたり、音声認識の精度を高めたり、ユーザの発言内容を確認するための質問を出す能力をコンピュータに与えたりするために、研究が必要である。この機能は、キーボードにアクセスできない人(たとえば、移動する職業や医師)や、視覚障害者、キーボードを使えない障害者にとって、特に便利である。 言語間の同時翻訳もできるようになるだろう。たとえば、電話での会話をリアルタイムで翻訳したり、外国のデータベースを現地の言葉で正確に検索したりすることが可能になる。地球規模のエレクトロニック・コマースや国際的な共同研究は、巨大な利益を生む可能性がある。この技術をロボット・エクステンダと組み合わせれば、人間の生産性は想像をはるかに超えたレベルまで高まるだろう。 |
| 情報の視覚化 |
現在、コンピュータ・ユーザは、複雑化な現象を理解しようと努めている。たとえば、長期的気候予測を行おうとする科学者は、ジェット気流、積雪と雲量、大気中の二酸化炭素、海洋循環の変化などの数百の現象に関するデータを解析しなければならない。 膨大な量のデータを調べたり、理解したり、操作したりするための能力が改善されない限り、科学と工学の最重要課題について、それらと取り組むわれわれの能力は制限されてしまう。 |
3. スケーラブルな情報インフラ
インターネットの発展は驚異的である。1985年に2,000台のコンピュータを接続していたインターネットは、現在は3,700万台のコンピュータと推定で1億5,300万人のユーザを接続している。インターネットはますます普及していくため、将来のインターネットがサポートしなければならないユーザの数は、10億人を超えるだろう。これらのユーザは、音声やビデオ、高速データを送受信したり、移動中にネットワークにアクセスしたり、人気のあるウェブ・サイトに対し数千万件の情報請求を同時に送ったり、インターネットに依存した形で事業の運営や政府のサービスの提供、医療の緊急事態への対応を実施したりするであろう。
将来のインターネットは、数十億台あるいは数兆台のデバイスを接続するようになる。コンピュータは、センサや無線モデム、GPSロケータなどの「現実世界」とやり取りできるデバイスと組み合わされる。これらのデバイスはどれも、単一チップのサイズに縮小され、日常使われる物の中に埋め込まれるため、ユーザはその存在に気がつかない。
しかしながら、現在のインターネット技術は、このようなユーザ数とデバイス数の爆発的な増加をサポートするようには設計されていない。このような新たな要求をサポートするようにインターネットを拡大可能なものにするためには、基礎的な情報研究がいくつかの分野で必要になる。
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テーマ |
内容 |
| Deeply Networked Systems |
このシステムを使うと、ネットワークに接続可能なデバイスの数を大幅に増やすことが可能となり、魅力的な新しい応用分野が生まれる。たとえば、低価格の無線センサは、大気汚染や水質汚染に関する情報をリアルタイムで提供することによって、環境を監視したり人災に対処したりする能力を改善できる。 「ガーディアン・エンジェル」は、個人(たとえば、消防士、警察官、兵士、在宅看護患者)の健康と安全を監視できる。危機管理センタは、レスポンス・チームや飛行機が運ぶセンサを使って、森林火災や洪水、ハリケーンへの対応を改善できる。 これを実現するには、ネーミングやアドレッシング、ネットワーク・コンフィギュレーションのための新しいメカニズムや、コストがずっと安いネットワーク・インタフェースといった進歩が必要である。 |
| 「時間も場所も問わない」接続 |
無線技術の改良によって、「時間も場所も問わない」高速の接続が米国民全員にもたらされるだろう。 高速無線ネットワークの主な利点は、アクセスを拡大して、農村地域に対しても先進の遠隔通信設備を配備することにより「コスト上のハンディー」を減らせることである。企業は用地を選択する際の条件として通信インフラの質を問題にすることがますます多くなっているため、これは農村部の経済発展にとって非常に重要である。 無線ネットワークはまた、遠隔学習や遠隔医療などのサービスを、米国内の僻地や発展途上国の市場にまで拡大できる。 |
| ネットワークのモデリングとシミュレーション |
次世代インターネットのような複雑なネットワークを構築した経験がないため、ネットワークの振る舞いをモデル化するための--経験を通して実証済みの--より優れたがツールが必要になる。 輻輳や故障をネットワーク・オペレータが防止できるようにする「リアルタイムより速い」シミュレーションのための機能も、必要である。 |
4. ハイエンド・コンピューティング
ハイエンド・コンピューティングの進歩は、国家と経済、米国民全員の生活に恩恵をもたらす。ハイエンド・コンピュータを使えば、医学上の新しい見通しを得たり、より高い精度で天気を予報したり、先進の武器体系を設計したり、より高い精度で気候の変動を予測したりできるようになる。
HPCC計画とASCIからの投資を得て、DOEの国立研究所は、米国の核備蓄の完全性を保証するために、アプリケーション・コードについて毎秒1兆回の計算を継続的に実行できるコンピュータを現在稼働させている。しかしながら、この計算速度をさまざまなアプリケーションについて実現し、「超並列」マシンを効率的に利用するためには、特にシステム・ソフトウェアの分野で積極的な研究計画が必要である。毎秒1000兆回(1015回)の計算が可能なコンピュータを開発するには、長期的研究も必要になる。政府は、ハイエンド・コンピューティングについては特に重要な役割を持つ。この種のコンピューティングの市場は小さいが、国家の安全などに関する政府のミッションでは、民間部門で使われているマシンより高速で複雑なマシンが必要になることが多い。研究テーマを次に示す。
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テーマ |
内容 |
| スーパーコンピュータの性能と効率の改善 |
米国の企業は現在、毎秒数兆回の計算を実行可能なコンピュータを製造できるが、これらは数千個の独立したマイクロプロセッサから構成される「超並列」マシンである。これらのマシンを、理論的な最大能力を発揮して実行するように構成しプログラミングすることは困難であることが、実証されている。 これらのハイエンド・マシンのプログラミングを容易にするためと、標準的なプログラムの効率を高めるために、R&Dが必要である。本研究は、ハイエンド・コンピュータ間での移植が容易なプログラムの開発と、超並列マシンを念頭に置いて設計された新しいアルゴリズムや問題解決環境、コンパイラの創出に重点を置く。 |
| コンピュータ網の創出 |
研究者やコンピュータ・ユーザが、自分たちが必要とするコンピューティング・パワーや記憶装置のすべてにローカル・アクセスできないのが現状である。送電網は電力を誰でも利用できるようにしているが、それと同じように、コンピュータ網においても、コンピューティング・パワーを利用できる人の数を増やすことによって、ユーザが追加のコンピュータ・リソースを「オンデマンド」で要求したり、インターネットにつながった多くの小型コンピュータからスーパーコンピュータを構築したり、「遊んでいる」コンピュータを利用したり、シミュレーションや超大型データベースとリアルタイムでやり取りしたり、(地球の裏側にいるかもしれない)同僚と3次元の仮想的な環境で協力したりすることを可能にできるであろう。 このようなコンピュータ網を構築するには、次のような新しいプログラミング・ツールが必要になる。
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| 画期的なコンピューティング |
コンピュータの小型化・高速化・低価格化のために1960年代以来使われてきた技術は、最終的には物理的限界にぶつかる。 根本的に新しいコンピュータ技術(たとえば、生物コンピューティング、単一電子トランジスタ、量子論理を利用するコンピュータ、カーボン・ナノチューブをベースにしたデバイス)の調査を今開始しなければならない。 これは、現在の最高速スーパーコンピュータより1000倍以上速いコンピュータをもたらすかもしれない。 |

IT2構想は、国家の利益にとって重大な問題に取り組むために、世界で最も強力なコンピュータを取得・利用するという一連の活動を支援する。これに必要な条件を次に示す。

1. 先進のコンピュータ・インフラ
現在利用できる最高速コンピュータは、毎秒約1,000億回の計算(単純な加算など)を実行できる。IT2構想によって、2000年度末までに毎秒5兆回、2003年までに毎秒40兆回の計算能力を持つコンピュータを利用できるようになる。これらのマシンには、ソフトウェアとオペレーティング・システム、データ記憶装置、内部メモリや、全国各地のチームのために各種のアプリケーションをサポートするための通信リンクが搭載される。
2. 先進の科学・工学計算
新しいスーパーコンピュータは、基本的に新しい科学計算アプローチを必要とする。現在、広く使われているコンピュータは、プロセッサを一つだけ使っている。 IT2構想で購入される超高速マシンは、数千の独立したプロセッサから構成され、全プロセッサが同時に処理を行う。 現実世界のプロセスの多くは同時に進行する(地球規模の天候の変化、複雑な物質の内部を動く原子)ことから、この価値は非常に大きい。このようなマシンを有効利用するためには、問題を部分に分割し、さまざまな小型コンピュータ上で処理してから一つにまとめることが必要になる。しかし、これを実際に行うのは難しい。
したがって、IT2構想に参加する研究者は、現在広く使われているアプローチとは異なるアプローチを採用する必要がある。 研究者は、基礎的な科学・工学分野に関する深い理解や、現在の計算プロセスに関する実践的知識、大規模な並列性に対応できるように現在のプロセスを修正する能力(ソフトウェア設計からメッセージ転送プロトコルまで、これに伴うものをすべて含む)、計算結果をフルに利用するための分析スキルを引き出す必要がある。 高並列環境での科学・工学計算について彼らが学んだことは、ほかの科学者や技術者、情報技術分野の研究者の使用に供され、新世代の先進的計算技術に関する基盤の確立に役立つであろう。
優れた基礎研究は、困難な問題を解決する試みから刺激を受けることが多い。 機械的スイッチに代わる電気スイッチの探求はトランジスタという成果を生み、この探求はさらに固体物理学上の驚くべき進歩をいくつかもたらした。 情報科学も例外ではないだろう。
IT2構想は、科学・工学用シミュレーションを研究するチーム(例えば、気候変動や研究物理学の問題に取り組むチーム)と、視覚化にせよソフトウェア設計の基本的側面にせよ情報研究という広範な分野に関心を持つチームとの間に、強い関係を築くことを目的に策定されている。 どちらのグループも、この関係を利用して成長していくべきである。
IT2構想について現在検討されている科学・工学上の問題の例を、次に示す
| 気候変動の予測 | 地球レベルの気候変動精度についても、国内の地域ごとの気象予報についても、著しい改善が必要である。これはより高い解像度を必要とし、海洋や生態学的影響なども考慮する必要がある。 |
| 荒天の予測 |
鉄砲水やトルネードなどの生命を脅かす多くの気象条件について、モデル化により予測することは、依然としてわれわれの能力を超えている。 精度を高めるためには、モデルの詳細や、モデルの複雑さと物理的性質、データ容量、事象検出能力を、信頼できる強力な計算システムで高めなければならない。 天候のシミュレーションは、今日の天気予報で中心的な役割を果たしているが、その力をフルに発揮させるためには、コンピューティング機能と通信機能を大幅に増強することが必要になる。 |
| 遺伝子機能の理解 |
人体の機能の多くは、複雑に入り組んだ構造を持つタンパク質によって実行される。 タンパク質の機能が、その3次元構造と密接に関係していることは判明しているが、この関係についてはわずかしか分かっていない。 コンピュータを利用したシミュレーションによって、構造と機能の間のこの関係が詳細に理解されれば、効き目が優れた医薬品とか廃棄物投棄場の効率的な浄化に至るまで、大きな影響を与えるだろう。 |
| コンピュータ利用地震学 |
先進のシミュレーションにより、建物などの構造物に対する地震の影響の予測を改善する可能性がある。 IT2構想は、現在よりもはるかに高い精度で、地震の際に生じるの大きな堆積盆地(sedimentary basin)の地面の動きに関する理解を深めるだろう。 |
| 燃焼のシミュレーション |
自動車エンジンの性能の予測シミュレーションは、外国産の石油に対する米国の依存度の低下と環境の質の向上(二酸化炭素などの排出物の削減による)を、同時に達成する見込みがある。 ディーゼル・エンジンの性能の予測シミュレーションによって、提案されている2004年の排出基準を輸送産業は達成しやすくなるだろう。 |
| 材料のシミュレーション |
米国は、新材料を依然として必要としている。たとえば、自動車の重量削減を目的とした軽量で強靱な材料や、携帯型電子機器に使われる柔軟なプラスチック電池や、コンピューティング産業向けの新磁性材料などである。 コンピュータを利用した新材料の開発--材料科学分野に関する大量の計算を要する最も困難な問題の一つ--は、現代社会のニーズに対応し、米国の産業の競争力を高めるだろう。 |
| 宇宙の進化のモデル化 |
ハッブル宇宙望遠鏡やケック望遠鏡、Sloan Digital Library Survey、宇宙背景放射衛星(COBE)などの宇宙空間や地上に設置された観測装置は、高精度の宇宙の画像を生成することによって、宇宙論の分野に革命を起こしている。 IT2構想により、現在の宇宙論モデルの最終的な検証が可能になるだろう。 |
3. コンピュータ科学と可能化技術
上記の活動は、超並列コンピューティングの利用を、ASCI計画のような積極的な実施計画の上に置いている。先進のコンピュータ・インフラを配備する政府機関は、ASCIと提携して、科学の応用分野での前述の進歩を可能にするコンピュータ科学技術と応用数学技術の開発に重点を置く。この応用分野の成功の鍵を握るのは、
である。
ここで、現在体系化されているIT2構想の2つの要素、すなわち基礎情報技術R&Dと先進の科学・工学計算の間に、強い相乗作用が生まれる。
1. 情報技術の経済的・社会的影響
情報技術と通信技術は、われわれの経済的・政治的・社会的・文化的生活の深部にまで影響を与えている。情報技術は、ますます普及の度合いを高めていくため、この傾向は21世紀に入るとさらに加速するであろう。 情報技術が、経済的・法的・社会的・倫理的・政治的・文化的影響が大きいにもかかわらず、連邦政府はこの分野での社会科学研究をほとんど支援してこなかった。たとえば、情報技術分野には、NIH(米国国立衛生研究所)のELSI (Ethical, Legal and Social Implications)研究計画に相当するものは存在しない。この分野での研究をコンピュータ科学者と社会科学者の交流の拡大によって強化することは、次のような有益な結果をもたらすと考えられる。
この分野の研究テーマに含まれる可能性があるものを、次に示す。
2. 情報技術労働力
科学分野に関連する政府機関は、大学の学部や大学院レベルの情報技術スキルを持った労働者に対する需要の急増に対処するために、いっそうの努力を要求されている。大学からの報告によると、学部の登録者数が増加している一方で、大学院への応募者数は減少している。このような状況下で、NSF (全米科学財団, National Science Foundation)は、すべての学部(2年制大学、4年制大学、研究大学)が新しいカリキュラムと教材を利用できることを保証する新計画を提案している。例えば、大学院生を支援する大学院生手当のための特別資金が考えられている。さらに、大学に提供される研究奨学金のかなりの部分が、大学院の研究助手の支援に向けられる。
科学担当の政府機関によるこれらの計画は、情報技術労働力という幅広い問題の一つの要素を対象としているにすぎない。しかし、情報技術労働者への需要は、あらゆる分野で増大している。すなわち、多くの労働者が21世紀の職を確保するために基本的なコンピュータ能力を必要としている。
労働省や教育省、商務省などの政府機関は、米国の情報技術労働力が世界一であることを保証するために、産業界や専門団体、労働組織と協力していく必要がある。